食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 元素状硫黄の使用とその農業コミュニティ(カリフォルニア、米国)での小児肺機能と呼吸器症状との関連

Elemental Sulfur Use and Associations with Pediatric Lung Function and Respiratory Symptoms in an Agricultural Community (California, USA)
Rachel Raanan et al.,
Environ Health Perspect; DOI:10.1289/EHP528
https://ehp.niehs.nih.gov/ehp528/
元素状硫黄は「全ての農薬の中で最も古いもの」でカリフォルニアと欧州で最も多く使われている。硫黄は比較的安全で慣行農業と有機農業の両方で使われている。動物実験では呼吸器への有害影響が報告されている。そこで農業コミュニティでの、硫黄の使用場所への住宅の距離と呼吸器症状との関連を評価した。結論として元素状硫黄の使用は慣行農業と有機農業の両方で近くに住む子どもの呼吸器に悪影響を与えている可能性がある。
(ちなみにUSDAのオーガニック農業で使えるもの・使えないもの
https://www.ecfr.gov/cgi-bin/text-idx?c=ecfr&SID=9874504b6f1025eb0e6b67cadf9d3b40&rgn=div6&view=text&node=7:3.1.1.9.32.7&idno=7#se7.3.205_1601)

  • タンパク質の代謝回転が長生きの手がかりかも

Protein turnover could be clue to living longer
30-Aug-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-08/si-ptc082817.php
Nature Communications。加齢疾患であるプロジェリアのヒトではタンパク質の合成が過剰に活発であることを発見。彼らの仕事はタンパク質合成を減らすことが線虫やマウスの寿命を延ばすことを示した研究を支持する。
(「代謝を活性化」すると早く年をとるんですって。)

  • 1日三回タンパク質を食べることが高齢者を強くする

Eating protein three times a day could make our seniors stronger
30-Aug-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-08/muhc-ept083017.php
加齢による筋肉の喪失は避けられないが十分タンパク質を摂ることが一つの対策である。McGill大学保健センター研究所の研究によると摂取するタンパク質を1日三回に均等に広げることが高齢者のより大きな筋量につながるようだ。American Journal of Clinical Nutritionに発表された1800人を3年フォローした研究。

  • 研究が回遊性シーフードの放射能に関する懸念を否定する

Study negates concerns regarding radioactivity in migratory seafood
30-Aug-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-08/viom-snc083017.php
汚染物質は災害後の環境トレーサーとしての使用を示唆
福島発電所が大量の放射性物質を近くの海に放出したとき、地元だけでなく太平洋を横断して汚染シーフードを食べることによるヒト健康影響への心配が提示された。国際研究チームの新しい研究は、そうした懸念はいらないことを示した。少なくともマグロやメカジキやサメなどの回遊性の海の捕食者の肉を食べることに関しては。チームは134Cs と 137Csに注目し2012年から2015年に北太平洋全体で集めた補食性の魚や大型脊椎動物の組織を調べた。134Csは検出されず、137Csは1940年代から50年代の核実験由来のバックグラウンドレベルだった。日本、ハワイ、カリフォルニアの近くの動物を集めた。
主著者のハーバード大学のDaniel Madiganは「我々の測定と、このシーフードを食べたことにより一人の人がどれだけの量の放射性セシウムを摂取するかの計算は、ヒト健康影響は無視できるだろうことを示す。」
共著者のWilliam & Mary'sバージニア海洋科学研究所の准教授Kevin Wengは「さあさあ寿司を食べに行こう!我々の仕事は福島災害由来の放射能は公海の脊椎動物では極めて低いことを示す」という。
Madiganらは福島事故後間もなくカリフォルニア沿岸でつかまえたマグロに放射性セシウム濃度の増加を検出した。これはこれらの魚が二ヶ月以内に6000マイルを泳いだことの証拠であった(海流が到達するには2年以上かかる)。この研究はセシウム同位体がトレーサーとして使えることを報告したものだったが、人々はヒト健康リスクに注目した。こうした回遊魚を食べることによるリスクは極めて低いことが示されていたが一般の懸念は継続し、マグロ以外の種にまで拡大した。北太平洋サーモンやホタテやアシカまでが非常に心配され、インターネットには「太平洋は死んだ」とまで書かれた。「我々の研究の目的のひとつは、こうしたリスク認識を、より広範な脊椎動物北太平洋全体で調査することにより全体の文脈のなかで示すことである」とMadiganはいう。
Environmental Science & Technology