食品安全情報blog過去記事

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その他

SMC NZ
高炭水化物食は健康状態の悪さと関連−専門家の反応
High carb diet linked to poorer health – Expert Reaction
August 30th, 2017.
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2017/08/30/high-carb-diet-linked-poorer-health-expert-reaction/
SMC UK以外の分
AUT人間の可能性センター長Grant Schofield教授
食事と心臓仮説、何が健康的食生活なのか、の周辺についての考え方に激変がおこっている。長く待ち望んでいたPURE研究の結果は先週Lancetに掲載されたベストセラー本“The Big Fat Surprise”(出版は2年前)の好意的レビューに続く。
PUREは脂肪と飽和脂肪の摂取量の少なさが死亡率の高さと関連し、心血管系死亡率には関係ないことを発見した。重要なことはこの研究は疫学で見られる飽和脂肪の変動が飽和脂肪を下げることの利益を見るのに十分ではないという主張を否定したことである。PURE研究では飽和脂肪の摂取量は低く、そのメリットに根拠はないだけではなく全原因での死亡増という害がみられる。もしそんなに飽和脂肪が悪いなら、何らかの根拠がみられるはずだろう。
PUREは我々に食事から脂肪を追放することを止めるときだと教える。私は加工の少ない、精製されていないものを食べるようにすることに注力してきた。総合的な根拠は人為的加工の少ない食品を食べろという
オタゴ大学Edgar糖尿病と肥満研究部長Jim Mann教授
この研究は欧州心臓学会で発表されてLancetに発表され、炭水化物の摂取量が多いことは総死亡リスクの高いことと関連するが脂肪の摂取量は総死亡の低いことと関連することを示唆する。この観察は現在の脂肪摂取の制限をやめて多すぎる炭水化物摂取を制限した方が健康によいかもしれないことを示唆する。
彼らの研究が18ヶ国135000人以上の観察によることから、この結論が決定的だと思われるかもしれないが、著者らも指摘しているように大きな限界がある。他の膨大な根拠の全体の中で見ることが重要である。限界の一つは炭水化物を精製したものと全粒穀物の区別をしていないこと。影響が見られるのは極端な摂取量を比較した場合であること。例えば炭水化物由来のエネルギーが77%の場合、46%の場合に比べて死亡率が28%高い。ニュージーランドでの摂取量はこの低摂取量に近い。炭水化物摂取量が多いのは中国を含むコメを食べている国である。しかし中国の都市部では脂肪の摂取量が増えて肥満や糖尿病が増えている。日本はこの研究に含まれていないが、日本がコメを主食にして長寿であることも注意する価値があるだろう。
国や国際的食事ガイドラインは食事の質を強調するようになってきている。量よりも何から摂るかを薦めることの重要性が増している。
シドニー大学研究員で栄養士Alan Barclay博士
全体として論文の結論は誇大である。これを根拠に現在の食事ガイドラインを変えることはない。
シドニー大学生命環境科学部ヒト栄養教授Jennie Brand-Miller教授
オーストラリアはカーブの先にある。炭水化物は30年前と違う。
オーストラリア予防協力センター上級アドバイザーAmanda Lee博士
将来のPURE研究の報告では、文化や社会などの交絡要因をより丁寧に考慮し、食品ベースのアプローチを採用することを含む、より詳細な解析を期待する。
Monash大学医学部Hudson医学研究所名誉科学者John Funder教授
Shrapnel栄養コンサル会社社長で栄養士Bill Shrapnel
Monash大学名誉教授で台湾国立健康研究所客員教授Mark Wahlqvist教授
(略。関心が高いのだな)

Science
Something is changing the sex of Costa Rican crocodiles
By Mitch LeslieAug. 30, 2017
http://www.sciencemag.org/news/2017/08/something-changing-sex-costa-rican-crocodiles
コスタリカPalo Verde国立公園の近くのアメリカワニ(Crocodylus acutus) の性を調べているChris Murrayらが雄が多すぎることに気がついた。ワニの組織に17α-メチルテストステロン(MT)が多く、近所のティラピア養殖場で餌に使われているのが原因ではないかと疑っている。ティラピアは雄の方が生長が早く利益になるので餌にMTを加えられている。ワニは養殖されている魚を食べたり養殖場から逃げ出した魚を食べたりする。
しかしこの説にはMTが実際にワニの性を変えるのか、他のティラピア養殖地域ではどうなかなどまだデータが不足している。
(長い記事。ごく僅かなホルモン作用を問題にして内分泌撹乱物質のせいで雌だらけになって滅ぶ、みたいに騒いでいる一方で男性ホルモンそのものを餌に使っていたのか。牛のホルモン剤は個体に埋め込み投与なので最小限だろうが魚の餌って思いっきり環境放出・・)

  • がんによる食欲不振が強力な抗肥満薬の可能性を思いつかせる

Scienceニュース
Cancer-induced anorexia inspires potentially powerful antiobesity drug
By Ryan CrossAug. 30, 2017 ,
http://www.sciencemag.org/news/2017/08/cancer-induced-anorexia-inspires-potentially-powerful-antiobesity-drug
多くの末期がんに伴って食欲不振がみられる。主要製薬会社3社の研究者達が別々にこの病態の背景にある容疑者を示す論文を発表した−増殖分化因子-15 (GDF15)というタンパク質がマウス、ラット、サルで明らかな副作用無しに体重を減らした。
ニューヨーク市のWeill Cornell Medicine のKatherine Saunders肥満専門医は「治療薬の選択肢が増えるのはわくわくするニュースである」という。現在FDAに認可されている肥満の薬は平均して5-8%の減量に役立つが「非常に限られている」とSaundersはいう。「多くの薬はGDF15ほど特異的ではない。」
(以下説明略)

  • 科学教育の支援を続けて

Natureワールドビュー
Keep on marching for science education
29 August 2017
Brandon Haught
http://www.nature.com/news/keep-on-marching-for-science-education-1.22517
米国で新学期が始まり、フロリダの科学教育はこの夏成立した法律で脅かされている。4月の科学のための行進に参加した人たちはどこへ行ったのだろう?
フロリダでも大きな熱狂があったが戦いは全て負けた。(学校で教える科学に政治的介入を認める)法案は法律になった。科学コミュニティがもっと活発に関与していたら違ったかもしれない。法案の支持者達は進化は単なる理論の一つに過ぎず、地球温暖化に人間の活動が関与しているかどうかは疑わしいと主張する。州の大学などの権威が声を上げれば議員の一人か二人は動いたかもしれない。法律が成立し、そのことが広く報道されたが科学コミュニティは沈黙したままである。
ねえ科学者たち、苦悩する高校科学教師にあなたたちの支援を。他の州でも科学教育は攻撃されている
(いろいろ略)
わかっている、あなた達は忙しいし注目されるのがイヤな人もいる。でもたとえ小さなことでも何もしないよりはいい。