食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

グルテンフリー表示基準が実際にもたらした影響

Taking a Look at the Real-World Impact of the Gluten-Free Labeling Standard
October 4, 2017
https://www.fda.gov/Food/NewsEvents/ConstituentUpdates/ucm578880.htm
セリアック病の人々は、グルテンを食べると重篤な疾患になる可能性がある。グルテンは、タンパク質の混合物で、穀類中に自然に生成し、パン、ケーキ、シリアル、パスタといった多くの食品に存在する。そのような消費者には、『グルテンフリー』と生産者自らが表示した食品が、管轄機関により作成される強制力を持った基準を満たしているという信用を抱いてもらう必要があった。そのため、FDAは2013年に、『グルテンフリー』といった文言を謳うために食品が有していなければならない特性を定義した規則を発布した。
製造者は、2014年8月5日までに、『グルテンフリー』と表示した食品では、元来グルテンフリーであるか以下のような成分を含んでいないという要件が満たされるように、表示体制を組まなくてはならなくなった。それらの成分とは、グルテンを含む穀物グルテンを含む穀物の成分であってグルテンを除去する処理が施されていないもの、グルテンを含む穀物の成分であってグルテンを除去する処理が施されているが最終食品中に20 ppm以上の含量でグルテンが存在するようになるもの、である。また、食品に不可抗力的に存在するグルテンの含量は、20 ppm未満でなくてはならない。
3年経って、『グルテンフリー』いう用語の定義づけがセリアック病を持つ人々にどのような影響を与えたであろうか?
FDAの栄養および食品表示事務局の食品技術者であるCarol D’Lima博士と、ボストンのマサチューセッツ総合病院で小児消化器病学・栄養学の主任を務めセリアック病研究・治療センターの所長でもあるAlessio Fasano医学博士とが、この表示基準が実際にもたらした影響について話を交わしている。
◇Carol D’Lima博士とAlessio Fasano医学博士との会談内容
https://www.fda.gov/Food/GuidanceRegulation/GuidanceDocumentsRegulatoryInformation/Allergens/ucm577489.htm
(概略)
D’Lima: 現在では、消費者は商品をもっと信頼して購入できるようになった。製造者は、以前よりもグルテンフリー食品の品揃えを豊富にしており、明確なガイドラインにより企業に公平な活動の場が提供されるようになった。
D’Lima: 『グルテンフリー』と表記された250を超える製品から702の試料を得て分析したところ、表記要件を満たしていなかったのは1製品だけであった。この製品はリコールされた。次の機会に行った検査では、どの製品からも違反は検出されなかった。こうした結果が出て、我々は非常に勇気づけられた。
Fasano: 食品業界は、『グルテンフリー』の問題を真剣に考えてくれて、新しい表示関して通常業務でない仕事も行ってくれた。
D’Lima: この表示制度は、セリアック病の人々だけでなく、そうした人々を世話する人々にも役立っている。
Fasano: 私の患者さんたちも、今では製品選びが楽になったと言っている。食料品店に行けば、グルテンフリー食品を並べた通路ができている。
D’Lima: 『グルテンフリー』の表示もそうだが、ラベルに係れている成分や栄養についての情報を注意深く読んでほしい。
D’Lima: 製造の実務が粗悪で、別々の製品の製造工程で同じ機器が使用されることなどにより、グルテンフリーのはずの製品にグルテンが入り込んで意図しない混入がおこることがある。この問題は重要で、グルテンフリーの規則の最終版で触れられている。この規則では、意図しない混入によるグルテンの含量を20 ppm未満に制限している。
Fasano: 意図しない摂取は、セリアック病の人々が家庭の外で食事をするときに問題になる。料理の成分をグルテンフリーにしたり、食品の接触面がグルテンを有する料理に触れていないように保つなどの注意が必要となる。セリアック病の人々にとっては、誰かの家にいくことは精神的な労作であり、どうしたらいいのかを話し合うことを余儀なくされている。
D’Lima: 今後にむけては、法令順守計画が進行中である。検査を行い、違反があれば企業と接触して改善する機会を設ける。誤表示された製品のリコールも行う。
D’Lima: グルテン含量が基準値を超える製品の苦情についても対応していくが、どんな違反事例が生じ得るかについての情報を強く望んでいる。食品で有害反応が出た人には地域の消費者苦情処理係に申し出てほしい。そこで食べた時間、購入場所、ロット番号などの情報、ラベルの写しなどを提示していただきたい。こうした情報に基づき、FDAは食品取扱施設で試料採取などを行う。第1の目標は、消費者が安全な製品を手に入れることであり、ラベル上に表記された情報は全て正しいものであるとすることである。
Fasano: セリアック病の子供たちのとっても、今は、そのことに多くの気をかけなくても、彼らの食事についての条件が見たされるようになってきている。正確に表示されたグルテンフリー製品が豊富になったことで、セリアック病の子供たちがキャンプに行ったり友達の家に1泊しに行ったりすることが大事なことではなくなってきた。以前は1泊しに行くだけでも、特別食で一杯のクーラーボックスを持っていかなくてはならなかった。どの食品がグルテンを含んでいるかについての知識は、糖尿病患者にとってのインシュリンと同じくらい重要だった。昔は社会交流行事や休暇旅行でさも難題であったが、いまは生活を楽しみやすくなっている。