食品安全情報blog過去記事

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論文

  • アルコールとがん:米国臨床がん学会の声明

ASCO (米国臨床がん学会)特別記事
Alcohol and Cancer: A Statement of the American Society of Clinical Oncology
Noelle K. LoConte et al.,
http://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.2017.76.1155
飲酒はいくつかのがんの確立されたリスク要因であり、変更可能ながんリスク要因である。ASCOのがん予防委員会は、学会による事前予防的スタンスがアルコールへの過剰暴露を最小化しがん予防にとって重要な役割を果たすと信じる。さらにがん患者のアウトカムに与える飲酒の影響についてはまだ研究初期の段階でありASCOが研究課題設定に重要な役割を果たせる。またこの問題についてはASCOはがんコミュニティの中で必要とされるリーダーシップをとれる。この声明を発表することで、ASCOはこの分野での効果的公衆衛生戦略をサポートするプラットフォームを作る、ますます増える国際団体に参加する。この声明の目標は以下である:
・アルコールの濫用とある種のがんのリスクについての一般の教育を推進
・アルコールの過剰使用を予防するための根拠に基づいた戦略によるがんリスク削減のための政策努力を支援する
・がん治療者に過剰飲酒のがんリスクや治療合併症への影響について、矛盾する根拠の明確化を含む教育を提供する
・飲酒とがんリスクとアウトカムの関連について必要な研究分野を同定する

  • エストロゲン療法の浮き沈み:テストステロンが次の「更年期」?

The Rise and Fall of Estrogen Therapy: Is Testosterone for “Manopause” Next?
Briana T. Costello et al.,
Texas Heart Institute Journal • Oct. 2017, Vol. 44, No. 5
7th Annual Women’s Heart & Vascular Symposium
http://thij.org/doi/pdf/10.14503/THIJ-17-6360?download=true&code=txhi-site
数十年前にFDAが女性の閉経期症状にエストロゲンを認可し、その後極一部の生殖異常の男性にテストステロンを認可した。加齢をターゲットにした宣伝広告が盛んになるまではどちらもあまり処方されなかった。女性でのホルモン補充療法の影響が報道されると処方が激減した。加齢によるテストステロンの低下でテストステロン補充を行っている男性にとってこの話は警告になるだろう。

  • ペンシルベニア大学の研究が、販売されているカンナビジオール抽出物の約70%が誤表示されていることを示す

Penn study shows nearly 70 percent of cannabidiol extracts sold online are mislabeled
7-Nov-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-11/uops-pss110317.php
大麻に含まれる天然化合物カンナビジオール(CBD)への関心が近年高まっていてビジネスとして今後3年以内に20億ドル以上の規模に拡大すると予想されている。CBDでは「ハイ」にはならず従って依存性はないとされるが麻薬取締局(DEA)はSchedule I規制対象薬物に分類している。今週JAMAに発表されたペンシルベニア大学医学部の研究によると、オンラインで販売されているCBD製品のうち約70%が表示が正しくないため消費者に重大な害を与える可能性がある
研究者らは31者の84製品をオンラインで購入しCBD含量を調べた。42%が表示されている量より多いCBDを含み26%は過小だった。含量の違いが表示されている量の10%以内だったのは30%だけだった。さらにたくさんの製品が相当量のTHCを含み、しばしば子どもに与えられている。

Dietary isoflavones linked to increased risk of advanced prostate cancer
8-Nov-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-11/w-dil110617.php
International Journal of Cancerに発表されたProstate, Lung, Colorectal and Ovarian Cancer Screening Trialの27004人の男性のデータを用いた研究。11.5年のフォローアップ期間で2598例の前立腺がんが同定されそのうち287例が進行性前立腺がんだった。食品頻度質問票で食事摂取を評価し、食事イソフラボンは進行性前立腺がんリスク増加と関連するが進行性ではない前立腺がんとは関連しなかった。

  • 内分泌学会の専門家が糖尿病が如何にして人体の最も細い血管を傷つけるかを検討する

Endocrine Society experts examine how diabetes harms body's smallest blood vessels
8-Nov-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-11/tes-ese110617.php
内分泌学会が糖尿病による毛細血管傷害と目や腎臓や神経などの臓器を守るための修復機能への影響について検討した新しい科学的声明を発表した。
Diabetic Microvascular Disease: An Endocrine Society Scientific Statement
https://academic.oup.com/jcem/article-lookup/doi/10.1210/jc.2017-01922
オープンアクセス

  • 青年はスポーツでのパフォーマンス向上と免疫改善のためにダイエタリーサプリメントを使用している

Adolescents use dietary supplements to increase sports performance and improve immunity
8-Nov-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-11/e-aud110817.php
スロベニアの若者におけるダイエタリーサプリメントの使用状況調査。Ljubljana大学の生命工学部Katja Zdešar Kotnik理学士によると「若者は最も間違った情報を受け取りやすい消費者集団で、そのためダイエタリーサプリメントマーケティングの標的になっている」
公立高校の14-19才の1500人近くを対象にした。ダイエタリーサプリメントの使用理由で最も多かったのは運動能力の向上。使用可能性の高い人は、個人競技よりサッカーやバスケットのようなチームスポーツに参加している人。Journal of Nutrition Education and Behavior

  • ワイン愛好者達よ、自分で引き受けよう、あなたの味覚を信頼せよ

Take charge, wine lovers, and trust your palate
7-Nov-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-11/msu-tcw110717.php
伝統的なワインと食品の組み合わせはしばしば的はずれで、人々を混乱させ怖じ気づかせるので捨て去って、より消費者中心のアプローチにすべきだ、と新しい研究が示す。
ディナーにローストビーフを注文すると伝統的にはカベルネ・ソービニヨンを薦められるが客がリースリングが好きならそれを飲ませればいい、とこの研究の主著者でもとシェフでレストランマネージャーのCarl Borchgrevinkは言う。「味覚の規則で誰かがワインを買うのを怖じ気づかせるべきではない。そうではなくて、何がお好きですかと尋ねるべきだ」
この研究は「ワインマスター」の称号を初めてとったアメリカ人であるTim Hanniの「ワインタイプ理論」を初めて科学的に吟味したものである。
International Journal of Wine Business Research

  • JRC がCOP23で:よりクリーンな、よりグリーンな地球は可能で手が届く

JRC at COP23: A cleaner, greener planet is both possible and affordable
8-Nov-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-11/ecjr-jac110817.php
2017 Global Energy and Climate Outlook (GECO)報告発表
https://ec.europa.eu/jrc/en/geco
(ちなみにこのどのシナリオでも原子力による発電量は今より増えることになっている。原子力発電の費用にやたらと高額な「想定される被害への補償」を含めるのに化石燃料では健康や環境影響を計算しないのはバランスが悪い)

  • 「ゴールデン」ポテトはたくさんのビタミンAとEを供給する

'Golden' potato delivers bounty of vitamins A and E
8-Nov-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-11/osu-pd110817.php
実験室で作った黄色−オレンジ色のジャガイモは子どもの一日の推奨摂取量の42%のビタミンAと34%のビタミンEを供給できる可能性がある。PLOS ONE
イタリアで作成したジャガイモを使ってヒトの消化管モデルでの吸収を調べたオハイオ州立大学の研究。

  • ウマ肉スキャンダル(ホースゲート)から4年後:2013年のウマ肉事件後に実施された対策の更新

Four years post-horsegate: an update of measures and actions put in place following the horsemeat incident of 2013
Stephanie Brooks, Christopher T. Elliott, Michelle Spence, Christine Walsh & Moira Dean
npj Science of Food 1, Article number: 5 (2017)
https://www.nature.com/articles/s41538-017-0007-z
食品偽装と食品犯罪への対応強化のきっかけとなったウマ肉スキャンダルについての概要とその後の対策のレビュー
スキャンダル後にまとめられたElliottレビューの8本の柱がその後どう実践されているかをまとめている
・諸費者第一 信頼が大きく毀損されたので
ゼロトレランス 少しくらい誤魔化してもわからないだろうというのは許容できない
智慧を集める 情報を開示し共有する、内部告発を推奨するように
・分析サービス 分析機関の質の確保
・監査 これまでの監査は安全性がメインで詐欺についてはあまり見ていなかった
・政府の支援 分野横断で協力するには高官レベルの仕組みが必要
・リーダーシップ 食品犯罪対応組織の設立 (必要な予算は年2-400万ポンド(3-6億円くらい)なのに90万ポンドしか出していないと批判している)
・危機管理