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カリブ海域のフランス人におけるクロルデコン暴露:特定食品の調達方法が過剰暴露を助長

Chlordecone in the French Caribbean: certain food procurement methods promote overexposure
News of 15/12/2017
https://www.anses.fr/en/content/chlordecone-french-caribbean-certain-food-procurement-methods-promote-overexposure
ANSESは本日、カリブ海域の一般的なフランス人の集団と、クロルデコンへ過剰暴露されている恐れがあるいくつかの部分母集団を対象として行われた、食事を介したクロルデコンへの暴露に関連した健康リスク評価の結果を発表した。ANSESの専門家評価では、私的な供給ルート経由で手に入れた食品(家庭での手作り品、贈り物、露店で購入した食品)は、規制管理下にある供給ルートで手に入れた食品と比べ、より重度のクロルデコン暴露を生じる可能性があるという結論が導かれた。またANSESは、動物由来食品に設定されているクロルデコンの現行のMRLs (Maximum Residue Limits: 最大残留量, 食品それぞれについて認可されている残留限度)について再考を行った。MRLsは、グアドループ島やマルティニーク島の住民に対し、推奨摂取量を提示し保護を実現する上で、適切な根拠であると考えられる。このため、ANSESは、過剰暴露のリスクを低減するため、摂取推奨量に従うことを励行し続けるよう助言している。
クロルデコンは、マルティニーク島グアドループ島のバナナ農園で、バナナの栽培にとって深刻な害虫、ゾウムシを退治するために長年使用されていた。とても効き目が長く非常に体内に蓄積されやすいこの農薬は、1993年以降禁止されている。だがこの持続性のため、クロルデコンがまだ土壌に存在し、特定の野菜や動物由来食品に検出されることがあり、またヒトの飲料水の取水地点でも見つかる場合がある。
近年、食事を介したクロルデコンへの暴露について様々な研究が行われており、それらからMRLsが導出されている。これらの研究は、特定の部分母集団におけるリスクについても着目し、汚染されている可能性のある食品を新たに特定している。具体的には:
・自分で獲った魚を食べている3〜6歳の子供は、そうではない子供より明らかに多く暴露されている。
・私的な供給ルートで手に入れた食品(家庭での手作り品、贈り物、露店で購入した食品)の汚染についての情報は、それらの食品が高濃度で汚染されている可能性があるにもかかわらず、非常に少ない。
ANSESの助言
住民のクロルデコンへの暴露
ANSES、フランスの公衆衛生局、マルティニーク島グアドループ島の地方健康局の支援を受けた地域健康観測所は、Kannari研究と呼ばれる活動を立ち上げ、一般住民や既に過剰暴露の可能性があることが確認されているカリブ海域のフランス人の様々な部分母集団における、クロルデコンへの暴露の特徴付けを行った。
この研究では、健康上最もリスクが高い調達経路、生産地域、集団の特定も行われた。
食品供給経路と暴露との関連についての分析では、私的な供給経路(家庭での手作り、贈答、屋台での購入)による食品は、管理された供給経路(大・中規模の小売業者、市場、食料品店)から手に入れた食品よりも高用量の暴露をもたらした。以下の状況は特にその他の集団と比べて過剰暴露につながる恐れがある:
・卵や家禽製品を含む、汚染された地域で自家生産された食品は高濃度で汚染されている可能性があるが、それらを摂取すること、
・消費者が釣ったり獲ったりした、あるいは私的な経路から手に入れた海産物を1週間に4回以上摂取すること、
・消費者が釣ったり獲ったりした、あるいは贈り物として受け取った淡水生産物を摂取すること、
・自家生産の卵や家禽の摂取との関連が見出された行動であるが、汚染された地域で生産された根や塊茎を1週間に2回以上摂取すること。
したがって、汚染された地域で生産された食品を摂取することは、現行の摂取推奨事項、すなわち一週間に4回以上水産物を摂取しないこと、および淡水で獲れた製品を摂取しないこと、に従っていない住民においては、過剰暴露を生じる可能性があると考えられる。
さらにANSESは、現行の摂取推奨事項を拡大して、私的で規制管理下にないない経路から手に入れられる卵などの他の製品も対象とするよう助言する。
最大残留基準(MRLs)
ANSESの専門家による評価では、食品を主として管理された経路から手に入れてMRLsを順守している人における暴露量は、クロルデコンの毒性参照値(すなわち暴露に関する最大安全量)を超えないことが示された。したがって、動物由来食品に設定されたクロルデコンのMRLsは十分に守られていると考えられる。
さらに、専門家による評価では、動物由来食品に設定されたクロルデコンのMRLsを低くしても、クロルデコンへの暴露の量を減らすことにならないことが示されている。これはクロルデコンへの暴露が、大部分はMRLsに従うことのない私的な経路由来の食品の摂取に関連しているからである。ANSESはそれゆえ、過剰暴露される集団に対しては、MRLsを下げることより、摂取推奨事項を提示する手法で活動する方が意味があると考えている。