Consultation paper on New Breeding Techniques released
15/02/2018
http://www.foodstandards.gov.au/Pages/Consultation-paper-on-New-Breeding-Techniques-released.aspx
オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)は、新しい育種技術と食品基準規約が定める現行の要件に関し、フィードバックを求める意見募集書を発行した。
FSANZの最高責任者であるMark Booth氏は、次のように述べている。「この意見募集書には新しい育種技術が書かれており、またそうした技術によって生産された動植物に由来する食品に対しどのように食品法が適用されるかが示されている。」
「基準規約1.5.2が制定されて以降、1999年に遺伝子工学を用いて生産された食品が初めて導入され、様々な新しい育種技術が植物においても動物においても開発されてきた。」
「我々はこれらの技術を監視し、専門家と協働してどのようにそうした技術を用いて生産された食品を食品法によって規制するかを考えてきた。現段階では、規則に変更を加える予定は無い。規則に何らかの変更を加えるという決定を下す前に、レビューを行って、広範な課題を検討するようにしなくてはならない。」
「もし、すべてのフィードバックを考慮した上で、規則の変更を提議する決定をした場合には、一般社会からさらに意見募集を行うことになる。」
意見募集の締め切りは、キャンベラ時刻で2018年4月12日午前6時である。
さらに詳しく
● 意見募集書
http://www.foodstandards.gov.au/consumer/gmfood/Documents/Consultation paper - Food derived using new breeding techniques.pdf
● 意見提出方法
http://www.foodstandards.gov.au/code/changes/Pages/Documents-for-public-comment.aspx
意見募集書: 新しい育種技術を用いて作られた食品
Consultation paper: Food derived using new breeding techniques
February 2018
http://www.foodstandards.gov.au/consumer/gmfood/Documents/Consultation paper - Food derived using new breeding techniques.pdf
1. 緒言
オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)は、オーストラリア・ニュージーランド食品基準規約(Code)をレビューして、ゲノム編集などの新しい育種技術(NBTs)で生産された食品に対し、どのようにCodeを適用するかを検討している。
具体的には、オーストラリア・ニュージーランド食品基準法(FSANZ Act)1991のセクション113に関するレビューが行われているが、このレビューでは、ラベル表記を問題として取り上げることは無く、Codeの修正もすぐには必要とならないと結論づけられる見込みである。レビューが完結し、その内容が実践にうつされてすぐ、FSANZはCodeの修正の必要性を判断し、必要な場合はこのレビューとは独立した形でCodeの修正案を提示し、パブリックコメント募集を行うことになる。
このレビューの支援のために、新しい育種技術に関する専門家諮問グループ(EAG NBT)が設立された。
この意見募集書の目的は、広範な利害関係者から、レビューによって浮き彫りになる具体的な問題や質問について、意見を求めることである。
1.1 問題点
Codeでは、遺伝子工学を用いて生産された食品は、審査を経て、付則(Schedule)26に収載されたものでなくては市販できないことになっている。
遺伝子工学は、今まで通常、その生物が持たない新規のDNAを導入する技術であったが、NBTsでは、新規のDNAを導入することなくゲノムを編集することができる。
したがって、NBTsを用いて生産された食品は、遺伝子工学を用いない従来の育種法で生産された食品と同等であると考えることも可能である。
このレビューで検討している問題は、NBTsで生産された食品に、事前の安全性評価が必要であるかどうかということである。
1.2. 背景
食品の生産に使われる可能性が高いNBTsとして、以下のような技術が開発されている。
● ゲノム編集―ゲノム中の特定の標的遺伝子座を改変する(Appendix 1参照)
● 遺伝子組換え体を用いた接ぎ木―遺伝子組換え体の台木に非組換え体植物を接ぎ木する
● シスジェネシスおよびイントラジェネシス―同種もしくは交配可能種から得られるDNAをゲノムに導入する
● 導入遺伝子を育種終了後に除去してヌル分離個体とする技術―遺伝子組換え生物の子孫には新規DNAが引き継がれない(Appendix 1参照)
1.3. 他のレビューとの関連性
FSANZのレビューは、遺伝子技術規制事務局(OGTR)が実施しているレビュー*1や遺伝子技術に関する立法府統御フォーラムが行っているレビュー*2とは独立したものである。これらのレビューの結果に基づいて、遺伝子技術法や規則に関してして決定や行動が取られることになっても、遺伝子工学を用いて生産される食品に関連するCodeの一部に変更が及ぶことは無い。
*1: http://www.ogtr.gov.au/internet/ogtr/publishing.nsf/Content/reviewregulations-1
*2: https://consultations.health.gov.au/health-systems-policy-division/genetechreview2017/
2. 遺伝子工学とFSANZ
2.1 FSANZの役割と食品規制システム
FSANZは食品規制システムの一部であり、その政策は、食品規制に関するオーストラリアとニュージーランドの閣僚フォーラム(Forum)で決定される。FSANZは、食品基準を確立している。
2.2 遺伝子工学で生産される食品
● 遺伝子工学を用いて生産されている食品とは、遺伝子工学で修飾された生物に由来する食品である。
● 遺伝子工学とは、生きている細胞や生物に受け継がれる遺伝物質に改変を加える組換えDNA技術である。
上述の定義には、従来の育種により生物に改変をもたらすことは含まれていない。
遺伝子工学を用いて生産された食品は、CodeのSchedule 26に収載され許可されていなければ市販できない。
遺伝子工学は、組換えDNA技術に限定されているが、明確ではない。ただし、そのDNA断片の起源が同種生物のものであるにせよ何にせよ、新たなDNA断片をゲノムに含む生物に由来する食品を取り締まることは、実質的行われてきた。
2.3 市販前安全性評価と表示
「遺伝子工学を用いて生産された食品」の定義に当てはまる食品は、FSANZによって食品基準規約Standard 1.5.2に基づいて評価を受けることになる。
許可された食品は、食品基準規約Standard 1.5.2のセクション1.5.2―4に則った表示(「遺伝子修飾された」)が義務付けられる。これは食品中に新規遺伝子ないしはタンパク質が存在するか否かに関わらず、組成や栄養成分量などの特徴が変わる場合には必要とされる。
3. 考えるべき問題と質問
3.1 NBTの進展
Figure 2に示したように、FSANZは様々なNBTsをグループ分けし、問題を考えていく。
3.1.1 ゲノムが新規DNAを含む場合
イントラジェネシス、シスジェネシス、およびNBTではないがトランスジェネシスがこのグループに入る。新規DNAが挿入され、通常は新規のあるいは修飾された形のタンパク質が発現されるようになる。ただし、このような場合だけではなく、例えばRNA干渉という手法の場合には特定の遺伝子の発現が抑えられる。
新規DNAを挿入された生物に由来する食品の取り締まりは、Schedule 26に既に収載されている認可食品での様式と同等である。FSANZは既にシスジェネシスを用いて生産された食品の申請を受領しており、イントラジェネシスを用いて生産された食品の申請は、受理され、認可されている。
3.1.1の質問
● 一般原則として、新規DNA断片を含む生物に由来する食品は、市販前評価を受け認可を受けるようにするべきだと思うか?
● この一般原則に何がしかの例外を設けるべきか?
この3.1.1のグループにきっちりと適合しないのが遺伝子組換え体を用いた接ぎ木である。遺伝子組換え体を用いた接ぎ木では、台木の方にしか新規DNAは挿入されない。しかし、台木の新規DNAが発現により接ぎ穂やそれに由来する食品の特性が変化する可能性がある。ただし、食品に変化が生じたとしても、それは種子を介して受け継がれることは無く、接ぎ穂のDNAは不変である。
遺伝子組換え体を用いた接ぎ木における問題は、新規DNAが食品を生む接ぎ穂部分には無いことで、台木の新規DNAの発現により食品の特性が影響を受ける可能性を考慮したうえで、リスクが生じるかどうかである。
3.1.2 ゲノムが遺伝子工学で変化を受けない場合
このグループの特徴は、ヌル分離個体(null segregant)を生じるところである。最初の生物には新規DNAが挿入される。これにより新規に導入された形質は、育種の過程を促進し、育種の目的を達成しやすくするが、食品を生むことになる最終的な生物には不必要である。育種の過程が進むにつれ、子孫は選択され、新規DNAを引き継がなくなる。この状態の子孫を、null segregantと呼ぶ。
null segregantから得られる食品に、市販前評価や認可を求めることが正当であるかどうかという疑問が生じる。FSANZは、null segregantsを非遺伝子組換え体として認めてきた。OGTRもnull segregantsは遺伝子組換え生物ではないと述べている。
3.1.2の質問
● null segregant生物から得られる食品は、市販前評価や認可の対象外とすべきか?
● もし、すべきであるならば、例外条件として特別な基準を設けるべきか?また、そのような基準はどのようなものであるべきと考えるか?
● もし、対象外とすべきでないとするならば、null segregant生物から得られる食品に対する具体的な安全上の懸念は何か?
3.1.3 ゲノムは変わるが新規DNAは導入されない場合
いわゆるゲノム編集と呼ばれるグループである。場合によっては、編集の導入により、編集過程を促進するタンパク質をコードする新規DNAの挿入が伴われる。その場合、一旦編集により生じた新規DNAを含まない子孫が選択されて残るようにする。したがって、ゲノム編集を受けた生物もnull segregantsとなる可能性がある。
このグループで問題となるのは、ゲノム変更の内容とゲノム変更の規模である。この技術のゲノム変更は、化学的あるいは照射による突然変異(ゲノム上の無作為なサイトに変更が導入される以外はゲノム編集と同等の変化をもたらす)のような従来の技術を用いて導入される変化と同等の規模となる可能性がある一方、自然界で自発的に生じるもの(自然変異の表現型)であることもある。
この技術で導入されるゲノム変化は、DNA断片の削除や挿入、数個のヌクレオチドの挿入や削除(indels)、もしくは既存のDNA配列の書き換えである。DNAの削除やidelsは通常、遺伝子の機能の喪失「ノックアウト」を生じ、DNA配列の書き換えは通常既存のタンパク質の機能や特性を修飾するために行われる。
ゲノム編集は、新規の形質(農薬耐性植物、角無し乳牛)を持った生物を創成するために行われることもあるが、必ずしも食品に新規あるいは改変された性質がもたらされるわけではない。したがって、ゲノム変更の規模は、それにより生産される食品に及ぶ影響がどれくらいかを予測するための指標とはならない。
ゲノム編集では、目的とするサイト以外の非標的サイトにも変更が生じてしまう(オフターゲット作用)。オフターゲット作用の発生可能性は、それが目的のサイトと同様の配列を持つサイトで起こることから、ある程度予想がつく。このようなオフターゲット作用を減らしたり防止したりする多くの手段が開発されている。また、オフターゲット作用を検出する手段もいくつか利用できるようになっている。
3.1.3の質問
● ゲノム編集で作られた生物に由来する食品は、化学的にあるいは照射により突然変異を起こして作られた生物に由来する食品と比べて、リスクの点で同等であると考えられそうか?もし考えられない場合、どこに違いがあるか?
● もし、同等と考えられる場合、それは全てのゲノム編集由来食品に当てはめられるか?それともリスクの高い食品も存在しそうであり、市販前安全性評価や認可が必要であると考えるか?
3.2 他の技術
現在は食品に適用されていないが、将来的に適用されるように開発される見込みのものもある。例えば、DNAメチル化は、DNA配列自体を変更することなく、メチル化の状態を修飾し、遺伝子がどのように発現するかを変化させ、生物の特性に変更を加える。メチル化の状態の変化は次の世代に受け継がれる場合がある。
3.2の質問
● この意見募集書で取り上げられていない、将来食品生産の向上のために利用される可能性がある他の技術を知っているか?
● DNAメチル化のような他の技術で生産される食品は、市販前安全性評価や認可の手続きを通すべきか?
3.3 規制の意味付け
現行の、新規遺伝子挿入工程に基づいた「遺伝子工学を用いて生産された食品」および「遺伝子工学」の定義は、20年近く前に確立されたものである。この頃は、DNA挿入には、無関係の生物を起源とする遺伝子を用いていた。したがって、遺伝子工学由来の食品は、普通の食品と比べて潜在的により高いリスクを有していると考えられていた。
新規DNAを挿入された食品を取り締まる機構としては、新規遺伝子挿入工程に基づいた手法がうまく機能しており、目的は達成されていた。しかし、NBTsに関連して考えなくてはならない問題は、市販前認可制度を新規遺伝子挿入工程に基づいて確立することが、技術革新の急速なペースを考慮すると、今でも目的にかなった手法であり続けているかどうかであり、また、そのような手法が、どのような食品を市販前安全性評価で取り締まるべきかという観点から、リスクに基づいた適切な成果をもたらし得るものとなるかどうかである。
3.3の質問
● NBTsの場合、新規遺伝子挿入工程に基づいた(遺伝子工学食品の)定義は、市販前認可制度を適用する理由として適切だと思うか?もし適切でないなら、他にどのような手法が考えられるか?
● もし適切だと思うならば、新規遺伝子挿入工程に基づく手法をどのようにNBTsに適用するか?
● 現行の定義の態様の中に、保持すべきもの、あるいはこれからも適用し続けられるものはあるか?
3.3 他の関連問題
この文書は、Codeの内容、およびNBTsを用いて生産された食品を市販前安全性評価の対象とすべきかどうかに焦点が当てられている。
FSANZがCodeの変更案の提出手続きを進める場合には、食品供給に対する信頼を維持すること、リスクに応じた規制を設けそれにより恩恵が得られることを確保すること、および変更案が実施可能であることを確認することなど、多くの他の問題を考慮する必要がある。FSANZ法においても、FSANZがCodeの修正案を検討する場合に考慮すべき具体的な基準が記載されている(Appendix 2参照)。
3.4の質問
● この文書で触れられていない問題で、この文書の一環として、FSANZが考慮すべきもの、ないしはFSANZがCodeへ何らかの修正案として今後提示すべきものは有るか?
(26日の続き)