食品安全情報blog過去記事

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論文

Scienceニュース
Fake news spreads faster than true news on Twitter—thanks to people, not bots
By Katie LanginMar. 8, 2018
http://www.sciencemag.org/news/2018/03/fake-news-spreads-faster-true-news-twitter-thanks-people-not-bots
ソーシャルネットワークで間違った情報を拡散する主な犯人はボットではなく人間で、嘘を含むツイートがTwitter 上で1500人に届くのは真実のツイートの6倍早いことを研究が示した。
この研究の筆頭著者のマサチューセッツ工科大学のデータサイエンティストSoroush Vosoughiがこの新しい研究を思いついたきっかけは2013年のボストンマラソン爆破事件である。爆破後にソーシャルメディアで読んだ内容の多くは嘘だった。Twitter 上の噂は単に面白がるものではなく、現実の人々の生活に影響を与えリアルな害を与えることがあることを認識した。彼と同僚は2006年からのTwitterの12年のデータを集め、その中から6つのファクトチェック団体が調査対象にしたニュースに関連するものを抜き出した。126000のニュースと300万人による450回のシェアのデータが得られ、それを用いて真のニュースと虚偽のニュースの拡散を比較した。その結果、真のニュースが1000人のTwitterユーザーに到達することは滅多にないが、最もたちの悪い虚偽のニュースは常に1万人以上に届くことを発見した。虚偽のニュースはどのニュースであってもより早くより広く拡散するが、特に問題がはっきりしているのは政治的ニュースである。Scienceに発表。
当初研究者らはボットのせいではないかと疑っていたがボット検出技術を用いても結果は変わらず、人間が原因であった。また虚偽のニュースを拡散しているユーザーのフォロワーが多いこともなかった。虚偽のニュースの方がより目新しく感情を惹起することがリツイートを多くする理由のようだった。
Scienceに同じく今日発表された「フェイクニュースの科学についての政治的視点」の共著者であるNortheastern大学のコンピューターソーシャルサイエンティストDavid Lazerは、この研究はフェイクニュースの問題の大きさについて知見を与える、という。彼は、短期的には各種ソーシャルメディアは問題の大きさを減らすための安全策が必要であろうと幹上げる。しかし長期的にはもっと科学が必要である。

The science of fake news
Science 09 Mar 2018:Vol. 359, Issue 6380, pp. 1094-1096
http://science.sciencemag.org/content/359/6380/1094.full
考えられる介入方法として、個人のエンパワメント、プラットフォームベースの検出と介入:アルゴリズムとボット、をあげている。
ソーシャルメディアは問題をより大きくしたので目立つだけで、昔から嘘情報の方が売れるし広がるものだった。食品だって添加物が健康に悪いとかチョコレートが良いとかいう嘘の方が人口に膾炙している。それが実際に生活に影響している。リスクコミュニケーションでは個人のエンパワメントを目指しているのだけれど、一部の人たちはそれが気に入らないようでリスコミはリスクの押しつけだと言う。個人個人が力をもつと誰かの思い通りになることはなくなるから「統一運動」には不都合だよねぇ)

  • 報告書:巨大たばこ産業が金儲けのために世界で最も脆弱な人々を標的にしている

Report: Big tobacco is targeting the world's most vulnerable to increase profits
8-Mar-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/acs-rbt030618.php
タバコアトラス第6版
http://tobaccoatlas.org/news/

  • 市販の農薬:見た目ほど安全ではない

Commercial pesticides: Not as safe as they seem
8-Mar-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/f-cpn030818.php
Frontiers in Public Healthに発表されたレビュー。農薬の評価は有効成分について行われているが市販の製品には有効成分以外のものが含まれ、それらの毒性は有効成分ほど調べられておらず製品によりばらばらである。
市販のグリホサート含有除草剤の毒性を比較すると一部はグリホサート単独より最大1000倍も毒性が高い。有効成分だけではなく製剤全体を調べるのが予防的アプローチである、とMesnage博士は言う
(界面活性剤の「毒性」に比べたらグリホサートの毒性が低いのは当たり前なんだけど。「製剤」の毒性試験ってどうやるのかな?)

  • 研究は、メコン川のダムは命と環境を破壊する可能性があるという

Study says Mekong River dams could disrupt lives, environment
8-Mar-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/uoic-ssm030818.php
東南アジア諸国6ヶ国を流れる世界最大の川のひとつ、メコン川は何百万人もの命を支えてきた。水力発電のために本流に8個以上のダムが提案されていて支流には既に60以上がある。イリノイ大学アイオワ州立大学の科学者による新しい論文はダムの建設が住人や環境に与える影響を記す。Journal of Soil and Water Conservation.

  • 子どもを産むと女性のテロメアが11年分高齢に見える

Having children can make women's telomeres seem 11 years older
8-Mar-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/gmu-hcc030818.php
Human Reproduction
(多産の人は死んでるってことですね!テロメアの長さがあてにならないという話だと思うけど)

  • 何百万人もの中国の農家は膨大な作物実験の利益を享受する

Natureニュース
Millions of Chinese farmers reap benefits of huge crop experiment
07 March 2018  David Cyranoski
https://www.nature.com/articles/d41586-018-02792-7
2100万もの小規模農家の参加した10年にわたる研究は、根拠に基づいたアプローチが如何にして食糧安全保証を向上させるかを示す
中国で農業をより持続可能にするための画期的プロジェクトは、全国の数百万の小規模農家の相当量の肥料の使用を減らしつつ作物の収量を増やした。Natureに発表。
10年にわたる研究の一環として、科学者が膨大な量の農業データを解析した。全国キャンペーンにより約2090万の農家が生産性を上げ環境影響を減らすための助言を採用した。この介入の結果、農家には合計1220億ドルの利益になった。
このプロジェクトの規模の大きさが国際的科学者を驚かせた。食糧需要の増加するなかで、この教訓が他国でも生かせることを期待する
農家の教育のために中国中の1000人以上の研究者が65000人地元の官僚や技術者、14万人の農業ビジネス関係者と協力した。
(日本も似たようなことやってるんだけど全国規模で統一データを集めてnatureに論文を出す、ということができなかったんだろうなぁ)