食品安全情報blog過去記事

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米に含まれるヒ素のリスク管理に対する政府の取り組み

GAO (Government Accountability Office: 米国政府説明責任局)
Federal Efforts to Manage the Risk of Arsenic in Rice
March 2018
◇概略https://www.gao.gov/products/GAO-18-199
FDAは2016年、乳幼児は摂取する食事に多様性が少ないため、ヒ素による健康へのリスクは大人よりも高いと警告を発し、乳幼児向け米穀に含まれるヒ素の量を制限するガイダンス案を提示した。
GAOは、米に含まれるヒ素リスク管理に関する近年の科学的文献およびFDAやUSDAの活動をレビューした。これらの機関は米に含まれるヒ素の検出法を研究し、他の活動も実施していることが確認された。また、FDAは国民にリスクをより良く伝えることができ、他の機関とも協働できたことが確認された。
GAOは、とりわけFDAに対し、乳児向け米穀に関する上述のガイダンスを仕上げる期限を設定し、FDAの活動をより良く調整すべく業務に当たるように勧告*した。
米は通常冠水環境で生育するため、ヒ素汚染を受けやすいと考えられる。
*: https://www.gao.gov/products/GAO-18-199?mobile_opt_out=1#summary_recommend
◇主要部https://www.gao.gov/assets/700/690700.pdf
・ 米国政府説明責任局(GAO)が知り得たこと
米国科学アカデミーの米国学術研究会議(NRC)は、2013年およびより近年に行われた重要な科学的レビューの中で、長期ヒ素摂取と心血管系疾患の様な人の健康への有害影響との間に関連があることを示す根拠を提示した。科学文献の調査の一環としてNRCがレビューした試験の多くは、飲料水からのヒ素の摂取を対象としていたが、それ以外のものではあらゆる摂取源が取り上げられており、それには米などの食事による摂取源も含まれている。NRCは、食品、特に米が、ヒ素の中でも毒性の高い無機ヒ素の重要な摂取源となっている可能性が示唆されると述べている。しかし、米の消費量および米に含まれるヒ素の量は非常にばらつきがあり、米から摂取されるヒ素の量を推定するのが困難になっている。NRCは、高用量のヒ素により、低用量の場合と比べ、健康への有害影響がいくつか生じるという信頼性の高い根拠を得ている。ここで高用量とは、NRCにより、飲用水中で100 ppb以上と定義される。米国では低用量に保たれているのがより一般的であるが、低用量のヒ素を摂取した場合の健康影響についての調査は実施中である。
米国食品医薬品局(FDA)と米国農務省(USDA)は、米に含まれるヒ素によるヒトの健康へのリスクを管理するための行動を起こしている。例えば、米に含まれるヒ素を長期にわたり摂取した場合に生じる可能性のある、健康への影響の種類や発生率を調べることである。FDAは、リスクについての情報を国民に伝達したり報告したりする行動も起こしている。2016年、FDAは、米に含まれるヒ素を長期にわたり摂取した場合に生じるヒトの健康への影響に関し、リスク評価書を公表し、乳幼児向け米穀に含まれる無機ヒ素が100 ppbを超えることが無いよう、業界に向けてガイダンス案を発表した。FDAは、このガイダンス案を、乳幼児が摂取する食事にばらつきが少ないため、高いリスクに直面していることを踏まえて作成したと強調している。ただし、このリスク評価書は2015年2月以前に公表された科学的試験のレビューに基づいているものだが、FDAは更新を行っておらず、ガイダンス案も最終的なものに仕上げられていない。これまでにGAOは、リスクの情報を共有し、利害関係者からのフィードバックをくみ取ることが、機関がリスクを特定してより良く管理するのに役立ち、国会や納税者に対する透明性や説明責任履行度を向上させるという認識に至っている。FDA局員は、リスク評価書の更新は新たに入手された情報に基づいて行われるであろうし、ガイダンス案を最終的なものに仕上げる前にパブリックコメントを考慮しなくてはならないだろうと述べている。しかし、どちらについても期限が提示されていない。それらの期限を設定することは、FDAがいつ行動を起こすのかを明確にするのに役立ち、FDAの決定の透明性向上に役立つ。
FDAはUSDAや他の国家機関と様々な規模で協調して、米に含まれるヒ素のリスクを管理するための行動を取ってきた。例えば、FDAとUSDAは、共に分野横断的な戦略的目標をヒ素などの食品汚染物質の検出法の開発に置いていたが、限られた範囲ながら、米におけるヒ素の検出法の開発を共同で行った。GAOは以前、機関にまたがる機構を構築して分野横断的な問題に共同で取り組むことは、潜在的な重複努力を低減する可能性があると指摘している。FDAとUSDAの職員は、非公式的な協働はあったものの、より公式に協調する機構は存在しなかったと述べている。協調のための機構を構築すれば、EFAとUSDAは、その能力を高め、その資源を有効に使用して潜在的な重複努力の発生を防ぐことができる。
◇全文: https://www.gao.gov/assets/700/690701.pdfを参照。
◇情報・データ源を含む全文: https://www.gao.gov/assets/700/690829.pdfを参照。