食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 遺伝子兵器は世界の主要作物破壊者の一つと戦えるか?

Scienceニュース
Can a genetic weapon combat one of the world’s major crop destroyers?
By Roni DenglerApr. 23, 2018
http://www.sciencemag.org/news/2018/04/can-genetic-weapon-combat-one-world-s-major-crop-destroyers
オウトウショウジョウバエDrosophila suzukiiは未熟な果物の内部に卵を産み世界中のラズベリー、イチゴ、サクランボに害を与える。現在科学者はジーンドライブという戦略で対策法を検討している。D. suzukiiはかつて日本にしかいなかったが現在は南極を除く全ての大陸に侵入し米国には10年前に入ってきた。カリフォルニアのラズベリー産業だけでも2009-2014年の損害は4000万ドルになる。現在のコントロール法はマラチオンに過度に依存しているが常に有効とは限らず耐性への懸念もある。
科学者らはかつてショウジョウバエで試みたジーンドライブをD. suzukiiに適用している。PNASに今月発表。

  • がん検診で偽陽性だった人は将来検診を受ける可能性が高い

People with false-positive cancer screening results may be more likely to receive future screening
23-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/w-pwf042018.php
CANCERに発表。がん検診に偽陽性はよくあり、10年の間に、毎年マンモグラムを受ける女性だと100人中50-60人、便検査だと100人中23人、前立腺がん検査を受ける男性は100人中10-12人が偽陽性になる。偽陽性の結果がその後のがん検診に与える影響について、50-75才の92405人の10年の記録を検討した。
マンモグラ偽陽性だった女性は乳がん検診は少なくとも43%、大腸がん検診は少なくとも25%受けやすい。前立腺がん偽陽性だった男性は少なくとも22%大腸がん検診をうけやすい。偽陽性が多ければ多いほどさらなるがん検診を受けることとの関連が強い。しかし便潜血検査で偽陽性だった女性が乳がん検診を受けやすいことはない。
(がんかも、って言われた経験が不安を惹起してるんじゃないかなぁ。偽陽性って陰性より陽性に近いのだと理解されているような。人を不安にするのは簡単だけれど安心させるのは困難)

  • 中程度/高カフェイン量への胎児暴露は子ども期の過剰な体重増加と関連

Fetal exposure to moderate/high caffeine levels linked to excess childhood weight gain
23-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/b-fet042018.php
母親はカフェインをカットすべき?と研究者は問う
BMJ Open。2002-2008年のノルウェー母子コホート研究の51000の母親と乳児のペアのデータを用いた。妊娠22週での母親の食事調査からカフェイン摂取量を推定し、1日0-49 mg (低); 50-199 mg (平均); 200-299 mg (高); および 300 + mg (非常に高い)に分類。子どもの身長体重は8才まで11回測定。妊婦のカフェイン摂取量は46%が低いと分類され高いは7%、非常に高いは3%だった。摂取量が多いと30才以上、子どもが一人より多い、カロリー摂取量が多い、妊娠中に喫煙の確率が高い。カフェイン摂取量が非常に高い女性は教育をあまり受けていない、妊娠前に肥満だった可能性が高い
(交絡じゃないかと思われる要因をたくさん並べておいて、それでもカフェインのせいだと考察する。)

  • 乳がんリスクの高い女性の7人中6人は予防対策としてのタモキシフェンを避ける

Six in 7 women at high risk of breast cancer shun tamoxifen as a preventative measure
23-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/cru-sis042318.php
Cancer Research UKが資金提供しBreast Cancer Research and Treatmentに発表された研究によると、乳がん家族歴がある女性の7人中6人は予防対策としてのタモキシフェンを使用しない。イングランドの258人の健康でリスクの高い女性に質問した。医薬品を使用しない理由として、がんは運命だと考えていること、医薬品一般に不信、副作用が怖い、など。しかし子どものいる女性はタモキシフェンをとる可能性が高かった。社会階級、教育、人種による影響はない。
(がん化学予防で効果が認められているものはタモキシフェンくらいしかないのだけれど、あまり使われていない。そして根拠のない健康食品は盛んに使われるという現状。)

  • ECDCの報告では十代と若年成人のはしか予防接種のギャップを強調

Measles vaccination gaps in teenagers and young adults highlighted in ECDC's report
23-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/ecfd-mvg042318.php
ECDCののデータは、2017年にはしかになった十代と若年成人の最大80%は予防接種をしていないことを示す。全体として予防接種率の高い国であっても予防接種をしていない集団があることを示唆する
予防接種がまだできない、最も影響の大きい乳児は「集団免疫」でしか守れない。
4月23-27日は欧州予防摂取週間

  • あたらしい研究は出産前の大麻使用は低出生体重と関連することを示す

New study shows prenatal cannabis use associated with low birth weights
23-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/uoca-nss042318.php
コロラド大学公衆衛生学部による研究で、妊娠中に大麻を使用した女性では低出生体重が50%増加することを示す。The Journal of Pediatrics
コロラド州では大麻の使用率は妊婦で5.7%、授乳中の女性で5%だった。主著者のTessa Crume准教授はこの数字は驚くべきものだが大麻に関する態度の変化を反映しているという。「大麻はますます利用しやすく、ますます強力になっていて、声の大きい大麻支持者が運動を展開しているため大麻は安全で妊娠中に使ってもいいという認識が作られている」

  • 脆弱な乳児への殺菌供与ヒト乳使用を検討した特集シリーズ

Special series examines the use of pasteurized donor human milk for vulnerable infants
23-Apr-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-04/uops-sse042318.php
未熟児あるいは健康上の問題で生後すぐに入院が必要な乳児への医療介入としてのヒトの乳は、母親がHIV陽性などの場合や十分量供給できない場合には殺菌供与ヒト乳(PDHM)が代用品として推奨されている。米国とカナダでは2016年には525万オンスのPDHMが病院に供与された。このPDHMに関する特集シリーズがJournal of Obstetric Gynecologic and Neonatal Nursingに発表された。
PDHMへの関心が世界的に高まっていて、どうやってドナーを募り安全性を確保するのか、PDHMの使用の帰結、コスト等への理解が必要である