食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 欧州の研究がセラリーニのGMOトウモロコシの腫瘍宣伝が誤りであることを証明する

European studies disprove Seralini’s GMO maize tumor claims
By Joan Conrow June 7, 2018
https://allianceforscience.cornell.edu/blog/2018/06/european-studies-disprove-seralinis-gmo-maize-tumor-claims/
Caen大学のSéralini教授は2012年9月にFood and Chemical ToxicologyにセンセーショナルなGMトウモロコシがラットに腫瘍を作るという主張を発表し、長期GMO投与試験を要求した。この論文は後に取り下げられたが反GMO団体はGM食品の安全性に恐怖を与えるためにSéraliniの結論をばらまき続けている。
今回三つの研究が−EUが出資したGRACEと G-TwYST, 及びフランスのGMO90+ −Séraliniの主要な結論を否定した。このSéraliniの主張によって生じた懸念に対応するための研究は、除草剤耐性トウモロコシにリスクを同定できなかった。
フランス植物バイオテクノロジー協会(AFBV)は「欧州の消費者はこれらの研究の結果を知るべきである。そして市販が認められたGM植物の品質や健康について安心し、世界で最も厳しい欧州の評価システムへの信頼を再確認すべきである」という。
G-TwYST (GM Plant Two Year Safety Testing)
https://www.g-twyst.eu/files/Conclusions-Recommendations/GTwYSTConclusionsandrecommendations-final.pdf
GRACE (GMO Risk Assessment and Communication of Evidence)
http://www.grace-fp7.eu/content/eu-research-project-grace-publishes-first-study-findings
http://www.grace-fp7.eu/sites/default/files/GRACE-FeedingTrials_AB_ArchToxicol_2014.pdf
そしてBtトウモロコシについてのGMO90+ study
http://www.recherche-riskogm.fr/sites/default/files/projets/2015_02_13_gmo90plus_en_ligne.pdf
Séralini研究によって提示された懸念に応えるだけではなく、この研究は食品丸ごとを使ったがん原性試験が必要なのはどのような場合かというガイダンスをEUに提供する。G-TwYST報告では、必要な動物の数の多さを考えると、丸ごと食品を用いた試験の実施には慎重な評価をすべきと結論している。
議論の多い課題での研究という特徴のため、G-TwYST研究では関係者の参加、透明性、データアクセス可能性に相当な努力をした、という。研究計画の作成と結果の両方での関係者の参加、研究計画案や予備的結果を開示する、議論の方法、全ての関係者の意見を系統的に考慮し回答する、詳細な文書記録と全ての段階での透明性、論文はオープンアクセスにすること、論文が出た後は生データを入手可能にすること、などである。こうしたアプローチは参加した関係者の大部分から高く評価された。
皿に報告書では「これらの課題には相当な資源と努力を費やしルーチンでは使えない。しかし極度に分断した意見と高度に紛争中の科学技術的事例では研究の質と社会的堅強さを改善するのに興味深い選択肢かもしれない。
(メディアはセラリーニのいいかげんな取り下げ論文を報道してもこういうお金と時間をかけた研究は報道しない。それが消費者にどれだけ不利益になっていることか。)

  • 肉の将来:科学は動物を代用できるか?

The future of meat: Can science replace animals?
Nazimi Açıkgöz | Genetic Literacy Project | June 8, 2018
https://geneticliteracyproject.org/2018/06/08/the-future-of-meat-can-science-replace-animals/
農業の環境への負の影響を考えたとき、畜産は際だっている。例えば水なら、野菜1kgを作るのに322L、果物なら962L、チキンは4325Lで羊は8763L、牛肉は8763L。
土地の使用については農地の80%が家畜の放牧地で、それ以外に生産された植物の約30%が家畜の餌になる。温室効果ガスは、推定により6-32%が畜産による。
2013年から科学者は実験室で肉を作り始めた。販売まではしばらくかかるだろうが菜食主義者向けの植物を原料にしたバーガーは既に販売され売り上げは増えている。遺伝子組換え酵母が使われているがEUでも米国でもバイテク規制の対象ではない。
1900年代には鶏肉にするために鶏は112日飼育されたが今は45日に減っている。将来はどうなるだろう?
(抜粋)

Venezuela hit by first case of Polio since 1989 as country falls deeper into crisis
By Cody Weddle 10 June 2018
https://www.telegraph.co.uk/news/2018/06/10/venezuela-hit-first-case-polio-since-1989-country-falls-deeper/
ベネズエラはポリオを根絶して30年近く、経済破綻で医療システムが打撃を受け、ポリオが報告された。他の病気も増えるだろう。

  • パリ市民は薬物法の緩和後大麻を求めて行列

Parisians queue for cannabis after softening of drug laws
By David Chazan, Paris 10 June 2018 •
https://www.telegraph.co.uk/news/2018/06/10/parisians-queue-cannabis-softening-drug-laws/
パリで合法大麻を売る最初の「コーヒーショップ」に、顧客が行列を作っている。THC含量が0.2%以下の大麻なら販売できるという法の緩和を受けて、先週販売店が開店した。店主は彼らの売る大麻は薬物使用者が望むような「ハイ」にはならないと主張する
製品はスイスからの輸入で「吸わないこと」と表示してあるが明らかに一部の客は気にしていない。一部の地元住民は販売店の存在に反対している。
大麻を買う人の言い訳がいろいろ書いてある。大麻には得意な「予防原則」は適用しないんだ。どう考えてもグリホサートよりハイリスクだし必需品でもないのに。)

  • 低脂肪対低炭水化物ダイエット:勝者は?

Low-Fat vs. Low-Carb Diets: And the Winner Is ... ?
by Wellness Letter June 07, 2018
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/diet-weight-loss/article/low-fat-vs-low-carb-diets-and-winner
過去50年、減量と健康のための食事法の基本的二項対立は低脂肪対低炭水化物だった。1950年代の米国公式食事ガイドラインで薦めた低脂肪食は1970年代にRobert Atkinsのような低炭水化物ダイエットの提唱者らによって疑問を提示されはじめた。それから何十もの研究が低脂肪と低炭水化物ダイエットを比較し、矛盾した結果を出し続けて来た−主に食事内容があまりにもばらばらでヒトにより結果が異なり普通人間は長期にわたって食事法を守ることができないため。
一部のヒトは低炭水化物ダイエットの方が良く別のヒトは低脂肪の方が体重を管理できるのは何故?予備的研究を根拠にした二つの理論では、遺伝的要因や血糖の制御の違いなどを理由にしている。スタンフォード大学の新しい大規模臨床試験ではこれらの理論を検証しようとした。それは「健康的な低脂肪」と「健康的な低炭水化物」を比較した。DIETFITSと呼ばれるこの研究でも、再び明確な勝ち負けをつけられなかった。そして期待に反して遺伝やインスリン感受性はどちらが良いかの予想にはならなかった。良い知らせとしてはどちらであっても健康的な食生活は減量には同程度に役にたつ。
素晴らしい研究
2018年2月にJAMAに発表された研究は609人を参加させて1年続き、800万ドルを費やした。(詳細略)
この研究がみつけたこと
1年経って、低脂肪群はカロリーの48%を炭水化物から、29%を脂肪から摂っていた。低炭水化物群は炭水化物が30%で脂肪が45%だった。これは極端なものではない。いずれの群も体重は約6%減った。体重の変化率は同じ群でもヒトにより大きく異なり、やはり遺伝やインスリン感受性に関連はなかった
まだわからないこと
この研究は食事に関する議論に重要な知見を与える。特に健康的食生活を強調する。しかし多くの疑問にはまだ答えられない

地中海食対菜食
Mediterranean vs. Vegetarian Diets
基本:全てのヒトにとって「ベストな食事法」はない。世界中の伝統的食生活のより健康的なバージョンが同様に有益になれるだろう

  • ソイレントは未来の栄養か?

Is Soylent the Future of Nutrition?
by Brian Rinker June 06, 2018
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/diet-weight-loss/article/soylent-future-nutrition
将来必要な栄養は錠剤や飲料になることを夢想したり恐れたりしたことがあるかもしれない。そんな未来はやってきた?20代の起業家が考案したソイレントというボトルに入った食事代用飲料の支持者はそう考えているようだ。
それは1973年のSF映画ソイレントグリーン」に描かれた人間の死体から作った悪名高い食品ではない。現代のソイレントは植物由来で死体は入っていないが同様のアイディアを共有する−人類が安価で持続可能な製品で生き残ることができる、という。
2013年にソイレントが発売されてから、狂信者のような支持者が現れ、今やアマゾンや7-Elevenや Walmartでも販売されている。しかし同時に嘲りや批判も受けている。あなたがソイレント運動に参加しようと思っているか疑わしいと思っているかに関わらず、いくつかの疑問への答えを記す。
ソイレントには何が含まれる?
ソイレントにはタンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルなど健康的な食事に必要なものが含まれる。もともとソイレントは全ての食事をそれだけにする目的で作られた。しかしそれからこの会社は少し調整してどの食事の代わりにしてもいいと言っている。
オリジナルフレーバーの飲料は14オンスで400カロリー、大豆タンパク質20g、ひまわりとキャノーラ由来の脂肪21g、炭水化物36g、添加糖9gである。さらに食物繊維3g、名とリム300mg、そして25種類のビタミンやミネラルの一日の所要量の20%を供給する。種類によって他のものが加えられている。
栄養成分に違いはあっても、ソイレントは他の食事代用ドリンクとあまり変わらない。違うのは宣伝方法である。ソイレントはシリコンバレーの若い技術者を標的にして、完全菜食主義の健康的製品を売る企業というブランドを作っている。一方Ensureは高齢者向けと評判が高い。
それは本当に健康的?
議論の余地がある。ソイレントの背景にある考えは、人間は生存のためには食品を必要としない、食品に含まれる栄養素が必要だというものである。問題は食品が我々にとって良いものであるために何が必要なのかはわかっていない、ということである。健康のためにはこれまでわかっていないものが多分たくさんあるだろう。そして食品に含まれる成分は単なる個々の部分の合計ではなく全体として相乗的に健康的で、粉末やドリンクは代用できないだろう。ソイレントは平均的アメリカ人の食生活よりは健康的だがそれはアメリカ人の食生活が如何に悪いかを示すものでしかない。
それは美味しい?
あんまり。
有害影響は?
まだ早すぎる。この製品について発表された研究論文はない。一部のヒトは最初の頃お腹の調子が悪くなったと報告している。懸念があるのはぞんざいな製造方法で、いくつかのリコールがそれを証明している(カビやアレルゲン)
基本
便利な食事代用品としては多くのファストフードより健康的だろう。しかし健康的食事は地中海食やDASH食のように、リアルな丸ごとの食品からなる。病気により固形食が食べられない場合には役にたつかもしれないが医師への相談が必要である。医療用の食事としてはBoostや Ensureなどが既に市販されている。
(日本でもこういう会社あるんだ。
http://www.comp.jp/
「世界最高水準の栄養学で「完全食」」とか、舐めてるとしか思えない。)

  • 慢性ライム病:知っておくべきこと

Chronic Lyme Disease: What to Know
by Peter Jaret  June 05, 2018
http://www.berkeleywellness.com/self-care/preventive-care/article/chronic-lyme-disease-what-know
1970年代に初めてライム病の兆候や症状が同定されたとき、それは謎だった。北米のダニ二種類に拡がっているBorrelia burgdorferiという細菌が原因だとわかるのにそう時間はかからなかった。しかしながら誤解が消えない。誤解の一つはライム病は治療が困難で多くのヒトが慢性症状に苦しむ、というものである。慢性ライム病だと言われた人たちはしばしば根拠のない治療−何ヶ月も何年も抗生物質免疫グロブリンを経口や静注など−を受ける。そのような治療法は症状を改善することはなく死亡を含む重大な合併症をおこす可能性がある。CDCが報告している。
診断は難しいが治療は容易
(ライム病の解説、略)
慢性ライム病:議論の多い診断
ライム病になった患者の一部は、抗生物質治療の後で疲労や関節痛、認知機能低下などの慢性症状を呈すことがある。間違った情報をもった医師やインターネットの誤解を招く情報で慢性ライム病だと診断するかもしれない。一部の患者はB. burgdorferi感染経験が無くても慢性ライム病だと診断されている。いわゆるライム病専門医が慢性ライム病は実在すると確信していても米国の医学会による臨床ガイドラインでは慢性ライム病を認めておらず、長期抗生物質投与やその他の非正統的治療は薦めていない。それは患者の症状が存在しないという意味ではない。しかし慢性ライム病を疑う理由はある。一つは長期にわたる抗生物質投与が患者の役にたつことが示されていないこと。そしてプロバイオティクスや高圧酸素療法、エネルギー療法、幹細胞移植など各種代替療法が宣伝されている、時には活発に売り込まれていることである。
やるべきこと
もし慢性ライム病と診断されて抗生物質の長期投与が薦められたら、セカンドオピニオンを求めること。行くべき場所は大学の医療センター。
(ダニ媒介疾患が増えていて注目されている。日本でも。注目分野は詐欺師も活発になる)

  • Lancetエディトリアル

「やってみる権利法」による偽りの希望
False hope with the Right to Try Act
Volume 391, No. 10137, p2296, 9 June 2018
5月30日の水曜日にDonald Trump米国大統領は、第一相試験をパスした実験的未承認薬を患者に早期に使うかどうかを決めるFDAの権限を排除する「やってみる権利法」に署名した。提唱者達はこの簡略化でより多くの人たちが薬を使えるようになり寿命が延びて命が救われるという。米国がん学会や臨床がん学会を含む多くの批判者は、新しい法律は既にあるFDAの「拡大アクセス/温情による使用」計画以上の利益を与えることはないという。さらに末期の定義を「命に関わる病気や状態」と拡大し、糖尿病や心疾患患者に根拠のない命に関わる害があるかもしれない実験的医薬品を使うことを正当化する。FDAのScott Gottlieb長官はこの変更を批判していてFDAがこの法律をどう解釈するのかは不明である。この法律を書いた共和党上院議員Ron Johnsonはこの法律の目的はFDAの弱体化であると露骨に言っている

Lancetのこの号のシリーズは腰痛
これは無料アクセス
Prevention and treatment of low back pain: evidence, challenges, and promising directions
Nadine E Foster et al., Volume 391, No. 10137, p2368–2383, 9 June 2018
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)30489-6/fulltext
(腰痛で各種画像診断したり薬や手術を薦めるのは不適切な場合が多いことが問題になっている。日本のマッサージとか整体とかでやり過ごす風潮は結果的に過剰医療による害の抑制になっているのかもしれない。重大な病気がある場合には見過ごされるというリスクはあるけれど。)