食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 地中海食と心疾患を調べた研究の取り下げと再発表についての専門家の反応

SMC UK
expert reaction to retraction and republication of study looking at Mediterranean diet and heart disease
June 13, 2018
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-retraction-and-republication-of-study-looking-at-mediterranean-diet-and-heart-disease/
「地中海食による心血管系疾患の一次予防」論文がNEJMから取り下げられた
Quadramバイオサイエンス研究所栄養研究者で名誉フェローIan Johnson博士
もとの論文は、非常に珍しい、変数としてまるごとの食事を使いエンドポイントが疾患である介入試験であった。この論文は食事の分野では非常に重要で、完全な取り下げは相当な影響がある。しかし私の読んだところ当初の統計学的矛盾点は適切に対処されており結論に関してはあまり変わっていない。
King’s College London栄養と食事名誉教授Tom Sanders教授
もとの論文には無作為化にいくつかの矛盾があったようだ。しかし全体的結論は変わっていない。
Glasgow大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
これは極めて普通でない対応で、NEJMがこの問題を重要に受け止めて徹底的な調査をし、著者に統計レビュー担当者を満足させるような再解析を求めた。結果は概ね同じになったことには安心するが、この取り下げと再解析は試験結果の頑健さに対する見解に影響するだろう。一方新たにNEJMに発表された論文は手続きを踏んだもので結果は同様でありこの知見を考慮した最近のガイドラインが変更されることはないだろう。全体として、このプロセス全体は、将来の研究をより高度な水準に導くだろうと私は信じる。

  • 統計に間違いがあると指摘された後、主要医学雑誌は事実関係を明確にする

Sceinceニュース
Following charges of flawed statistics, major medical journal sets the record straight
By Jennifer Couzin-FrankelJun. 13, 2018
http://www.sciencemag.org/news/2018/06/following-charges-flawed-statistics-major-medical-journal-sets-record-straight
統計解析に警報が鳴って地中海食の健康上の利益についての研究が書き直された
多くの臨床試験論文に統計学的間違いがあるというレビューから1年、The New England Journal of Medicine (NEJM)は本日指摘された地中海食の心疾患予防論文のうち5つを修正し6つ目を取り下げた(ネタバレ注意:新しいバージョンの論文によるとそれでも予防はする)。これまで見過ごされてきた間違いにも関わらず、NEJMのシステムは意図した通りに機能していて、NEJMは指摘されて数日以内に調査を開始している
ことの発端はAnaesthesiaに2017年6月に発表されたJohn Carlisleの解析である。コンピュータプログラムの助けを借りて5087のRCTの、ボランティアの無作為ではない割付を探した。
一つの論文は2013年に発表されたスペインの大規模臨床試験で、スペイン中の7500人が15年も追跡されているので何が悪かったのかを追跡するのは簡単ではなかった。何ヶ月にもわたる調査で、試験のうち1588人が適切に無作為割り付けされていなかったことを発見した。例えば一つの家庭内で同じ群に割り付けて報告しない、田舎では毎週オリーブ油を運ぶのに便利だからと病院からの距離で割り付ける、など。
しかし同じように統計上の問題が指摘された他の7つの雑誌はまだ調査中あるいは反応していない。

  • ワールドカップのための放射性化合物禁止がロシアの生化学研究室を苛立たせる

Natureニュース
World Cup ban on radioactive chemicals frustrates Russian biochemistry labs
Quirin Schiermeier  13 June 2018
https://www.nature.com/articles/d41586-018-05423-3
既に困難な状況にあるロシアの生化学者の状況がさらに悪化
世界中のサッカーファンは6月14日から開催されるロシアワールドカップのキックオフを待ち望んでいるだろう。しかし一部のロシアの研究者は仕方なく試合を見ることになるかもしれない。テロ対策で放射性試薬が入手できないのだ。5月11日にロシア政府は放射性物質を含む有害化合物の販売や輸送を2か月停止した。あてはまるのは試合を行う都市だけだが多くの都市は研究の要所である。この対策がロシアの比較的小規模な分子生物学研究を停滞させる
(いまだに放射性物質頼りなんだ?)

  • RCMは乳児栄養について新しい意見表明を発表

RCM publishes new position statement on infant feeding
12 June, 2018
https://www.rcm.org.uk/news-views-and-analysis/news/rcm-publishes-new-position-statement-on-infant-feeding
「母乳を与えるかどうかの決定は女性の選択であり尊重されるべきである」ことを確認
Position Statement
Infant Feeding
https://www.rcm.org.uk/sites/default/files/Infant%20Feeding.pdf
(英国はそれほど母乳を与える率は高くはない。日本の助産師がこういうことを言いそうにないのは日本の女性が忍耐強いのか英国のlactivists(母乳活動家)が過激すぎるのか)

ACSH
Academia in Meltdown: Pro-GMO Prof Fired, Anti-GMO Prof Gets Honored
By Alex Berezow — June 13, 2018
https://www.acsh.org/news/2018/06/13/academia-meltdown-pro-gmo-prof-fired-anti-gmo-prof-gets-honored-13076
米国だけではなく世界中でアカデミアが自己破壊中である。
ほんの2か月前にFresno(カリフォルニア州)のRanda Jarrar教授が、Barbara Bush元大統領夫人が亡くなったことについて「人種差別主義者の魔女が死んだことが嬉しい」とツイッターに書いて炎上し、大学が調査を行ったが何も対応しなかった。彼女の不適切な行為の動画が出回ったにも関わらず。
その一週間後、Alberta大学が反GMO活動家のDavid Suzuki教授を表彰すると発表した。彼はGMOが安全だと言う科学者は「恐ろしく馬鹿か嘘つきかのどちらか」という。そして傷口に塩を塗るように、アルバータ大学の表彰理由は「科学リテラシーの推進」だそうだ。
そしてEUのリスクコミュニケーションの専門家David Zarukはグリホサートが安全だと言ったせいで解雇された。それを要求したのが反GMO反グリホサート反モンサントイデオロギー信奉者であるOlivier de Schutter教授であることは記憶に留めるべきであろう。
アカデミアでは何かが腐っている。

  • 対話の殺し方

How to Kill Dialogue
June 11, 2018 The Risk-Monger
https://risk-monger.com/2018/06/11/how-to-kill-dialogue/
「ちっぽけな三部作」のシリーズ3回目
(一回目 私はちっぽけである
I’m Insignificant
February 7, 2018
https://risk-monger.com/2018/02/07/im-insignificant/
二回目 ナチュロパスのカルトポピュリズム
Naturopathic Cult Populism
February 20, 2018
https://risk-monger.com/2018/02/20/naturopathic-cult-populism/)

環境活動家カルトがいかにして対話や専門家の役割を否定してきたか、を探る
(最後の段落)
追伸:グリホサートのために解雇された
このブログの読者は私がEUのグリホサートを巡る混乱に関心を寄せていたことを知っているだろう。除草剤の無い時代に農家で育ち、農業の将来に関心をもち、狂信的活動家による恐怖扇動キャンペーンやオーガニック業界のロビー活動、誠実でない科学者を軽蔑してきた。その結果、活動家たちは3年間休み無く私を攻撃し、嘘をばらまきイベントから排除されブログサイトを失い、ついに10年勤めた職を先月失った。
私は過去十年、コミュニケーションの非常勤職員としてUniversité Saint-Louis – Bruxelles(ベルギーの大学)で教鞭をとっていた。講義の内容は農業技術についてではなく、生徒からの評判はすこぶる良かった。だから4月に副総長の部屋に呼ばれてグリホサートとバイオテクノロジーについての科学的コンセンサスを支持する見解が大学の評判を傷つけることに関して釈明を求められたときは驚いた。そして私を解雇するよう要求したのはSaint-Louis大学に買収される途中にある他の大学のOlivier De Schutter教授(法律)であった。彼はベルギーの学会では有名人で地元メディアの寵児である。
私はDe Schutter教授に何度か連絡をとろうとしたが、彼は欧州委員会がグリホサートの認可を更新したことを訴えるのに忙しかった。同僚たちもストレスのかかる合併期間の政治的活動に忙しかった。そして私は無職になった。副総長は再度応募するよう薦めたが、誰が判断するかを知っていたのでそんな茶番には乗らないことにした。
簡単に言うと、私の見解は、別の教授の見解と衝突して邪魔になったのだ。
この記事で記したように、彼らは公開での対話はしない。