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食品中のミネラルオイル成分についてのQ&A

Questions and answers on mineral oil components in food
Updated BfR FAQ of 12 December 2017
http://www.bfr.bund.de/en/questions_and_answers_on_mineral_oil_components_in_food-132254.html
ミネラルオイル成分が食品中に検出される可能性があるという知見に照らして、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、食品中のミネラルオイル成分が健康リスクを引き起こす可能性があるかどうかを判断するための評価を実施した。
BfRは長年にわたり、再生ボール紙に含まれたミネラルオイル成分は食品へ移行し得るものであり、実際にそうした事態が想定されることを指摘してきた。これは、再生ボール紙の製造では、材料の1つとして印刷された回収紙が使われており、これには新聞の印刷インクのミネラルオイル成分が含まれている可能性があるためである。今日まで、これらの物質の移行はとりわけ、米やセモリナ粉など表面積の広い乾燥食品で認められている。
食品包装材に由来するミネラルオイル成分で食品が汚染されるのは望ましいことではない。
以下に、包装材から食品に移行し得るミネラルオイル成分に関し、よくある質問と答えをまとめた。
◇FAQS
ミネラルオイル成分はどのようにして食品に入り込むのか?
ボール紙製造に使用される回収紙は印字されている新聞も含んでおり、新聞で最も一般的に使用されている印刷インクはミネラルオイルを含んでいる。目下のところ、再生工程でインクを十分落とすことは不可能であるため、再生ボール紙製の食品包装材に紛れ込む可能性がある。他に可能性のある食品への移行源は、食品加工機器の潤滑油、収穫機の排気ガス、製造あるいは包装工程中に潤滑油や剥離剤として使用されるミネラルオイルなどである。
食品分野での「ミネラルオイル」という言葉の意味は?
食品に検出されるミネラルオイル混合物は、飽和炭化水素や芳香族炭化水素から成る。
化学用語では、飽和炭化水素は、鎖式(非環式)炭化水素および環式炭化水素を指し、これらを「ミネラルオイル飽和炭化水素」(MOSH)と呼ぶ。芳香族炭化水素は「ミネラルオイル芳香族炭化水素」(MOAH)と呼ばれる。包装材から食品に移行するMOAHは主にアルキル化芳香族炭化水素の複合混合物から成る。
ミネラルオイル成分は包装材からどの食品に移行する可能性がある?
BfRは包装材から食品へのミネラルオイルの移行は、特に小麦粉、セモリナ粉、米、パン粉、朝食用シリアルなど、表面積の大きい乾燥食品に想定されると考えている。
包装材から食品に移行するミネラルオイル成分の問題にBfRが注目したのはいつ?
スイスのチューリッヒ州立研究所の調査結果を踏まえて、BfRは2009年に食品に移行するミネラルオイル成分の問題に注目した。
この研究所は、8ヵ月間ボール紙製の箱に保管された米にミネラルオイル成分を検出した。検出された移行は主として、ボール紙からのミネラルオイルガス放出の結果によるものと合理的に判断された。
ミネラルオイルに知られている健康リスクは?
特定の炭素鎖長のミネラルオイル飽和炭化水素類(MOSH)は、ヒトの体に吸収され、いくつかのヒトの臓器で検出される場合もある。動物実験では、特定の系統のラットの肝臓にこれらに類する化合物を含むミネラルオイル混合物が蓄積し、炎症性影響につながる可能性が示されている。ただし、この知見とヒトとの関連性はまだ不明確である。
食品中に検出されるミネラルオイル芳香族炭化水素類(MOAH)は、様々な供給源から移行する可能性がある。通常、これらは主としてアルキル化された多環芳香族炭化水素を含む複合混合物であり、それらの多環芳香族炭化水素には発がん性物質も含まれる。十分なデータがないため、健康リスク評価はできない。
この種の食品汚染は一般に望まれるものではなく、そのためBfRは、再生紙やボール紙からのミネラルオイルの移行は、他の供給源からの移行と同様に最小限に抑えるべきだと確信している。
MOSHとMOAHだけが食品中で検出され得るミネラルオイル炭化水素か?
MOSHとMOAHに加えて、食品が特定のプラスチックで作られた容器に保管されたり、特定の種類のプラスチックフィルムで包装されていると、食品はいわゆるPOSH(ポリオレフィン飽和炭化水素オリゴマー)も含む可能性がある。
POSHとは?
ポリオレフィン飽和炭化水素オリゴマー(POSH)は、ポリオレフィンとして知られる特定のプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)のオリゴマーとして生じる飽和炭化水素である。この種の素材が食品の包装や保管に使用されると、POSHがこれらの食品へ少量移行する可能性がある。
食品中のPOSHが引き起こす健康リスクとは?
BfRはPOSHに関する毒性学的データは何も持っていないため、今日までこれらの物質の健康リスク評価を行えていない。
消費者は食品を通して包装からどのくらいの量のミネラルオイル成分を摂取しているのか?
欧州食品安全機関(EFSA)は2012年に、成人は食品を通して飽和炭化水素(MOSH)を0.03 〜0.3 mg/kg体重/日の用量で摂取しており、摂取量は子供の方が高い恐れがあると推定している。EFSAの推定量に基づき、芳香族炭化水素(MOAH)の摂取量は、MOSHで観察された値のおよそ20%で、0.006〜0.06 mg/kg体重/日と算出された。体重10 kgの子供の場合、これは最大で0.6 mgという一日摂取量に相当する。
アドベントカレンダーのチョコレート中のミネラルオイル成分による健康リスクに関するBfRの見解は?
2015年にStiftung Warentest(ドイツの財団法人で、商品検査を行っている)が提供したデータに基づき、BfRはチョコレート中のミネラルオイル成分が引き起こす健康リスクの予備評価を行った。最も高濃度、すなわちチョコレート1 kgあたり7 mg含まれるという最悪のケースを想定して、アドベントカレンダー(クリスマスまでの日数を数えるためにチョコレートの入った窓が設けられ、その窓を毎日1つずつ開けていくカレンダー)の個々のチョコレート1個の芳香族炭化水素の濃度を0.022 mg/kgと推算した。1日1個チョコレートを食べるという想定では、これは、食品からの芳香族ミネラルオイル炭化水素の摂取に関して欧州食品安全機関が推定(EFSA 2012)した一日摂取量をほんのわずか超過していることになる。この超過量はとても少ないにもかかわらず、現在、これらの物質が発がん性を引き起こすという可能性を排除できないため、芳香族炭化水素はやはり食品に好ましくないとされる。
ミネラルオイル成分はボール紙包装材から冷凍食品にも移行される事がある?
今のところBfRが持っているミネラルオイル成分の冷凍食品への移行に関するデータは限られている。だが、ミネラルオイル成分は冷凍温度条件でガス化放出されないため、移行はこうした温度では起こりそうもない。
ミネラルオイル成分の食品への移行量に制限値は設けられている?
現在のところ食品のミネラルオイル成分の量を管理する法規定は施行されていない。ドイツ連邦食糧農業省(BMEL)は再生ボール紙から食品へのこれらの物質の移行を規制するための条例の作成を進めている。
包装材からの芳香族炭化水素(MOAH)と飽和炭化水素(MOSH)の食品への移行量に関し、BfRが推奨する制限値は?
MOAHの限度量を評価したり導出するために必要な毒性データは得られていない。再生ボール紙から移行する芳香族炭化水素の発がん性の可能性を除外できないというBfRの意見は、2012年にEFSAが発表した専門家の意見(EFSA 2012)で支持されている。包装材から食品へのMOAH移行が検出されていないのはこのためだと思われる。
再生ボール紙から移行可能な分子量の範囲のMOSHの評価には、十分なデータが得られていない。国連食糧農業機関/世界保健機関合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は2012年に、低粘度の流動パラフィンの暫定ADI値を取り下げた(JECFA 2012)。ADIは「許容一日摂取量」のことで、健康リスクが発現すること無く一生涯毎日(経口で)摂取できる特定の物質量の尺度である。
BfRは、C10〜C16もしくはC16〜C20の炭素鎖長のMOSHを含む溶剤の食品への移行量の参照値として、それぞれ12 mg/kgおよび4 mg/kgを導出した。
現在の知見に基づくと、分子量や炭素鎖長の範囲によっては特定の系統のラットの肝臓での蓄積や炎症反応が引き起こされていると行くことは、MOSHの健康リスク評価に決定的な意味を持つ。EFSAは、食品に検出されていて、これまで対象としてきた種類から逸脱した構成の炭化水素を持つMOSHの評価に関し、研究計画を支援した(EFSA Supporting publication 2017:EN-1090)。この研究の知見に基づくEFSAの結論はまだ得られていない。データからは前述の系統のラットにおいて、構造および臓器特異的なMOSHの蓄積があることが示された。しかしながら、現在のところこれらの知見からは、ヒトにおける毒性やこのデータのヒトとの関連性に関して言えることはない。
現在、再生ボール紙から移行し得る分子量範囲のMOSHによる健康影響を明確に評価することができず、また特定の系統のラットの肝臓で観察された炎症反応の具体的な原因を明確に特定することもできない。このような状況のため、包装材からこれらの物質をさらに移入・移行させることは、技術的に可能な限り最小限に抑えるべきである。
ボール紙包装材から食品へのミネラルオイル成分の移行を最小化するためにBfRが推奨することは?
ミネラルオイル成分の移行は包装材中の濃度だけでなく、保管状況や食品の種類によっても影響を受ける。未使用の繊維ベースのボール紙やミネラルオイルフリー印刷インクを用いたり、包装のデザインに機能性バリアを組み込むことで移行を防ぐことができる。こうした措置を考える場合、直接食品と接する包装材だけでなく、それより外層の包装材からの移行の可能性も考慮に入れるべきである。