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食品中の過塩素酸塩に関するよくある質問

Frequently asked questions about perchlorate in food
Updated BfR FAQ of 15 February 2018
https://www.bfr.bund.de/en/frequently_asked_questions_about_perchlorate_in_food-188608.html
食品中に過塩素酸塩が検出される事例が繰り返されているため、欧州食品安全機関(EFSA)は食品中の過塩素酸塩によって引き起こされる健康被害を評価した。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)はその評価に基づき、過塩素酸塩に関する意見を更新した。
過塩素酸塩は過塩素酸の塩である。過塩素酸塩は国によっては鉱物貯蔵地域に自然に発生することもあるが、環境中に存在する過塩素酸塩の多くは、人為的起源によるもの、つまり、ヒトによって生成されたものである。特定の塩素酸塩類と異なり、過塩素酸塩類はEUにおいて、殺虫剤や殺菌材の有効成分として一度も認可されていない。しかし過塩素酸塩は、洗浄や殺菌のために塩素化合物を使用する時に、副生成物として発生し得る。最新の知見によると、主な混入経路は、食品と殺菌用の塩素化物製品で処理を受けた水との接触であろうと思われる。
BfRはこの問題に関する質問と回答を以下にまとめた。
◇FAQs
過塩素酸塩とは何か?
過塩素酸塩は、過塩素酸(HClO4)の塩で、過塩素酸アニオン(ClO4-)と様々な陽イオンとから成る。良く知られているのは、過塩素酸アンモニウムや、過塩素酸バリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸銀などの金属過塩素酸化合物である。過塩素酸塩が検出された食品の中にどの過塩素酸化合物が含まれていたのかは不明である。
過塩素酸塩はどこから持ち込まれ、何のために使用されるのか?
過塩素酸塩は自然に発生することもあるが、多くは人為的起源のもの、つまり、人工のものである。チリなどのいくつかの国では、過塩素酸塩は土壌中に高濃度で自然に存在する。肥料として使用されるいわゆるチリ硝石は、過塩素酸塩を含む可能性がある。過塩素酸塩はまた工業用化学物質や薬剤として、特にロケット燃料として使用され、花火にも用いられる。また、過塩素酸塩は、大気における酸化過程でも生成し得るし、塩素化物殺菌剤が使用される場合にも少量生成し得る。EUにおいて過塩素酸塩は、殺虫剤あるいは殺菌剤の有効成分として認可されていない。
過塩素酸塩はどのように食品に混入するのか?
過塩素酸塩は肥料から植物に移行することができ、それゆえ植物ベースの食品にも入り込めると考えられる。また、工業用化学物質、ロケット燃料および花火の使用を通じて環境に入り込む可能性がある。しかし、最新の知見によると、主な混入経路はおそらく、食品が製造や加工の過程において、殺菌用の塩素化物製品で処理された水と接触することであろうと考えられる。過塩素酸塩は、このような消毒処理が行われた場合に副生成として発生し得る。
過塩素酸塩によって誰にどのような健康障害が引き起こされ得るか?
過塩素酸塩に対する暴露が繰り返されると、ヒトではヨウ素摂取が抑制されるという結果が生じる可能性がある。この抑制は、高リスクのヒトの集団では、甲状腺ホルモン濃度に一時的な変化を引き起こすことがある。過塩素酸塩によるヨウ素摂取の抑制は、可逆性である。
甲状腺疾患の人やヨウ素欠乏症の人は、望ましくない影響を特に受けやすい可能性があり、新生児やそれ以外の子供も同様である。もう一つの注視すべき集団は、甲状腺機能障害に罹患している妊娠中の女性達である。
どの程度の摂取量から過塩素酸塩は健康上の懸念となるのか?
健康的な成人におけるヨウ素摂取抑制の影響に基づき、EFSAは過塩素酸塩の耐容1日摂取量(TDI)を0.0003 mg/kg体重と導出した。EFSAによると、食品中の過塩素酸塩を1回だけ摂取することによる急性の健康ハザードは考えにくいため、急性参照用量(ARfD)は導出されていない。
どの程度の最大残留基準が食品中の過塩素酸塩に適用されるか?
過塩素酸塩は規則(EC) No. 396/2005の対象ではないので、今のところ食品中の最大残留基準は設定されていない。過塩素酸塩は汚染物質法でもまだ規制されていない。食品中の過塩素酸塩の基準は可能な限り低い値に保たれるべきで、ALARA(合理的に達成可能な限り低く)の原則に従わなければならない。
食品中の過塩素酸塩が健康への悪影響を引き起こすリスクはどの程度か?
食品における過塩素酸塩の汚染実態に関する評価済みデータに基づき、EFSAはその科学的意見において、これまでに測定された濃度で過塩素酸を一度だけ摂取しても健康への悪影響が生じる可能性は低いという結論に達した。しかし、過塩素酸塩への長期暴露は健康上のリスクの懸念を生じる可能性があり、特に軽度から中等度のヨウ素欠乏を患う若年層が高用量で摂取した場合には、その懸念は大きくなる。これに加え、過塩素酸塩ヨウ素欠乏症の母親の母乳で哺育される乳児に健康リスクを生じる恐れがある。ヨウ素供給不足の幼児の場合と同様に、健康リスクは2〜3週間の過塩素酸塩への暴露で生じ得る。現在定量可能な分析濃度は食品1 kgあたり0.01 mgであるが、たとえそれに匹敵する低濃度の過塩素酸塩が全ての食品において許容されていたとしても、総暴露量は規定の耐容一日摂取量(TDI)を超えることがあると考えられ、過塩素酸塩による健康障害は生じる可能性がある。そのため、過塩素酸塩の食品中濃度は極力低くするべきである。
過塩素酸塩を含む食品は特定の国から入って来るのか?
過塩素酸塩の残留は、ドイツを含め、様々な国由来の食品で検出されている。
消費者にできることは?
バランスの良い様々な食事を摂取し続けることである。果物や野菜が健康に寄与することは、ここでも異論の余地はない。
過塩素酸塩から消費者を保護するためにBfRは何を推奨しているか?
過塩素酸塩の問題で影響を受ける全ての団体に、食品中の全体的な過塩素酸塩の量を低減するために、飲料水の衛生基準を遵守するのに必要な対策を省くことなく技術的に可能な範囲で、自分たちの特定の分野で努力することを推奨している。
◇更なる情報
過塩素酸塩に関する科学的意見(15 February 2018)
http://www.bfr.bund.de/cm/349/the-entry-of-perchlorate-into-the-food-chain-should-bereduced.pdf
(この資料文書はドイツ語文書からの翻訳であり、法的拘束力を持つのは原本のドイツ語文書だけである。)