食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文

  • 米国の子供たちのADHD診断の20年にわたる傾向

Trends over 20 years in ADHD diagnoses among US children, adolescents
31-Aug-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-08/jn-to2082918.php
JAMA Network Open
ADHDと診断される子どもが1997年の6.1%から2016年の10.2%に増加
原因の一部は医師の周知、診断基準の変化、一般への周知と医療へのアクセス増加

  • 自家製缶詰緑豆によるボツリヌス食中毒:2症例の報告

Foodborne botulism due to ingestion of home-canned green beans: two case reports.
Hellmich D, et al.,
J Med Case Rep. 2018 Jan 4;12(1):1.
ドイツの47才と51才の夫婦が自家製缶詰豆を食べて約72時間後に麻痺で来院。二人ともICUで人工呼吸約5か月、完全に回復。
アメリカだったら請求書見て死にそう)

Dietary Supplements: Regulatory Challenges and Research Resources.
Dwyer JT, , et al.,
Nutrients. 2018 Jan 4;10(1). pii: E41.
レビュー
(当然ながらアメリカの話がメイン)

Identifying natural health product and dietary supplement information within adverse event reporting systems.
Sharma V, Sarkar IN.
Pac Symp Biocomput. 2018;23:268-279.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5725198/
FDAのFAERSから抽出

  • スプーン一杯のハチミツが医学をレベルダウンさせる?

Lancetエディトリアル
Does a spoonful of honey make the medicine go down?
Volume 392,ISSUE 10149, P712, September 01, 2018
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)31986-X/fulltext
NICEはその科学的厳密さが信頼性の基礎でありそのガイダンスは世界の医療の指標である。しかし根拠が薄弱な場合にはNICEの引火委は科学のほかに社会的価値観に基づいて判断することはあまり知られていない。
8月23日の急性上気道感染症あるいは気管支炎に伴う咳の治療に関するガイダンス案は、主に抗生物質の使用を制限することが目的だった。それだけで助言を終わることもできた。しかし多分患者が手ぶらで帰ることに満足しないだろうことを考慮して、ハーブレメディやハチミツなどのセルフケアオプションについて患者に話すことを薦めた。こうしたセルフケアの根拠の質は中程度から非常に低い。それらはプラセボと変わらないだろう。このアプローチは抗生物質対策が緊急に必要な時期に、社会的価値観に沿ったものではあるかもしれないが、NICEの基本原則では「根拠のないあるいは弱すぎる介入はしないようにすべき」としている。根拠の質より害の削減を優先させることでNICEはその存在意義を危機にさらしているのではないか?
(これはハチミツが効くということではない。英国だからハチミツなんで、日本ならなんだろ?ネギ?黒豆?のど飴?)

Lancet
Brazil's health catastrophe in the making
Katarzyna Doniec et al.,
Volume 392,ISSUE 10149, P731-732, September 01, 2018
ブラジル政府のネオリベラル医療政策(医療の緊縮、民営化、規制撤廃)について
社会正義の考え方に反し、社会経済的不平等を拡大し高い自殺率をさらに悪化させるだろう、と

  • 腫瘍学、「フェイク」ニュース、法的責任

Lancet Oncologyエディトリアル
Oncology, “fake” news, and legal liability
The Lancet Oncology Volume 19,ISSUE 9, P1135, September 01, 2018
https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(18)30610-7/fulltext
一般の人々の専門家の見解への信頼低下が大きな課題である。この危機の中心にあるのは自己決定権と見かけ倒しのジャーナリズムとソーシャルメディアと広範な間違った情報と政治的疎外の衝突で、それらが科学と学術的努力の価値を毀損している。腫瘍学の分野ではこの状況はいろいろな形で現れるが、最も顕著なのは医師の助言とは関係なく患者が自己診断して特定の治療法を要求することで、それがさらに根拠のない無数の代替療法を使うことになり、そしてますます裁判を避けるためのいわゆる「防衛的医療」が増える。
2018年7月19日に発表されたJAMA Oncologyの研究、そして2017年にJNCIに発表された研究で、研究者らは補完代替医療の使用と標準医療順守率、そしてがん生存率の関連を調べた。まとめると、補完代替医療を使っている患者は手術・放射線療法・化学療法を拒否する可能性が高く、死亡する可能性が2倍以上高い。根拠のある有効な治療法より、根拠のない介入の方が好まれて選ばれていることに社会はどう対応してきたのか?残念ながら、ソーシャルメディアや無数のオンラインニュース、そして無責任なマーケティング手法により、間違った情報と−率直に言って嘘が、妥当性を検討された根拠と同じように、広く宣伝されている。
いわゆる「フェイク」ニュースや間違った報道、矛盾した話によって拡がっていく一般の人々の主流医学への不信のさらなる帰結は、医師が患者の医療過誤だという主張を予防するための過剰治療傾向である。2010年のTom Price議員によると「防衛的医療」は年に6500億ドルになる。この数値は疑われたが最近の国立経済研究所の報告は膨大な金額が必要もないのに使われているという仮説を支持する幾分かの根拠を提供している。訴訟を恐れることが医療費の増加を招き、その余剰のケアは患者の状態を改善しない。ほとんどの余剰分は検査の過剰として使われている。この「防衛的医療」のコストは最終的には全ての患者の負担になる
フェイクニュースの時代には、一般の人々向けに医学の進歩を正確に伝える努力を倍増しなければならない。例えば英国はオンラインでのQ &Aを専門にするデジタルナースを雇ったし米国NIHはインターネットの健康情報を評価するためのコツを詳細に記述している
How To Evaluate Health Information on the Internet: Questions and Answers
https://ods.od.nih.gov/Health_Information/How_To_Evaluate_Health_Information_on_the_Internet_Questions_and_Answers.aspx
(ODSのサイト。嘘情報を広めたい業界がどこかは明らか)

  • WHO紀要

Bulletin of the World Health Organization
Volume 96, Number 9, September, 589-664.
http://www.who.int/bulletin/volumes/96/9/en/
特別テーマ:健康と持続可能な開発目標
畜産部門での質の悪い動物用医薬品と抗菌剤耐性などの話題も