食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 欧州の政治家は植物科学者をもっと信頼しなければならない

European politicians must put greater trust in plant scientists
Josep M. Casacuberta & Pere Puigdomènech
Nature 561, 33 (2018)
欧州司法裁判所の遺伝子編集技術を用いて作った作物をGM植物と同じ長い認可プロセスを経なければならないとした判断は多くの科学者を驚かせた。裁判所は既存の規制を考慮したが、事態は最初にGM規制ができた1990年から大きく変わっている。世界中でGM作物が栽培され経験も蓄積している。そして技術も科学も進歩した。裁判所の判断は認可に膨大な費用がかかり、米国のような規制していない国からの輸入に問題をおこすだろう。
規制を変えることは現在のEUの政治状況では困難だろう。
EFSAの創生期からのGMパネルのメンバーとして、我々は科学への山ほどの不信を目撃してきた。そのことがGM植物への厳しい規制要求になった。我々はこの傾向を反転させる必要がある

  • Scienceの特集

それは救うべき?
Should it be saved?
Warren Cornwall
Science 07 Sep 2018:Vol. 361, Issue 6406, pp. 962-965
絶滅危惧種を救うためのリソースは一部に集中して残りは消えるに任せるという提案が激しい議論に

如何にしてトリアージという言葉が汚い単語になったか
How triage became a dirty word
Warren Cornwall
Science 07 Sep 2018:Vol. 361, Issue 6406, pp. 965
リソースの効果的配分を「トリアージ」と呼んだ学者に激しい攻撃
結局お金の使い方で「選んでいる」。その選別過程は不透明なままに。

  • SMC NZ

抗生物質の後にプロバイオティクスをとることの健康便益−専門家の反応
Health benefits of taking probiotics after antibiotics – Expert Reaction
Published: 07 September 2018
https://www.sciencemediacentre.co.nz/2018/09/07/health-benefits-of-taking-probiotics-after-antibiotics-expert-reaction/
プロバイオティクスを摂っただけでは必ずしもそれがあなたのお腹に住むことを意味しない
一連の実験により、イスラエルの研究らが多くの人の消化管は標準的プロバイオティクスが住み着くのを阻むことを示した。さらに抗生物質の悪影響を戻そうとしてプロバイオティクスを使用することは正常な腸内細菌がもとに戻ることを遅らせることを発見した。
SMCはこの論文への専門家のコメントを集めた
Malaghan医学研究所トランスレーショナル免疫学チームリーダーOlivier Gasser博士
抗生物質処理は腸内細菌叢に細菌が住み着く間隙を作る。できるだけ早くこの穴を健康な細菌で埋めることが重要である。プロバイオティクスがこのプロセスを遅らせるようだという知見は非常に重要である。
Malaghan研究所で我々はがん免疫療法を研究していて、抗生物質ががん免疫療法の有効性に非常に大きな影響があることが知られている。重大な感染症になって抗生物質を投与された患者は微生物叢を正しく埋めなければならない。プロバイオティクスの意味についての議論では、将来医薬品と同じレベルで規制されるべきだとしている。間違った系統は害を与える可能性があるからだ。
プロバイオティクスを巡る新しい規制の始まりになる可能性がある、なぜなら最悪シナリオでは単に無効なだけではなく実害がある可能性がある
抗生物質治療後の患者の微生物叢の回復にどれだけ努力されているかについては興味がある。私は医療提供者の全てが良く注意しているとは思わない。
我々は「健康的」微生物叢というのがどういうものなのかについて正確には知らない。だから糞便移植を超えて、何が「健康的」なのかについての研究が必要だろう。献血の場合には感染症の検査をするが糞便の品質管理については我々は知らない。
オタゴ大学微生物学者Gerald Tannock教授
生きた細菌を含むプロバイオティクス製品は健康に良いと信じられて1世紀以上販売されてきた。これらは広く使用されているにも関わらず、一般人への広範な有効性の根拠は得られていない。「コロニー形成」(永住状態を意味する)という単語の誤用が広まっている。もう20年も前にほとんどの人にとっては生きたプロバイオティクス細菌は製品を使用している間しか糞便中に検出されないという根拠があるにも関わらず。
Cellの論文の著者らは何故プロバイオティクス細菌が定住しないのかについて研究を進めた。全体的な結論としては、個人の粘膜にいる細菌の違いにより、プロバイオティクスが遍く有効であることはありそうになく、特定の人、特定の病気に個別に調整することが研究可能だろうという。また抗生物質治療後の回復に与えるプロバイオティクスの研究では、回復が遅れることを報告している。プロバイオティクス製品に含まれる細菌はヒトの腸に多いものではないためこの結果は予期されていなかった。従ってさらなる研究が必要であろう。そして自分の糞便を移植するのが回復を早めるということは予想通りである。そうした手法の必要性については医学の文脈で評価が必要であろう

  • 政府が支援した化学物質恐怖症の誕生日おめでとう:デラニー条項60才

ACSH
Happy Birthday To Government-Sponsored Chemophobia: The Delaney Clause Turns 60
By Hank Campbell — September 6, 2018
https://www.acsh.org/news/2018/09/06/happy-birthday-government-sponsored-chemophobia-delaney-clause-turns-60-13388
ケモフォビア−害のない痕跡程度の化合物への非合理的な恐怖−が生まれた日が1958年9月6日。である。この日、米国1938年食品医薬品化粧品法の1958食品添加物改正が発効した。これはニューヨーク出身議員のJames Delaneyにちなんでデラニー条項と呼ばれる。これにより、なんらかの研究でそれに発がん性が示されてそれが合成であるならば禁止しなければならなくなった。当時は動物にがんをおこす化合物は片手以下しか知られていなかった。その直後に問題になったのがアミノトリアゾールで、それがクランベリーの荷から検出された。今となっては、科学者はラットは人間ではないことを知っている。デラニー条項はリスクとハザードを区別しなかった。残留農薬についてのデラニー条項は1996年に食品品質保護法で置き換えられたときに無くなった。しかしその影響はいまだに続いている

  • 「必要かつ十分」という語句の誤用をなくすべきだ

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 9
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v15/n9/%E3%80%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%8B%E3%81%A4%E5%8D%81%E5%88%86%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%AA%9E%E5%8F%A5%E3%81%AE%E8%AA%A4%E7%94%A8%E3%82%92%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%8D%E3%81%A0/93823
「言語による思考の堕落」
(うん、まさに。いいかげんな言葉ではいいかげんな思考しかできない。たとえば「からだにいい」とか。)