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食品中の塩素酸塩に関するよくある質問

Frequently asked questions about chlorate in food
BfR FAQ of 15 February 2018
https://www.bfr.bund.de/en/frequently_asked_questions_about_chlorate_in_food-204084.html
食品中に塩素酸塩が検出される事例が繰り返されているため、欧州食品安全機関(EFSA)は食品中の塩素酸塩によって引き起こされる健康被害を評価した。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)はその評価に基づき、塩素酸塩に関する意見を更新した。
塩素酸塩は塩素酸の塩である。塩素酸ナトリウムと塩素酸カリウムはかつて除草剤として使用されたが、塩素酸塩を含む植物保護製品と殺生物性製品はEUでは今や認められていない。しかし、塩素酸塩は洗浄や殺菌のために塩素化合物を使用する時に、副生成物として発生し得る。最新の知見によると、主な混入経路は、食品と殺菌用の塩素化物製品で処理を受けた水との接触であろうと思われる。
BfRはこの問題に関する質問と回答を以下にまとめた。
◇FAQs
塩素酸塩とは何か?
塩素酸塩は、塩素酸(HClO3)の塩で、塩素酸アニオン(ClO3-)と様々な陽イオンとから成る。塩素酸ナトリウムや塩素酸カリウムはよく知られた塩素酸化合物の例である。塩素酸塩が検出された食品の中にどの塩素酸化合物が含まれていたのかは不明である。
塩素酸塩はどこから持ち込まれ、何のために使用されるのか?
塩素酸ナトリウムと塩素酸カリウムはかつて除草剤として使用されたが、塩素酸塩を含む植物保護製品と殺生物性製品の使用は欧州連合では今や認められていない。しかし、塩素酸塩は洗浄や殺菌のために塩素化合物を使用する時に、副生成物として発生し得る。
塩素酸塩はどのように食品に混入するのか?
最新の知見によると、主な混入経路はおそらく、食品が製造や加工の過程において、殺菌用の塩素化物製品で処理された水と接触することであろうと考えられる。塩素酸塩は、このような消毒処理が行われた場合に副生成物として発生し得る。
塩素酸塩によってどのような健康障害が引き起こされ、誰に影響を与え得るか?
塩素酸塩に対する暴露が繰り返されると、ヒトではヨウ素摂取が抑制される可能性がある。この抑制は、高リスクのヒトの集団では、甲状腺ホルモン濃度に一時的な変化を引き起こすことがある。塩素酸塩によるヨウ素摂取の抑制は、可逆性である。
甲状腺疾患の人やヨウ素欠乏症の人は、望ましくない影響を特に受ける可能性があり、新生児やそれ以外の子供も同様である。もう一つの注視すべき集団は、甲状腺機能障害に罹患している妊娠中の女性達である。
塩素酸塩の一度の摂取(急性暴露)では、ヨウ素摂取の抑制に関してごくわずかな影響しか及ぼさないが、高濃度の塩素酸塩では赤血球に損傷が生じる可能性がある。
どの程度の摂取量から塩素酸塩は健康上の懸念となるのか?
EFSAは塩素酸塩の耐容1日摂取量(TDI)を0.003 mg/kg体重と導出した。それゆえ影響力は過塩素酸塩のそれより10倍低い。(http://www.bfr.bund.de/en/frequently_asked_questions_about_perchlorate_in_food-188608.html)。高濃度の塩素酸塩を一度に摂取した場合に赤血球が受け得る損傷影響に基づき、EFSAは塩素酸塩の急性参照用量(ARfD)を0.036 mg/kg体重と導出した。
どの程度の最大残留基準値が食品中の塩素酸塩に適用されるか?
塩素酸塩は、規則(EC) No. 396/2005の対象となっている。塩素酸塩には明確な最大残留基準値はいまだ設定されていないので、食品1 kgあたり0.01mgというデフォルトの最大残留基準値が規則に従ってすべての食品に適用される。しかし、多くの食品のグループの場合、この最大基準値は、塩素化殺菌剤での処理を受けた水と食品とが触れた後、発生し得る値が十分にカバーされていない。このため、欧州委員会はモニタリングデータに基づいて、植物と動物由来の食品グループの明確な最大残留基準を設定する予定でいる。最大残留基準値を決定する場合、消費者が食品を通しての塩素酸塩を摂取することだけでなく、とりわけ飲料水を通しての摂取を考慮に入れるべきで、両方の混入経路からの推測されるすべての摂取量が耐容一日摂取量(TDI)を超えるべきでない。
塩素酸塩は飲料水にどの程度含まれているのか?
世界保健機関(WHO)は、飲料水リットルあたり塩素酸塩0.7 mgという予備的なガイドライン値を発表した。しかし、現在の毒物学的評価を考慮して、この基準値の引き下げと、ドイツの飲料水規制の中に塩素酸塩の明確な上限基準を導入することが議論されているところである。
食品中の塩素酸塩は健康に害を及ぼす可能性があるか?
食品の塩素酸塩による汚染実に関する評価データに基づいて、EFSAはその意見の中で、軽度から中程度のヨウ素欠乏症の若者のグループにおいて、塩素酸塩の反復摂取は懸念を生じるが、単回摂取は重大ではないと考えられる、という結論に達している。
特に多く塩素酸塩が見られる食品は何か?
塩素酸塩は、冷凍野菜、果汁およびレタス/ハーブによく検出される。これらの製品の塩素酸塩の発生理由は、塩素酸塩を含む水を用いた冷凍農産物の艶出し、果汁濃縮の希釈あるいはハーブやレタスの洗浄などの、これまで行われてきている処理と考えられる。
塩素酸塩を含む食品は特定の国から入って来たのか?
塩素酸塩残留物は、ドイツを含め、様々な国を原産とする食品で検出されている。
消費者ができることは?
バランスの良い様々な食事を摂取し続けることである。果物や野菜が健康に寄与することは、ここでも異論の余地はない。
塩素酸塩から消費者を保護するためにBfRは何を推奨しているか?
BfRが推奨していることは、欧州委員会の提案に従って、塩素酸塩の問題で影響を受けるすべての団体、すなわち植物保護製品、飲料水、ベビー用食品および食品衛生などの分野の団体が、リスク評価においてすべての混入経路が考慮されることが保証され、また飲料水衛生を遵守するために必要な措置が実施され続けられるように、一緒になって必要な方策を議論することである。