Long-term strategies for thyroid health monitoring after nuclear accidents: recommendations from an Expert Group convened by IARC
Lance oncology Vol 19 October 2018
IARC Technical Publication No. 46.の紹介。
(http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20181003#p16)
一部抜粋
どんな健康介入のガイドラインであっても基本原則はベネフィットを最大化し害を最小化することである。この原則は原子力発電所事故後の甲状腺健康モニタリングににもあてはまる。これを念頭に、以下の二つの助言を作った。
最初に、事故後は集団甲状腺検診(スクリーニング)はしない、そして二つ目はハイリスクの個人には長期甲状腺モニタリング計画を提供するかどうか検討することを推奨する。
最初の助言に関しては、ここでいう集団甲状腺検診とは、特定の地域の住人全てを、暴露量に関係なく、甲状腺検査とその後の臨床管理をするように能動的に誘うことと定義する。専門家委員会は集団レベルでは害のほうが利益を上回るため集団甲状腺スクリーニングはしないよう助言する。がん検診は集団の健康を増進するための価値ある公衆衛生対策である場合もあるが、その利益と害の程度は、がんの種類や対象集団、検診方法や頻度、リソース、社会の価値観などのいくつかの要因によって異なる。甲状腺がんは臨床症状のない人が集団の中にたくさんいるため、集団検診は、将来臨床例になる事例だけでなく検診しなければ生涯症状や死亡をおこさなかったであろう症例を同定する。例えば韓国では甲状腺の超音波検査が増えたため、既に相当低い死亡率に意味のある変化はないまま甲状腺がんの有病率が劇的に増えた。この韓国や他の国で観察された現象は過剰診断の懸念を生んだ。過剰診断はしばしば合併症リスクのある医療介入や社会心理学的にネガティブな影響につながる。過剰診断と、甲状腺がんの死亡率の低さから、リスクの比食い症状のない成人集団への甲状腺検診は避けるようにと専門家団体が助言してきている。この委員会もそれに同意する。原子力事故の影響のある全ての年齢集団でも、症状のない人たちをリスクレベルに関係なく検診することは明確な公衆衛生上の利益がないまま過剰診断の問題を引き起こすと予想される。
(モニタリングについて略)
注意すべきは、甲状腺線量アクションレベルの設定はそれ以下の暴露量の人には何もしないということではない。害があるにも関わらず、甲状腺がんへの恐怖から一部の低リスク個人が安心のために甲状腺検査をしたいと言うかもしれない。利益と害についての詳細な説明をした後検査をしたいという低リスクの人には、組織化された甲状腺モニタリング計画の枠組みで甲状腺検査を提供すべきである
(以下略、長期の万全なバックアップのない検査はしないほうがいいというのも大事なポイント。)