食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文

  • 突然変異細胞は我々の生涯にわたって組織にコロニーをつくる

Mutant cells colonize our tissues over our lifetime
18-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/wtsi-mcc101718.php
中年になるまでに、健康な人の食道の半分胃以上はがん遺伝子に変異のある細胞に取って代わられていることを科学者が発見した。Science。
全ての人は生涯を通じて遺伝子突然変異を蓄積していく。普通の組織のこのような変異は体細胞突然変異とよばれがんへの第一歩あるいは加齢に関係する。
科学者は初めて食道の健康な細胞が、平均すると20代では細胞一つあたり数百の突然変異だったものが人生の後半では2000以上に増加することを発見した。しかしそのうち10程度の変異のみが他の細胞との競合で有利にはたらく。研究チームは正常な食道組織のうちの変異細胞集団を同定するために標的化全ゲノム配列決定を使った。ほぼ全ての食道がんに検出されるTP53突然変異遺伝子は正常細胞の5-10%には既にあること、一方NOTCH1遺伝子変異は約半分の正常食道細胞にみつかりがん細胞より正常細胞に数倍よくみられる。正常な年をとった食道はこれまでがんと関連があるとされてきた変異をもつ細胞の濃密なパッチワークである。
がんに関連するとされてきた遺伝子変異の一部は正常細胞におどろくほどたくさん存在する。意味を理解するにはほど遠いがいつか役にたつことを期待する。

  • 新しい発見はアスリートの血液ドーピングを暴ける

New finding could unmask blood doping in athletes
18-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/du-nfc101818.php
古い血球と新しい血球を区別するRNAの変化
自分の血液を輸血する血液ドーピングの識別。British Journal of Haemotologyに発表。

  • 第5回Chapman大学アメリカ人の恐れているもの調査では政府の腐敗がトップ

Government corruption tops 5th annual Chapman University survey of American fears
18-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/cu-gct101818.php
恐れているのは
1. 政府職員の腐敗(73.6 percent)
2. 海川湖の汚染 (61.6 percent)
3. 飲料水汚染 (60.7 percent)
4. 将来のための十分なお金がない (57 percent)
5. 愛する人の重い病気 (56.5 percent)
6. 愛する人の死 (56.4 percent)
7. 大気汚染 (55.1 percent)
8. 植物や動物の種の絶滅 (54.1 percent)
9. 地球温暖化と気候変動(53.2 percent)
10. 医療費の高さ (52.9 percent)
超常現象を信じるか、については、幽霊や古代文明は半数以上が信じている
(トランプ政権がEPAを目の敵にしているため環境汚染への不安が前回より増えたとのこと)

Professional Societies Should Abstain From Authorship of Guidelines and Disease Definition Statements
Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes
John P.A. Ioannidis
https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/CIRCOUTCOMES.118.004889
高血圧、糖尿病などの多数の病気の治療や予防のガイドラインがそれを専門にしている人たち「だけ」で書かれることの問題点
(特定の治療法を推したり学会の狭い視点に偏ったりする。)

  • UToledo研究が精製食物繊維、腸内細菌、肝臓がんの関連を発見

UToledo research finds link between refined dietary fiber, gut bacteria and liver cancer
18-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/uot-urf101718.php
食物繊維はどんなものでも良いという常識を疑う研究
イヌリンのような精製可溶性食物繊維を添加した食品が多く販売されているが、Cellに発表された新しい研究は疑問を提示する。イヌリンがマウスの肥満に役にたつかどうかを調べていて、確かにイヌリンを含む餌はマウスの肥満を抑制したが、6か月で肝臓がんになった。がんになったマウスは腸内細菌が変わっていた。著者は食品に精製食物繊維を添加することは最近行われ始めたことで、リスクと利益についてはまだよくわからない、という。

  • 毒か薬か?

Toxin or treatment?
Jennifer Couzin-Frankel
Science 19 Oct 2018:Vol. 362, Issue 6412, pp. 278-282
特集
アレルギー反応予防のために少量のピーナッツを摂取することについて。不安は無くならない
減感作療法臨床試験が始められているが、参加者の多くは恐怖を感じている。免疫療法を行っている医師によると、それは初めて中華料理店Chinese restaurantsに行くことや自宅で勉強していた子どもが学校に行くようなものだという。
(本筋ではないがChinese restaurantsがどういう目で見られているかが伺える。中華料理店症候群に蔑視のニュアンスがあるということ)
そして減感作療法の最も悲劇的な事例として2017年の神奈川子ども病院ミルクアレルギーでの死亡例。調査中のため取材に対してコメントできないと言われた。(あまりにも急速に量を増やしすぎたのではないかと示唆されてはいるが)
治療法としてはまだ初期段階なのでこれから。
(アレルギー真面目に研究している人にとって、スギ花粉米でアレルギー治療とかありえないんだよね、恐ろしすぎて)

  • マイクロプラスチックの環境影響は不明、研究が示唆

The impact of microplastics on the environment unclear, study suggests
17-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/uoy-tio101518.php
300以上の世界的研究をレビューし、マイクロプラスチックが環境に有害なのかそうでないのかを結論するには根拠が十分ではない、と科学者が言う。環境中で測定されたマイクロプラスチックと実験室で調べられているものに大きな「ミスマッチ」があるという。実際に環境中に検出されているものはサイズも大きく実験室で有害影響が報告されている濃度より何桁も少ない。Environmental Toxicology and Chemistry

  • シーフードのオメガ3脂肪酸は健康的な加齢と関連

Omega 3 fatty acids found in seafood linked to healthy aging
17-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/b-o3f101518.php
The BMJ。1992-2015の米国心血管系健康研究参加者2622人、開始時の平均年齢74才、女性63%、の血中n-3多価不飽和脂肪酸濃度と健康的加齢(大きな慢性疾患や精神・身体的障害がないこと)を検討。EPA濃度が最も高い群は最低の群より不健康な加齢リスクが24%低かった。ドコサペンタ塩酸も同様だったがドコサヘキサエン酸と植物由来のアルファリノレン酸には関連がなかった

  • 専門家が赤ちゃんを段ボール箱に入れることについて安全上の懸念を表明

Experts raise safety concerns about cardboard baby boxes
17-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/b-ers101518.php
The BMJで専門家が乳児を段ボール箱で寝かせることが宣伝されているが安全性や乳児突然死の予防効果に根拠はないと警告。フィンランドでは1930年代から妊娠中の女性に段ボールベビーボックスが配られている。それが英国の一部で無料配布されるようになった

米国でも注意
CPSC Statement on Cardboard Baby Boxes
https://www.cpsc.gov/CPSC-Statement-on-Cardboard-Baby-Boxes

Breastfeeding protects infants from antibiotic-resistant bacteria
17-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/uoh-bpi101718.php
Nature Communicationsに発表されたヘルシンキ大学の研究。少なくとも6か月母乳を与えられた乳児と全く与えられなかったあるいはより短期間母乳を与えられた乳児の腸内細菌を比較すると、耐性菌数が前者のほうが少なかった。また出産時に抗生物質を使った母親の子どもは乳児の腸内の耐性菌量が多い。そして母乳にも抗生物質耐性菌が含まれている。母子16組の母乳と便を細菌DNAで調べた結果。

  • インドと中国の排出を排除すると人々の命が数年延びる

Eliminating emissions in India and China could add years to people's lives
17-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/hjap-eei101718.php
世界人口の1/3以上を占める中国とインドの人たちは、地球上で最も大気汚染の酷い地域に住んでいる。大気汚染の主な寄与因子は石炭火力発電所である。ハーバード大学の研究で発電所からの有害な排気を除けば中国では年1500万年、インドでは1100万年の人命が救える。Environment International

  • 研究は養殖エビを巡る懸念に挑戦する

Study challenges concerns around imported farmed shrimp
17-Oct-2018
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-10/uos-scc101718.php
一部の消費者団体が輸入エビは質が低いと主張しているが、専門家がEUのデータを用いてリスク評価を行った結果、他のシーフードと同じくらい安全であることが示された。Aquacultureに発表。著者のNewton博士は言う:輸入養殖エビはEUで一部の消費者団体から評判が悪く、それがしばしば主流メディアやインターネットに反映されている。最初に養殖エビが輸入されるようになってから数十年、環境への悪影響や社会的不正義などについてのネガティブな逸話が繰り返されてきた。その中には熱帯の養殖エビは汚染水で大量の化学物質を使っているので人体に悪影響があるというものがある。Newton博士はRASFFの18年分のデータを用いて特定の有害物質のADIを超過するかどうかを調べた。
18年の間に、エビの輸入量は増えたが警告の数は著しく減っている。しかしRASFFのデータとメディア報道を比べると、主流メディアは警告数と類似傾向であるがインターネットはネガティブな逸話のままで改善されたことは反映されていない。そうしたウェブサイトは輸入ではなく地元のものを食べようと宣伝している
(「地元産を食べよう、輸入品は危険」、は政治運動。だからって嘘を言ってもいいわけないのに。)

  • プロバイオティクスの安全性−保証はない

Probiotic Safety—No Guarantees
Pieter A. Cohen
JAMA Intern Med. Published online September 17, 2018. doi:10.1001/jamainternmed.2018.5403
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2702973
人類はこれまでヨーグルトやチーズ、キムチ、ザワークラウトのような食品中に含まれる細菌を食べてきたが、単離した生きた細菌をプロバイオティクスとして大量に販売するようになったのは比較的最近の現象である。米国でプロバイオティックサプリメントとして販売されている生きた微生物は有効性どころか安全性の根拠も必要ない。健康な人にとって有用かどうかは確立されていない。特に免疫機能が低下している人たちで、菌血症などの有害事象が数十報告されている。しかし危害を追跡するシステムはない。製造業者はしばしばGMPに従っていない。さらに市販商品の表示と中身が一致しない。未熟児がプロバイオティックサプリメントに含まれる真菌で死亡している。