食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

牛乳中のβカゼインA1・A2とヒト健康

Beta casein A1 and A2 in milk and human health
Report to New Zealand Food Safety Authority
http://www.nzfsa.govt.nz/policy-law/projects/a1-a2-milk/a1-a2-report.pdf
PDF43ページ
牛乳中の蛋白質の25-30%を占めるβカゼインにはいくつかの変種があり、そのうち一つがA1で1型糖尿病・虚血性心疾患・統合失調症自閉症の原因になり、A2型ではならないという主張がある。この牛乳中のA1/A2組成がこれらの疾患の原因になるかどうかについてレビューを行った。
1型糖尿病や心血管系疾患の原因であるという説はA1カゼインの多い牛乳の消費量が多い国でこれらの病気が多いということを根拠にしているが、これだけでは1型糖尿病の原因がA1カゼインであるとは言えない。よくデザインされた動物実験の結果ではA1カゼインの投与と糖尿病発症に関係はほとんどなかった。心血管系疾患については高濃度のA1カゼイン投与で何らかの影響がある可能性はあるが、ヒトにあてはめるのは難しい。自閉症児を対象にした食事影響を調べる臨床試験はいくつかあるが実験方法に問題のあるものであり、統合失調症に至っては証拠はほとんど無い。
従って政府は現在の表示規制や消費者への助言を変更する必要はないがA2社の宣伝文句には注意すべきである。
消費者や生産者は各自の責任で選択できるが、予防的措置のためにA2ミルクを選択したとしてもその選択には大きな不確実性があることは知るべきである。


ニュージーランドのA2社はA2カゼインを含むミルクを作る牛を選別する技術の特許を持ち、この会社が自社製品の販売のためにA1ミルクが上記の病気の原因であると宣伝している。自社製品の販売促進のために特に問題があるわけでもない他の製品の危険性を声高に宣伝する、というのは生協も同じ。そういう会社や団体が多ければ多いほど、国民は不幸になるということは確か。A2ミルクが日本に上陸するとは思えないが、牛乳への悪口だけはどこかが輸入してきそうな気がする)


FAO