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食品・栄養・アレルギーに関する科学委員会(NDAパネル)の鉄の最大耐容量に関する意見

Opinion adopted by the NDA Panel on 19 October 2004
16 November 2004
http://www.efsa.eu.int/science/nda/nda_opinions/690_en.html
鉄は酸素輸送や貯蔵、多数の酸化還元反応などの代謝に重要な必須微量元素である。
鉄不足は貧血や妊娠への悪影響、精神運動・認知機能発達不全、免疫機能低下などの悪影響がある。
小さな子どもでの医療用鉄剤による高用量摂取事故では、急性の消化管・肝・膵・心血管系障害が報告されている。経口での60 mg/kg体重の鉄の摂取は死亡することもあり、10-20mg/kg体重では急性毒性症状は現れない。
吐き気や上腹部の不快感、便秘などの消化器系への有害作用は、毎日50-60mgの非ヘム鉄の短期経口摂取(特に食品と一緒に摂取しない場合)で報告されている。
鉄の過剰摂取による肝硬変を含む臨床症状は、長期高用量投与(160-1200mg 鉄/日)で報告されている。また鉄の貯蔵に関する遺伝的疾患である遺伝性ヘモクロマトーシス(血色素症)患者では通常の食事からの鉄摂取で鉄の過剰摂取による症状が現れる。肝硬変と糖尿病を伴うBantu鉄症はビールに含まれる高利用性鉄(50-100 mg鉄/日)の過剰摂取が原因とされてきたが、これらの有害影響は慢性アルコール摂取や遺伝的疾患によるものかもしれない。
鉄貯蔵量増加の指標になるのは血清フェリチンレベルで(女性で200microg/L、男性で300microg/L以上)あるが、有害作用の現れるリスクが高くなる濃度は知られていない。一般に対して鉄の過剰摂取による有害事象のリスクは低い。
疫学的には鉄の過剰摂取/貯蔵と心血管系疾患やII型糖尿病、消化管系のガンなどの慢性疾患のリスク増加との関連が報告されている。しかしデータには矛盾点もあり鉄の過剰摂取とこれら慢性疾患との関連を確証するには至らない。
委員会は現在のデータは鉄の最大耐容摂取量を設定するには不十分であると考える。
現在のヨーロッパ諸国における推定鉄摂取量からは鉄の過剰摂取による健康障害のリスクは低いと考える。但し遺伝性ヘモクロマトーシス患者(最大0.5%)とサプリメント摂取によるケースは除く。サプリメント摂取は男性と閉経後の女性については貯蔵鉄の増加を誘発する。また月経のある女性や子どもなどの集団では鉄欠乏のリスクが高いので鉄添加による利益がある。



FSA 英国