食品安全情報blog過去記事

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米国の牛乳や母乳から検出された過塩素酸塩

Perchlorate found in dairy and breast milk samples from across the country
22-Feb-2005
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2005-02/acs-pfi022205.php
Environmental Science & Technologyの2月22日号に発表された論文によれば、米国11州の食品販売店から無作為に購入した牛乳と18州から無作為に得た36検体の母乳のうち、牛乳1検体を除く全てから検出可能な量の過塩素酸が検出された。平均過塩素酸濃度は母乳で10.5microg/L、牛乳で2.0microg/Lであった。過塩素酸に関する規制値はなく、EPAによる飲料水中濃度規制案は1.0microg/Lである。



(注:EPAは二日前に飲料水中濃度として24.5ppb(microg/L)を提案している。この規制値もかなり安全側に幅を取ったものである。従ってこの論文の数値は何の問題もないレベルといえる。ただ環境・分析系の雑誌に掲載される論文はこの例ように、最も悲観的な数値を取り上げて大きな問題がある、と言いがちである。分析の論文を読む場合はその辺に注意すべき。)

2月25日追加
Natureニュースにも取り上げられている
Perchlorate found in breast milk
http://www.nature.com/news/2005/050221/full/050221-13.html
こちらではRfD 0.7 micrograms/kg体重を用いて、体重4kgの赤ちゃんが過塩素酸塩10.5microg/Lの母乳を一日 0.7L飲むと、1.8 micrograms/kg体重の摂取量になるため安全用量の二倍以上になると警告している。さらに著者は過塩素酸塩の有害作用を防ぐため授乳中の女性にヨウ素サプリメントの摂取を薦めている。
Kirk A. B. et al. Environ. Sci. & Technol., published online
doi:10.1021/es048118t (2005).

この時期の乳児は体重の変化が大きいので、体重が二倍になるのに数ヶ月しかかからない。その割に飲む量が2倍になるわけではないのでRfDを超えるとしても一時期のことだろう。安全係数10が掛けられていることも考えれば特に大きな問題はないと思われる。生まれて間もない時期にこれが心配だから母乳をミルクにしようという選択はあまり薦めない。日本人はヨウ素は不足していないのでサプリメントの摂取も薦めない(そもそも日本での過塩素酸塩のデータはない)。