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FDAはトロピカルフルーツアキーAckeeに健康上のリスクがあるとしてリコールを発表

FDA Issues Recall of Tropical Fruit Ackee Because of Possible Health Risks
December 23, 2005
http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2005/NEW01288.html
ジャマイカから輸入されたトロピカルフルーツであるアキーの一部に、天然の毒素であるヒポグリシンhypoglycin濃度が高いため、FDAはリコールを発表した。問題の製品はAshman's Ackees in Brine の19オンスの缶入りでニューヨーク・マサチューセッツコネチカットの小売店やレストランに出荷されている。
未熟なアキーを食べると嘔吐が誘発される。高濃度のヒポグリシンを摂取するとまれに痙攣・昏睡・死亡が誘発される。アキー中のヒポグリシンは未熟な果物に中毒を誘発する量含まれる。


Hypoglycin:156-56-9、2-Amino-4,5-methylenehex-5-enoic acid
ラットでの経口LD50は98mg/kgとある


ヒトにおける中毒事例は
Lancet. 1999 Feb 13;353(9152):536-40.
アフリカ西部ブルキナファソの就学前児童の致死性脳症集団発生が未熟なアキーBlighia sapidaを食べたことによると推定される。1998年1-5月に29症例の致死性脳症が報告された。2-6才の子どもで嘔吐や痙攣、昏睡の症状があり2-48時間後に死亡。患者の尿中ジカルボン酸濃度が高い。
Lancet. 1999 May 8;353(9164):1622-3.
Lancet. 1999 May 8;353(9164):1623.
西アフリカ、ベニンのCotiakou自治区で1996年に調査したところ7056人の住人のうち24人が脳症を起こした。アキーBlighia sapidaは魚を殺す毒として漁師に使用されていた。
1997年にはWansoukouで4500人の住人のうち1年間に40症例観察され、子どもの死因として最も重要なものであった。アキーが原因と考えられ、村の長老が禁止したところ1998年には5例に減った。
Lancet. 1999 May 8;353(9164):1623-4.
アキー中毒は最初にジャマイカで報告された。アキーフルーツの含むヒポグリシン代謝されてメチレンシクロプロピルアセチルCoA(MCPA-CoA)となり、共有結合複合体を形成して不可逆的にいくつかのフラボ蛋白質アシルCoAデヒドロゲナーゼを不活性化する。このため長鎖脂肪酸の酸化やアミノ酸代謝が阻害され糖新生が阻害されて重症の低血糖及びイソ吉草酸血症、メチル酪酸酸血症となる。アキー中毒は栄養不良で悪化する。一部の患者はグルコース投与で回復する。

Prog Clin Biol Res. 1990;321:167-84.
Hypoglycin and Jamaican vomiting sickness
Clin Chim Acta. 1984 Oct 15;142(3):293-8.
Jamaican vomiting sickness: a study of two adult cases
ジャマイカ嘔吐病と呼ばれている。アキーはジャマイカの国の果実で、よく食べるらしい。