食品安全情報blog過去記事

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抗酸化サプリメントは前立腺ガンリスクを減少させない

Antioxidant supplementation not associated with decreased risk of prostate cancer http://www.eurekalert.org/pub_releases/2006-02/jotn-asn020806.php
JNCI 2006年2月15日号に発表された論文によれば、抗酸化サプリメントを摂ることで男性の前立腺ガンリスクは減少しない。
ビタミンE、C及びカロテノイドは細胞のDNAや細胞膜・蛋白質を傷つけるフリーラジカルを消去することからガン予防に効果があるかもしれないとされてきた。これまでの研究ではビタミンEは前立腺ガンリスク低下、ベータカロテンは肺ガンリスク増加と関連するとされていた。今回の研究では年齢55-74才の29,361人の男性の前立腺ガンリスクと毎日のベータカロテン・ビタミンE・ビタミンC摂取量を検討した。抗酸化ビタミンの摂取量は食事からのものとサプリメントと両方を考慮した。
全体として、食事でもサプリメントでもベータカロテン・ビタミンE・ビタミンCの摂取と前立腺ガン発症率には関連はなかった。しかし一部の集団で関連がみられるものもあった。過去及び現在の喫煙者については高用量長期間ビタミンEサプリメント摂取が進行前立腺ガンリスクの低下と関連し、食事からのベータカロテン摂取量が少ない男性では高用量ベータカロテンサプリメント前立腺ガンリスクの低下と関連していた。
この結果からは前立腺ガン予防のために抗酸化サプリメントを薦めることは支持できない。
ガン予防のためには喫煙開始を阻止することと喫煙者の禁煙が最も重要なことである。
Journal of the National Cancer Institute, Vol. 98, No. 4, 245-254, February 15, 2006
DOI: 10.1093/jnci/djj050
Supplemental and Dietary Vitamin E, beta-Carotene, and Vitamin C Intakes and Prostate Cancer Risk
エディトリアル:ビタミンEと前立腺ガン予防:我々は今日どこにいるのか?
Journal of the National Cancer Institute, Vol. 98, No. 4, 225-227, February 15, 2006
DOI: 10.1093/jnci/djj066
Vitamin E in the Prevention of Prostate Cancer: Where Are We Today?
1981年にDollとPetoによる画期的な研究で、米国のガン死亡の35%が食事由来と推定された。彼らが提案したガン予防メカニズムの一つが食品中の抗酸化物質による細胞内の低寿命分子の不活性化・生成阻害であった。その時NCIはガン予防に重点を置き始め、抗酸化ビタミンによるガン予防効果についての大規模無作為化臨床試験に出資した。最も期待されたのはビタミンEであったが、ビタミンE試験の結果は栄養状態の良いヒトにはあまり効果がないというがっかりするものであった。
前立腺ガンとビタミンEについてはATBC研究とHOPE-TOO研究があり、予防効果ありと効果なしの結果が出ている。今回発表されたデータでは効果がなかったというHOPE-TOO研究と一致した。喫煙者集団での予防効果についてはATBC研究に一致している。
他にも現在実施中のビタミンE試験があり結果が待たれるが、現時点で抗酸化サプリメントを薦めることは支持できない。
ガン予防のためには喫煙開始を阻止することと喫煙者の禁煙が最も重要なことである。

ニュース:微量栄養素:サプリメントを摂るべきかそれとも摂るべきではないのか?
Micronutrients: To Supplement, Or Not To Supplement?
Journal of the National Cancer Institute, Vol. 98, No. 4, 230-232, February 15, 2006
DOI: 10.1093/jnci/djj085


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