食品安全情報blog過去記事

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文献

多種類化学物質過敏症MCS関連論文
(農薬暴露報告書関連)
MCSは明確な疾患か?
[Multiple chemical sensitivity, a well-defined illness?]
Ugeskr Laeger. 2006 Mar 13;168(11):1116-9.
ある種の人々は毒性用量より遙かに低い化学物質濃度で不特定の症状が出るとし、多種類化学物質過敏症と診断されることがある。いくつものメカニズムが提唱されてきたが毒性学的根拠は示されていない。著者らはこれは機能的状態だと結論し、患者に必要なのは化学物質暴露を避けるためにどうすればいいかという情報ではなくて、毎日の生活をどう送っていくかについて適切な訓練を行うことであるとしている。レビュー。


特発性環境不耐(IEI)の精神医学的病態の新しい側面
New aspects of psychiatric morbidity in idiopathic environmental intolerances.
J Occup Environ Med.2006 Jan;48(1):76-82.
かつて「多種類化学物質過敏症MCS」と呼ばれ現在特発性環境不耐(IEI)と呼ばれている病態について。
IEI患者では不安障害の身体型が最も多く診断される。通常の物質由来の疾患(アレルギーを含む)はない。IEI患者には精神病性の、特に妄想障害が明らかに高頻度に認められる。


特発性環境不耐(IEI)と身体化障害*がオーバーラップする証拠
Evidence for overlap between idiopathic environmental intolerance and somatoform disorders.
Psychosom Med. 2005 Nov-Dec;67(6):921-9.
他種類化学物質過敏症MCS又は特発性環境不耐IEIは、器官の病気では説明できない慢性の多様症状状態である。化学構造的に関連のない低濃度の環境中の多様な物質により精神的身体的症状が出ると信じられている。本研究ではIEIと身体化障害SFDが区別できるかどうかを調べた。IEI患者54人、SFD患者54人、どちらでもない人44人に症状スケール・心理学的質問・IEIや鬱、不安、SFDに関する質問を行った。IEI患者の半分以上はSFDの診断基準に合致した。SFDの診断基準に合致しないIEI患者はMCSの症状は軽いが不安特性が高く身体化傾向が強いなどどちらでもない人とは違っていた。また自分がアレルギーだという主張が、IgE濃度より症状の重さに良く相関していた。従ってIEDはSFDの一種であるという仮説を支持する。

*様々な器官に関係する複雑な身体疾患の病歴や身体症状を認めるにもかかわらず,器質的な背景は見出せないことを主な特徴とする精神障害 ヒステリーやBriquet症候群(ブリケー症候群:慢性であるが,症状が動揺性である精神障害で,通常,若い女性にみられる.同時に多数の臓器について,病気があると頻繁に訴えることが特徴である)など