食品安全情報blog過去記事

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残留農薬に関するFAQ

Frequently Asked Questions about Pesticide Residues
2007-06-06
http://www.bfr.bund.de/cd/9389
2月にドイツ語で提供されたものの英語版
要旨
農薬は有害な生物から作物を効果的に保護するために使用される。ドイツでは現在約650の農薬が認可されている。これらの農薬が適切に正しく使用された場合でも収穫された作物に残留することがある。こうした残留農薬は長期間にわたって食べ続けても、短期間に大量を食べても消費者の健康に悪影響を与えないように最小限に留められるべきである。これを確実にするためにBfRは農薬の認可の際に総合的リスクアセスメントを行っている。そしてそうした評価をもとに最大許容量を提案している。ここに農薬の認可と最大規制量の設定とそれを超えた場合についての良くある質問についての回答を示す。

何故農薬を使うのか?
農薬は、収穫を確保するために真菌や雑草や害虫などの有害な生物から植物を効果的に保護するために作られている。さらに農薬は収穫された作物を貯蔵や輸送の間に守り食品の品質を確保するために使用される。有機農法では通常農法の場合より少ない農薬が使用されるが、たとえ有機農法でも化学農薬無しには管理できない。

農薬と有効成分の違いは?
有効成分は有害生物に作用のある化学成分又は微生物である。農薬は有効成分を一種以上含む市販されている製品である。

農薬にはどれくらいの有効成分が含まれるのか?
ドイツで認可されている農薬のほとんどは有効成分が1種類である。希に最大4成分まで含まれる。

ドイツではどれくらいの農薬が認可されているか?
2007年2月時点で644の農薬が1,043の商品名で認可されている。これらの有効成分は253種である。

有効成分も認可されているのか?
有効成分のみを別に認可することはなく、常に特定使用目的の農薬の成分として認可される。ヨーロッパレベルでは現在ポジティブリストが作成されており、そのリストにはEUで一定の評価を行った後、有効成分が記載される。

残留農薬とは何のことか?
残留農薬は食品に付着又は含まれる有効成分又は分解産物のことである。分解産物は植物の代謝により、又は日光などにより生じる。

収穫された作物にどうして農薬が残留するのか?
収穫された作物への残留はGAPや適切な使用条件でも完全には避けられない。農薬は植物の生育の異なる時期に使用される。有効成分の分解速度は多様である。特に収穫直前に使用した農薬や壊れにくい物質の場合作物に残留する。しかしながらそれはヒトの健康に脅威とならないよう低く抑えられるべきである。

どの食品に残留農薬が含まれるのか?
第一に残留農薬は植物由来食品に含まれる。しかしながら、植物飼料を与えられた動物由来食品にも含まれることがある。

適正農業規範GAPとは何か?
GAPの原則は農薬規則を実行する全ての人に適用される使用上の注意である。 GAPでは農薬は地域と作物と状況に応じて必要最小限に使用することを求めている。農薬は制御が必要な蔓延のある場合にのみ使用すべきである。天候や状況なども含めて文書に残すといった必要な農薬規則が守られるべきであるとする。

農薬はどのようにドイツで販売されるのか?
ドイツで販売され使用される前に認可が必要である。認可は特定の目的に与えられる。農薬は国家レベルで認可される。ドイツではBVLが認可を与える。連邦農業林業生物学研究センター(BBA)、連邦環境局(UBA)、連邦リスク評価研究所(BfR)も関与する。これらに機関は担当する部分の評価を行う。BfRは消費者や使用者、事故による暴露の健康リスク評価を行う。

BfRは認可にどのような役割を果たすのか?
BfRは認可に同意機関として関与する。BfRは正しい使用法により食品に残留する農薬が安全である場合にのみ農薬の認可に同意する。BfRの意見は認可の決定の際に考慮される。

BfRは認可の際にどのように消費者リスクを評価するのか?
BfRは食事からの残留農薬リスク評価を行う。考慮するのは農薬の毒性影響と消費者が食品から摂取する量の二つの要素である。

BfRは有効成分の毒性をどのように評価するのか?
毒性影響は試験結果に基づいて決定される。主に動物実験で、急性・亜慢性・ 慢性毒性試験結果が提出される。さらに遺伝毒性・発ガン性・生殖毒性データなども出される。これらの試験結果からBfRは急性参照用量(ARfD)と許容一日摂取量(ADI)を設定する。ARfDは急性毒性、ADIは慢性毒性の参照値である。

ADIとは何か?
ADIは許容一日摂取量のことで、生涯にわたり消費者が摂取し続けても検出できる健康リスクがない一日の摂取量のことである。ADIは慢性リスクを評価するのに使用される。

急性参照用量とは何か?
急性参照用量(ARfD)は消費者が一回の食事で、又は一日に数回に渡り食べた食事で、検出できる健康リスクがない量のことである。ARfDは急性リスクを評価するのに使用される。

BfRはどのようにARfDとADIを設定するのか?
適切な動物実験で、最も感受性の高い動物種・性で無毒性影響量NOAELを設定する。ARfDの設定には短期の試験が用いられる。ADIの設定には発ガン性や多世代生殖毒性試験のような慢性的影響を評価する試験が用いられる。適切な試験から設定されたNOAELを、種差や個体差を考慮したいわゆる安全係数で割って導出される。通常安全係数は100である。

BfRは認可の際にどのように消費者への残留農薬暴露量を評価するのか?
消費者暴露(食事摂取量)は食品中の残留量と食品の摂取量から決定される。
残留量は実際の条件で使用して行った実験から求められ、食品の摂取量は2005年に発表されたドイツ人の2-5才の子どもにおける食品摂取調査から決定される。この集団が体重あたりの食品摂取量が比較的高く特に感受性が高いと考えられるからである。このデータが全体の評価に用いられる。

BfRは健康上の見地からいつ認可に同意するのか?
消費者の健康への脅威がないと判断されるのは、推定される最大食事摂取量(最も高い残留値で一つの食品を最大量食べる時)がARfDより低く、前食品からの平均摂取量(残留濃度の中央値で中程度の量食べる)がADIより低いときである。

残留農薬がADIやARfDを超過したらどうなるのか?
ADIは長期間暴露を基本に設定されているので一度超過した程度では意味はない。短期間の超過でも消費者にリスクはない。
一方ARfDの超過による健康リスクは自動的に排除できない。それが健康に影響がないかどうかはケースバイケースで評価される。

最大残留濃度(MRL)とは何か?
MRLは食品に付着又は含まれる有効成分の許容量である。MRLは商品の自由貿易を保証する基準値である。食品はMRL基準に従っている場合のみ市販できる。

MRLはどのように設定されるのか?
MRLの設定は農薬の認可とは別に行われる。認可申請評価と同時にBfRはMRLを提案する。BVLがそれを国会に提案する。参議院で承認されるとMRL条例(RHmV)に組み込まれる。これとは別に多くのヨーロッパレベルでのEU MRLがドイツの国家規制に単純に移行される。

MRLにはどのような基準があるのか?
MRLを設定するには、残留成分が同定可能で測定できなければならない。毒性評価が可能で有効成分の残留性についても知られていなければならない。MRLは消費者の急性及び慢性リスクとは関係ない。

BfRはどのようにMRLを提案するのか?
MRLはGLPを基本に必要以上に高くは設定されない。これは農薬使用を最小限に留める基本原則に従う。
MRL設定は野外での残留試験結果に基づく。試験は認可された最大の使用量で認可された最大の使用回数・収穫まで最小の間隔という最も残留量の多い条件で行われる。この試験結果から正しい使用方法において避けられない残留量を設定し最大値として提案する。他にいくつかの要因を考慮する。もし消費者にとって急性又は慢性リスクがあると考えられる場合にはBfRはMRLを提案しない。

一般命令general orderとは何か?
ヨーロッパ域内の貿易障壁を取り除くためのものである。他のEU加盟国で合法的に販売されているがドイツで有効なMRL規制に合致しない食品をドイツに輸入したい業者は一般命令適用申請を提出することができる。これは例えば他のEU加盟国では認可されている農薬が、ドイツでは害虫がいないために認可申請されていないような場合である。
一般命令は具体的な食品に具体的な有効成分について適用される。BfRはその残留の消費者への健康リスクを評価し、安全性に懸念がない場合に一般命令が発行される。

輸入トレランスとは何か?
輸入トレランスはMRLに相当し、米やトロピカルフルーツなどのEUに輸入される食品に対するものである。輸入トレランスは有効成分と食品の組み合わせについて設定され、申請者が申請してBfRが消費者の健康に問題がないと結論した場合に認められる。

なぜMRLは変わるのか?
MRLの設定は現在進行中である。新しい使用方法や農薬が申請され残留試験が行われると既存のMRLが再評価され、必要に応じ改定される。また新たな科学的知見によっても変更される。

残留農薬がMRLを超過した場合はどうなるのか?
MRL超過は使用法違反を示す。問題の製品は市販できない。必ずしも消費者のリスクとはならない。もしMRL超過があった場合はリスク評価が行われる。過去に検出された残留農薬はほとんどの場合消費者に有害ではなかった。

誰がMRL遵守を監視しているのか?
貿易業者がMRL遵守を保障する義務がある。政府も検査を行っている。

BfRは食品販売業者の残留農薬削減についてどう考えているか?
一部の食品販売業者が供給業者に対して追加の品質基準を要求している。農薬使用量を下げようとする努力については基本的にBfRは歓迎するが、消費者の健康保護の観点からは、消費者の健康は法を守っていれば十分に保護されている。
PDF版は以下
http://www.bfr.bund.de/cm/279/frequently_asked_questions_about_pesticide_residues.pdf