食品安全情報blog過去記事

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公開運営委員会で報告された主任研究者の年次報告書

Annual Report of the Chief Scientist 2006/07 http://www.food.gov.uk/multimedia/pdfs/board/fsa071005a.pdf
科学者の倫理規定から始まる格調高い報告書なので一部抜粋
主任研究者 Andrew Wadgeによる序言
英国で販売されている食品の選択肢はかつてないほど多様で複雑で外国産のものが増えた。そして同時に、ほとんどの基準で、より安全になった。この改善に科学は重要な役割を果たしている。
我々の食べる食品の多様性の大きな拡大は、肥料や農薬の開発、交配計画、輸送方法の改善、貯蔵や保存の改良、革新的生産技術などの科学の発展によるものであり、そして我々の科学的知識の拡大と適用が安全性向上に役立っている。
実際、食品の安全上のリスク削減には科学の発展が大いに役立ったため、単純にどうやってリスクを削減するかという疑問より、高尚な疑問が議論を巻き起こしてきた。BSEの懸念が最も高かった時ですら、Lord PhillipsはBSEの発生とその影響に関する審問において「政府の目標はゼロリスクを達成することではなく、リスクを一般的な消費者にとって許容できるレベルに削減することである」と述べている。リスク管理官としての私の仕事の大部分は、FSAに入手できる最良の情報を確保することで、その情報とはリスクそのものについてだけではなく、人々がリスクについてどう考え、感じているか、そして情報を与えられた上での選択を行うために人々がどのような情報を必要としているか、についてもである。
このことがこの年次報告書の最初の目的である。私は人々が科学とリスクとについて考える材料として、食べ物が最適であると考える。食べ物は生きていくのに必須であり、多くの熱烈な議論を巻き起こす。この報告書では食品に関する科学がどのように我々の毎日の生活や健康に中心的役割を果たしているかを示したい。
これについてはFSAが、食品のリスクを評価するのに、異なる人々の異なるリスク受容を理解するのに、そして人々が受容できると考え・感じるリスクをどう管理するかにおいて、科学を極めて現実的に使用している様子を実例に沿って紹介した。
行動科学と消費者の関与に関する分野では明確な答えはほとんどないため、我々はこの分野については技術とプロセスを開発中である。我々は社会科学の分野においても自然科学の分野同様に適用できる同じ厳格な基準を確保したい。
政府は、以下にDemosからの引用に示すように、根拠に基づいた政策決定を行っているという評判は高くない。FSAの仕事は科学と根拠に基づくもので、私の2番目の目的は、我々がどのようにして科学的根拠と一般の人々とのオープンな対話をすりあわせて、食品選択に直接影響する判断を行い対策をとっているかを示すことである。
三番目の目的は公衆衛生改善状況を測定することである。このために食中毒発生率や肥満率、がんや心疾患発症などの、指標となりうる食品や食事や健康に関する統計情報を集めた。食品の健康に与える影響を分離するのは、特に食生活と健康については、変数が多く複雑で相互に関連するため簡単ではない。私の目標はより健康的な食品と全体としてのより健康的な食生活のための我々の年次進捗状況評価の基礎を提供することである。
最後に、4番目の目標としてFSAの科学的業務と業績、我が同僚の科学的貢献について示したい。FSAのスタッフのおよそ半分が科学のバックグランドを持ち、 そのうち2/3が大学院を修了している。我々の同僚のなかには全国的に、あるいは国際的に認められたその分野の専門家もいる。毎年この報告書では重要な分野の科学的発展について説明し、翌年の目標を設定する。さらに、特に問題となる食品関連事件について焦点を絞って、FSAの仕事が、その問題のヒトへの健康影響を減らすのにどのように役立ったかを説明する。今年は食中毒と血圧や脳卒中・心血管系疾患における塩の役割について、を話題として選択した。
主任研究者として私はFSAの科学的作業が一貫して高い水準で履行されることを確保する責任がある。私は科学を管理するための厳格なシステムの採用と強力な内部及び外部からの助言によりこの責任を果たすことができる。外部からの助言については「FSAの科学助言者」のセクションで説明している。
この報告書は2006年4月から2007年3月までのFSAの仕事に焦点を絞っている。付属する「研究調査計画2007年次報告」ではFSAの出資がどのように戦略目的に役立っているかを示している。より包括的な説明はウェブサイトで提供しており、意見がある場合にはメールやブログへのコメントができる。
この報告書はFSAの全ての科学者の努力によるものである。以下のページでは主語に「我々」を使う。これはFSAの全ての科学者を表すもので、私は彼ら全員の献身とプロフェッショナリズムに感謝する。


時代とともにリスクは変わる の章で過去に問題となった食品安全上の事件を列挙している。
かつては小麦粉を白くするのにチョークを使った、ワインを甘くするのに鉛塩を加えた、お茶にクロム酸鉛や亜ひ酸銅が使われた、着色料としてプリアンブルーや硫酸銅が使われた。
・品質検査のために食品サンプルをチェックすべきと最初に提案されたのは1855年である。
・ 1851年から1853年の間に、コーヒーにチコリーが入っているかどうかの検査が行われた。この時コーヒーのチコリーが有害かどうかについてリスク評価が行われた?
・ 1896年に輸入バターの検査が始まった。各国の機関の協力が行われた。
など
1800年からの変遷
1831年に初めてビスケット工場ができた、1869年にマーガリン発明、1930年に冷凍食品が利用できるようになった、など。


(食品安全機関のやるべきことは消費者に「安心」を提供することではなく(それは不可能)、「情報を与えられた上での選択」を確保すること。こういうスタンスなら「安心のため」という要求はそもそも論外になる。
参照:食品安全委員会の見上先生の意見
http://www.fsc.go.jp/sonota/14gou_8.pdf