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食品や飲料中のカルバミン酸エチルとシアン化水素酸(青酸)

Ethyl carbamate and hydrocyanic acid in food and beverages[1] - Scientific Opinion of the Panel on Contaminants
24/10/2007
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1178655060600.htm
カルバミン酸エチルは天然にパンや醤油、ヨーグルト、ワイン、ビール、スピリッツ(特に石果ブランデー)などの発酵食品やアルコール飲料中に含まれる。食品や飲料中には青酸や尿素エタノールなどの多数の前駆物質が含まれ、それらから、食品の加工や貯蔵中にカルバミン酸エチルが生じる。
カルバミン酸エチルは遺伝毒性があり動物では各種の臓器に発ガン性があり、おそらくヒトでも発ガン性がある。欧州委員会はCONTAMパネルに食品や飲料中、特に石果ブランデー、のカルバミン酸エチルによるヒト健康リスクについての科学的意見を要請した。
これに対応してEFSAは2006年9月に食品や飲料中のカルバミン酸エチル含量についてのデータ募集を行った。EUの7ヶ国とオンタリオリキュール委員会及びカリフォルニアワイン研究所がEFSAの要請に応えて1998-2006年の分析結果のデータを提出した。またEU 3ヶ国はアルコール飲料中の青酸のデータを提出した。
アルコール飲料を除くとEFSAに報告された食品中カルバミン酸エチルのデータは極僅かであり、そのうち41%は検出限界以下であった。2005年のJECFAの評価では食品由来のカルバミン酸エチル暴露量は一般的に1microg/ヒト日以下であると結論しており、今回の暴露評価ではこの値を使った。
食品についての結果とは対照的に、アルコール飲料については33,000件以上のデータを受け取った。ビールの約93%、ワインの42%、スピリッツの15%未満が検出限界以下であった。アルコール飲料のカルバミン酸エチルレベルの中央値は、ビールとワインで最大5 microg/L、石果ブランデー以外のスピリッツで22microg/L、石果ブランデーで260 microg/Lであった。これらのデータから、一日あたりの食事からの暴露量はアルコールを飲まない体重60kgのヒトでは17 ng/kg 体重・ 日、各種アルコールを飲むヒトでは65 ng/kg 体重・日と推定された。石果ブランデーのみを飲むヒトで最も高い暴露量が推定され、95パーセンタイルで558ng/kg体重・日である。
青酸の暴露量は約1.6 microg/kg 体重・日と推定された。平均的な消費者のおもな暴露源は食品で、アルコール飲料の寄与は少ない。青酸含量が95パーセンタイルのフルーツブランデーを95パーセンタイル摂取レベルで飲むと24 microg/kg体重・日となる可能性があり、これは望ましくない。
リスクキャラクタリゼーションには、動物における発ガンデータBMDL10と比較した暴露マージン(MOE)アプローチを採用した。1万以上であれば公衆衛生上の懸念は低いと考えられる。カルバミン酸エチルの摂取量推定の中央値と、雌雄マウスでの肺胞及び細気管支腫瘍が10%で見られる濃度であるBMDL10値0.3mg/kg 体重・日とを比較した。
アルコール飲料を除く食品からのカルバミン酸エチル暴露については、MOEは18,000で健康上の懸念は低い。しかしながら各種のアルコール飲料を飲むヒトでは5000程度で、フルーツブランデーやテキーラをよく飲むヒトでは600以下となる。これらのMOEに基づき、CONTAMパネルはアルコール飲料中、特に石果ブランデーとテキーラを飲むヒトにとっては、カルバミン酸エチルは健康上の懸念
となる、と結論した。平均値より高濃度のカルバミン酸エチルを含む特定ブランドの石果ブランデーとテキーラを飲むヒトではMOEはさらに小さい値となり得ることを注記する。
石果ブランデーのようなある種のアルコール飲料中のカルバミン酸エチル含量を下げるための対応をとるべきである。そのような対応には、製品の保管中にカルバミン酸エチルが生じるのを抑制するための青酸などの前駆体などについても対象にするべきである。