食品安全情報blog過去記事

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皿の上の科学、騒動、助言

Science, spin and advice on a plate
Thursday 1 November 2007
http://www.food.gov.uk/news/newsarchive/2007/nov/plateblog
世界がん研究財団の報告書の発表を受け、FSAは人々に健康的な食事にとって大切なことはバランスであることを再確認する。FSAの主任科学者Andrew Wadgeのブログも読んで欲しい。
FSAはがんと食事に関する新しい証拠を監視し続け、この報告書についても科学助言委員会と協力して検討する。
バランスの取れた食事をすることが、誰にとっても有効で簡単で、がんや心疾患や糖尿病などの多数の食事に関係する病気を減らす方法である。
FSAのEATWELLプレートはバランスの取れた食事のための実践的でわかりやすい資料である。
私たちは、多様な食品をバランス良く食べることに注意すれば、全ての食品を楽しむことができる。



Andrew Wadgeのブログ
Science, spin and advice on a plate
November 1st 2007
http://www.fsascience.net/2007/11/01/science_spin_and_advice_on_a_plate
食品についての毎週のように伝えられる矛盾したメッセージが消費者を混乱させている。
Sunday Timesがオーガニック食品の方が良いということが公式に認められたと伝え、他紙がパンに葉酸を添加するのは危険だと警告する。そして世界がん研究財団の報告書が、がんリスクを減らすために加工肉を減らすなどの10個もの助言を発表した。一方で交配用のヒツジがサプライチェーンに入ってしまったため、ラムが回収されていて、サルモネラ汚染のためにお菓子工場が閉鎖された。
消費者はこうした情報をどう消化しどうやって食品選択に生かせばよいのか? ほとんどの人はこうしたメッセージを無視していつもの食生活を送るだろうと思う。食生活を改善し病気のリスクを減らすのは簡単なことなのに、それは残念なことだ。
それでいつ公的機関がオーガニック食品の方が良いと断言したのだろう?教えて欲しいものだ。そして何故パンに添加した葉酸が有害だという仮説が葉酸を添加すべきだという根拠を上回るのか?それも知りたい。さらに新聞やメディアのコメンテーターが世界がん研究財団の「爆弾報告書」に動揺して「じゃあ何を食べれば安全なの?」と言っているが、私は彼らやその視聴者、及び全ての関係者に言いたい。FSAのEatwell プレートを見よ。そこに健康的でバランスの取れた食生活のための情報がある。
私はこうした類の混乱が議論のレベルを低下させ、我々が消費者に対して食品のリスクとそれを削減するために科学が主張していることを説明するのを困難にすることを恐れる


世界がん研究財団の報告書とはこれ
EurekAlert (http://www.eurekalert.org)より
新しい報告書は、がんのリスクを減らすためにどう食事内容を変えるべきかを示す
New report shows how our diet must change to cut cancer risk
1-Nov-2007
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2007-11/bmj-nrs110107.php
今週世界がん研究財団World Cancer Research Fund (WCRF)が発表した報告書は、我々がもしがんのリスクを減らしたいのなら、食事内容をどう変えればいいかを示す。
この報告では肥満により食道・結腸直腸・膵臓・乳・内膜・腎がんのリスクが増加し、集団の平均BMI 21-23のあいだが目標であると結論している。
英国では成人の平均BMIは約27で、上述の範囲内だったことは1940年代以降ない。
さらにアルコールは口腔・咽頭喉頭・食道・結腸直腸・乳・肝がんのリスクを増やし肝硬変の原因となる。現在の英国の摂取量上限を下げること薦めているため、目的達成のためには飲酒習慣の変更が必要である。
野菜や果物ががん予防効果があるという根拠は信頼性が低いが、毎日5単位の野菜や果物を食べるべきだとしている。この助言を達成するには集団での平均摂取量が約7.5単位である必要があり、これは現状の2倍である。
この報告書の新しい、そして主要な結論は、赤身の肉及び加工肉が結腸直腸がんを誘発するだろうということである。これは赤身肉や加工肉を多く食べる集団が、最も少なく食べる集団より約30%結腸直腸がんリスクが高いといういくつかの研究結果に基づいている。従って集団での赤身肉や加工肉の平均摂取量は週に300gを超えないことを推奨している。
世界の多くの地域ではこの目標値は達成されている。英国では現時点の週の平均摂取量は男性970g女性550gであり、目標達成のためには大きな削減が必要である。
またこの報告書ではがんリスク削減に効果があるかもしれない食品や栄養素についてもいくつか同定している。例えば葉酸の多い食品は膵臓がんのリスクを減らすかもしれないし、カルシウムの多い食品は結腸直腸がんのリスクを減らすかもしれない。
肥満とアルコールの過剰摂取の影響は明確であるが、野菜や果物については財政的・環境的影響を検討してから目標設定をするべきである。
肉の代わりにエネルギーと蛋白質を供給するものとして、シリアルや豆類の消費量増加を推進するのが良いかもしれない。



報告書
WCRF/AICR Expert Report, Food, Nutrition, Physical Activity and the Prevention of Cancer: a Global Perspective
http://www.dietandcancerreport.org/?p=ER


米国がん研究協会AICRからのプレスリリース
がん予防のための助言
Recommendations for Cancer Prevention
http://www.aicr.org/site/PageServer?pagename=dc_home_guides
1. 痩せすぎない程度に体重を落とす
2. 毎日少なくとも30分運動する
3. 砂糖の入った飲料を避けてエネルギー密度の高い食品(砂糖と脂肪が多くて繊維が少ない加工食品)は制限する
4. 野菜・果物・全粒穀物・豆類をもっと食べる
5. 赤身肉(ビーフ・ポーク・ラム)を減らし加工肉を避ける
6. アルコールを制限(男性1日2杯、女性1日1杯)
7. 塩分の多い食品や塩で加工した食品は避ける
8. がん予防のためにサプリメントを使わない
9. 6ヶ月まで赤ちゃんは母乳のみで育てる
10. 治療後のがん患者はがん予防のための助言に従う
そして忘れてはいけないことは煙草を吸ったり噛んだりしないこと


これに対して米国食肉協会AMIが反論
American Meat Institute (AMI)
AMIはWCRFパネルの肉摂取に関する推奨は極端で事実無根
American Meat Institute Calls WCRF Panel Recommendations on Meat Consumption Extreme and Unfounded
October 31, 2007
http://www.meatami.com/Template.cfm?Section=Home&template=PressReleaseDisplay.cfm&PressReleaseID=3471&News=Y
WCRFの肉の摂取量を極めて少なくするようにという助言は反食肉バイアスによるものであると主張。疫学研究の都合の良い部分だけを抜き出して結論を導いている、加工肉からの亜硝酸塩摂取量は全体の5%程度にしかならない。
米国食事ガイドラインに従ってバランスの取れた食事をし、毎日運動して健康的な体重を維持することが望ましいと主張。


AICRから反論
米国食肉協会のプレスリリースに関するAICRの声明
Statement From the American Institute for Cancer Research (AICR) on Meat Institute Press Release
http://www.aicr.org/site/News2?abbr=pr_&page=NewsArticle&id=12920
本日AICR の報告書についてAMIが発表した声明は、赤身肉と加工肉に関して間違った主張が含まれている。系統的レビューは科学的方法で、個別の論文で有意差がなくてもまとめると有意差がでることはあり得る。亜硝酸塩だけを問題にしているわけではない。高温調理による影響や塩漬け、燻製などの影響もある。


(どっちもどっちという感じがしないでもない。一般の人は、添加物や農薬は一切出てこないことに注目すべきなのかもしれない。肉といっても鶏肉や魚は入らないらしい。日本人だと問題点は塩と煙草くらいか。米国人は牛肉食べ過ぎだと思うけど。やはりAndrewに1票)



オーガニック食品の方が良いという話は以下