食品安全情報blog過去記事

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糖鎖科学は誰のもの?

Who Owns Glycobiology?
Science 2 November 2007:
Jocelyn Kaiser
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/318/5851/734
自分たちの分野をきれいにしようとしていると主張している生物学者のグループが、糖栄養剤を販売しているテキサスの企業と闘っている。この会社は科学者達が嘘を広めていると主張して訴訟を行うと威嚇している。
糖鎖科学の第一人者で雑誌Glycobiologyのエディターらが、テキサスのサプリメント販売企業Mannatech社に対して、根拠のない医学的作用を謳って製品を販売していることを酷評したエディトリアルを9月にオンライン発表した。そしてMannatech社がスポンサーをしている会合で講演する予定だった科学者に再考を呼びかけた。一方Mannatech社はGlycobiologyのエディトリアルについて苦情を申し立て、出版社であるOxford University Pressは、回答を含めて後で再度発表するとして3週間後にエディトリアルを削除した。
昨年の売上高が4億ドル以上のMannatech社は、この事件の前に司法当局から病気を治すという製品の表示が違法であるとして訴えられていた。同社は罪を否定したが表示は変えるとしていた。
一方米国の別の糖鎖科学者は、事実関係を明確にしてこの分野へのダメージを避けたいと述べている。サプリメント会社が木の皮の抽出物を売るのに糖鎖科学者は関係ない。もし彼らが我々の分野と関係があると言うならそれは問題である。これは科学者の説明責任の典型的な例である。
しかし一方でヨーロッパの糖鎖科学者などは批判が行き過ぎであると考えている。Mannatech社の後援は学会の企業による資金援助に過ぎないとし、批判している人たちは代替医療一般を不当に無視していると主張している。
Mannatech社は「糖鎖科学分野の著しい発展により明らかになった免疫機能に必須の糖鎖が云々」というような宣伝でサプリメントを販売している。同社の主要製品はカラマツ樹皮アラビノガラクタン、アロエベラゲルなどの混合物であるAmbrotose Complexで、「免疫機能をサポートし、細胞間コミュニケーションを最適化する特別な植物多糖類の混合物」と宣伝している。さらに多くの科学者の名前を宣伝サイトに掲載している。そのうち何人かは同社による無断使用 で、何人かは自ら進んで同社の宣伝をしている。削除を要求している科学者もいる。

(Mannatech社のサイトには日本語もある)