食品安全情報blog過去記事

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環境汚染物質が胎児に侵入

Science NOWより
An Environmental Contaminant Invades the Womb
26 November 2007
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2007/1126/3?etoc
ヒ素の悪名がさらに高まっている。科学者はもし妊娠女性がヒ素に暴露されると、胎児のいくつかの遺伝子の活性が変化し、その子が生まれたのちにがんになるリスクが高くなる可能性がある。この知見は妊婦の飲料水中からヒ素を追い出す緊急的必要性を新たに付け加えるものである。
ヒ素は天然及び工業由来の両方が、世界中で飲料水を汚染している。WHOの安全基準では飲料水中濃度は10 ppbを超えてはならないが、バングラデシュなどのような国ではこの値を超えている。科学者は低濃度の慢性暴露が糖尿病やがんなどと関連することを示している。さらに最近の研究では生まれる前のヒ素暴露が後のがんリスクと関連する可能性を示唆しているが、メカニズムは不明である。
バンコクのChulabhorn研究所のPanida Navasumritらの研究者は、タイのRon Pibul地方で調査を行った。ここは1960年代から1980年代にかけてスズの採掘により地下水のヒ素濃度がWHOの規制値の50倍になっている。研究チームはこの地域の母子の血液と足の爪を採取しそのうち21検体をケンブリッジにあるMITの分子生物学Leona Samsonに送った。Samsonはこれらの検体を、母親のヒ素暴露のないバンコクの11人の赤ちゃんのものと比べ、ヒ素暴露のある母親から生まれた赤ちゃんで有意に遺伝子発現レベルが違う11の遺伝子を同定した。これらの遺伝子を参照すると、残りの19人の検体について、母親にヒ素暴露があったかどうかを83%の正確さで予想できた。
これらの11の遺伝子は細胞の増殖や死、炎症に関与するものであった。現時点でヒ素が何故がんを誘発するのかは正確にはわかっていない。
論文本文 オープンアクセス
Activation of Inflammation/NF-κB Signaling in Infants Born to Arsenic-Exposed Mothers
Rebecca C. Fry et al.
PLoS Genet 3(11): e207 doi:10.1371/journal.pgen.0030207
http://genetics.plosjournals.org/perlserv/?request=get-document&doi=10.1371/journal.pgen.0030207