食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

健康にまつわる怖い話

Scary Health Stories (from the Washington Times)
Elizabeth M. Whelan, Sc.D., M.P.H.
February 6, 2008
http://www.acsh.org/healthissues/newsID.1676/healthissue_detail.asp
ワシントンタイムスの2008年2月6日号に掲載
もしあなたに子どもや孫がいたら、我々は有害な発がん性のある化学物質に囲まれていると主張する活動家(一部は学位を持っている)の標的である。あなたは赤ちゃんや子どもたちの健康や福祉にはとても気を遣っているので、絶好の餌食なのである。証明されていない健康上の恐ろしい話を提供する人たちはそのことを知っている。
恐怖を煽る人たちには全て上手くいくための条件が揃っている。そしてあなたが彼らの活動に気がつかない限り、あなたはたくさんのおびえた犠牲者の一人になるであろう。
彼らのやりかたはこうだ:彼らは精神科医が長いこと知っていることを知っている:ヒトはよく知らない、見えないものに恐れを抱く。これは人間に備わった性質で、見えないものは怖い。そしてこれが「トキシックテロリスト」が期待していることなのである。実際にリスクがあってもなくてもあなたは子どもたちの安全を確保するために何かをするだろう。
今週報道された怖い話を例にだそう。
医学雑誌Pediatricsに掲載された論文でベビーローションやパウダーやシャンプーにフタル酸類が含まれ、それが皮膚から吸収されて赤ちゃんが病気や障害になるリスクがあると主張している。
フタル酸類は50年以上各種の製品に使用されてきた。例えば日用品の安定剤やプラスチックの可塑剤、シャワーカーテンや医療用具など。フタル酸類は目に見えず身近でなく(発音や綴りを正確にできる?)保護者にとっては未知のものである。だから親がフタル酸類がローションやシャンプーを使った赤ちゃんの尿から検出されたという記事を読んだら、あわてるのも無理もない。
そしてこの論文の著者は活動家のように「アメリカの赤ちゃんはフタル酸類を含むおしゃぶりを吸い、まだ発達中の脆弱な身体に直接毒を取り込んでいる」と主張するのを聞けば、すっかり頭に来て見えない敵があなたの赤ちゃんを攻撃しているのだと思うだろう。
しかし活動家の怖い話とは違ってフタル酸類の科学的事実とは:
(1) 分析技術が向上して我々はごく微量の物質を、天然でも合成でも、検出できるようになった。化学物質が検出されたということが即有害だということではなく、フタル酸類が乳から検出されたからといって驚くことはない
(2) 消費者製品由来のフタル酸類が健康に有害だという証拠はない。
もし大量に齧歯類に与えたら病気になったと言う理由でフタル酸類を危険なものだとみなすのであれば、我々は齧歯類にがんを誘発するたくさんの天然の食品(マッシュルームやコショウやコーヒーやナツメグ)を恐れなければならない。

問題の論文
Sheela Sathyanarayana et al.
PEDIATRICS Vol. 121 No. 2 February 2008, pp. e260-e268
(doi:10.1542/peds.2006-3766)
Baby Care Products: Possible Sources of Infant Phthalate Exposure
http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/121/2/e260
2000-2005年に生まれた163人の乳児の9種のフタル酸代謝物を測定した。乳児用ケア用品の使用と24時間尿の代謝物濃度に相関があった。
最も平均が高濃度だったのがMEP(フタル酸モノエチル)  178.2 microg/L、 次いでMEHHP(フタル酸モノ2エチル5ヒドロキシヘキシル)が61.2、MBP(フタル酸モノブチル)が36.7など。
参考
赤ちゃんではないが日本のデータ
http://risk.kan.ynu.ac.jp/publish/hitoh/itoh200503b.pdf