食品安全情報blog過去記事

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アルツハイマーと知能

Behind the headlines
Alzheimer’s and intelligence
Monday April 7 2008
http://www.nhs.uk/news/2008/04April/Pages/Alzheimersandintelligence.aspx
「魚油が脳を活性化する」というのが今日のDaily Mailの見出しだ。新聞はオメガ3油の多い食事をしている高齢者の知能検査の成績が良かったと報道している。この話は11才の時に知能検査をした66-68才の人々について調べた研究に基づいている。
American Journal of Clinical Nutritionに発表された後ろ向きコホート研究で、1947年に10-11才でMoray House Testと呼ばれる知能検査を受けたスコットランドの人々を対象にしている。1999年11月から2002年2月までの間に地域に住んでいた健康な人を660人同定して478人が研究に参加した。彼らに食事についてのインタビューを行い、そのうち289人についてはさらに認知機能やDNA解析、血中脂肪酸組成などを調べた。
結果としてはAPOE ε4遺伝子変異を持つ人については総脂肪酸濃度と知能一般には関連は見られなかった。APOE ε4遺伝子変異を持たない人については総脂肪酸濃度と11才及び64才の時の知能検査の成績に有意な関連が見られた。さらに総脂肪酸の内容を解析したところ高スコアと関連していたのはn-3多価不飽和脂肪酸DHAであった。しかし性差や遺伝子などの関連因子を考慮するとDHAの有意差は消失した。
この研究を解釈するのは難しい。考えなければならない点がいくつかある。結局この研究は加齢に伴う認知機能の変化に与える遺伝子と環境の影響に関する幾分の根拠を提供するものの、いくつかの弱点によりどう解釈すべきかは不明である。最も重要な点は食事中の魚油の影響を直接調べたものではないということである。
(新聞の見出しは拡大解釈)