食品安全情報blog過去記事

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「魚及び水産物のメチル水銀」に関するDG Health and Consumersからの「覚え書き」

"Information Note" from DG Health and Consumers concerning "Methyl mercury in fish and fishery products"
21-04-2008
http://ec.europa.eu/food/food/chemicalsafety/contaminants/information_note_mercury-fish_21-04-2008.pdf
食品中の水銀リスクに関する展望を得るため、欧州委員会はEFSAにEU加盟国の集めた食品中水銀含量データを検討し、JECFAの新しいPTWI (1.6 microg/kg体重/週)とともに評価するよう依頼した。
2004年3月18日にEFSAは科学的意見を公表し、魚からの水銀摂取について感受性の高い集団について助言を提供した。この助言は出産可能年齢の女性と小さい子ども向けのものである。
この覚え書きは、魚中水銀濃度について厳しい規制値を設定することによりこの問題を完全に解決することはできないという現状分析である。
問題となっているメチル水銀は魚やシーフードの総水銀の90%以上を占める。魚やシーフードは環境中に天然や汚染由来の水銀があることにより水銀を含む。
大型の捕食性魚が長期間生きるために高濃度の水銀を含む。大型の捕食性魚はしばしば回遊性で、バックグランドの水銀汚染が高い特定地域由来の魚を排除するのは不可能である。
魚やシーフード以外の食品の水銀量は少なく懸念は小さい。またその他の食品の水銀はリスクの低いメチル水銀以外の形である。
一般的に平均量の水産物を食べるEUの消費者は安全でない量のメチル水銀に暴露されることはない。たくさんの魚を食べる消費者にはリスクが高いかもしれないがデータがないため特に問題となる国は同定できない。EFSAは食事摂取量についてのさらなる情報が必要だとしている。
欧州委員会は感受性の高い集団により詳細な助言を与えたい。つまり妊娠を希望する女性、妊娠中の女性、授乳中の女性、小さい子どもに対して、継続的に確実に助言が届くようにすることが重要である。
加盟国の中には感受性の高い集団に助言を提供している国もある。特定の捕食性魚を食べる量を制限したり、時には食べないようにというものもある。
魚中の水銀については世界中で問題になっている。EU以外でも魚摂取に関する助言が発表されている。
・ オーストラリア・ニュージーランドでは妊娠女性と妊娠を計画している女性と小さい子どもにサメ・broadbill・メカジキ・マカジキを2週間に一回以上食べないように、その2週間の間は他の魚を食べないように助言している。オレンジラフィー/シーパーチとナマズについては同様に1週間に一回。
・ 米国保健福祉省と環境省は妊娠する可能性のある女性と妊娠女性と授乳中の女性と小さい子どもについて助言している。この中にはサメ・マカジキ・king mackerel・アマダイを食べないことも含まれる。また水銀量の少ない魚については週に最大2回までという助言も含まれる。
・ ヘルスカナダは一般人に対してマグロ・サメ・マカジキ・オレンジラフィー・アブラソコムツを週に150g以上食べないように助言している。妊娠女性や妊娠可能性のある女性又は授乳中の女性についてはこれらは月に150g、5-10才の子どもは月に125g、1-4才の子どもは75gと助言している。
EUには魚の水銀上限値規制が既に存在している。魚に検出されている水銀量からみて規制値を下げる余地は限られている。感受性の高い集団を守るためには他の方法が必要である。この場合には特定の集団向けの助言が適切な方法である。
上述のことから、欧州委員会は、加盟国は消費者向け助言を発行するのに関係する全ての情報を提供すべきだと考える。消費者にはできるだけ確実な情報を受け取る権利がある。従って欧州委員会は魚中の水銀量とPTWIに基づき消費者が可視化できるようおおまかな計算をした。


妊娠可能性のある女性、妊娠中の女性、授乳中の女性はメカジキやサメやマカジキやカワカマスのような大型の捕食性魚を週に100g以上食べるべきではない。もしこれだけ食べたらその週は他の魚を食べないように。またマグロは週に2回以上食べるべきではない。保護者はこの助言が小さい子どもにもあてはまることを注意すべきである。消費者は地域の特異性の観点から各国の提供するより詳細な助言に注意すべきである。


EFSAは、妊娠可能年齢の女性や子どもが食べている魚についてなど知識に不足があることも指摘している。そのようなデータがあればこれらの感受性の高い集団におけるリスク評価の精度を上げることができるであろう。それまでは上述の助言が適用される。