食品安全情報blog過去記事

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米国上院商業・科学・輸送委員会消費者問題・保険・自動車安全小委員会におけるFDA科学次長Norris Alderson博士の証言

Statement of Norris Alderson, Ph.D. Associate Commissioner For Science
Before Subcommittee on Consumer Affairs, Insurance, and Automotive Safety Committee on Commerce, Science, & Transportation United States Senate
May 14, 2008
http://www.fda.gov/ola/2008/bpa051408.html
現在実施中のビスフェノールA(BPA)の安全性に関する作業について。
最近のNTPやカナダ、市民団体の報告や主張について、FDAは消費者がBPAについて正しい、最新の情報を知ることが重要だと信じる。FDAはウェブサイトで情報を提供している。
2008年4月17日にFDAの長官Andrew von EschenbachがBPA専門委員会を設立した。その委員長が私(Norris Alderson)で、BPAに関する現在の研究の広範囲なレビューを行っている。食品や飲料容器のみではなく過去の我々の対策や最近の懸念についても検討し食品や医療用品など全ての製品からの暴露を検討している。我々は既にNTPの報告やカナダの発表について検討している。
現時点ではFDAは消費者がBPAを含む食品容器の使用を中止することは薦めない。我々のNTP報告書のレビューは継続しているが、現在入手できる膨大な根拠は、現在市販されているBPA含有食品容器は安全であることを示している。そしてこれら製品からのBPA暴露量は乳幼児への暴露も含めて有害影響を誘発する可能性のある量より低い。我々はBPAの研究は非常に活発な分野であることは承知しており、もしBPAの使用が安全でないという結論が出ればFDAは公衆衛生保護のための対応を執るであろう。

BPAを含む食品容器の規制状況

BPAの安全性評価
FDABPAのデータについては活発に調査してきたが公式に再評価を始めたのは2007年初めである。この再評価は当初は「低用量影響」についてのものだったが、2007年秋にはNTPのCERHRが同定した別のエンドポイントについても追加した。
BPAのような食品と接触する物質の安全性を評価するにあたって、FDAは消費者への暴露量評価を行って毒性学的情報を参考に消費者の暴露量を安全なものにする。消費者への暴露量についてはFDAポリカーボネートベースのポリマーや BPAベースのエポキシ被覆材などからの累積暴露量は成人1人i日あたり11 microgとなった。また缶入り乳児用ミルクをPC哺乳瓶で飲んでいる乳児については7 microg/dayとなった。これらの値はFDAの調査や文献などのデータによるものである。
FDABPAの「低用量」影響の可能性についての再評価では、現状の乳児や成人への暴露量は安全であると結論している。この結論は2007年7月までの関連データのレビューに基づき、その中には低用量を含む幅広い濃度での各種生殖や発生上のエンドポイント調査を含むガイドラインに沿って行われた2つの極めて重要な多世代経口試験の解析も含む。これらの研究にはマウスでの二世代生殖毒性試験とラットでの三世代生殖毒性試験が含まれる。
これらの試験は我々の既存データレビューにおいて多数の理由で最も重要であると考えられた。その理由は、FDAが新規使用申請の際に望ましいと考えられるガイドラインに沿った方法で行われ、FDAが独自に解析できるよう生データも含めて全てのデータが提出され、幅広い用量範囲が含まれていることなどである。FDABPA評価においてはこのようなデータは詳細が記されていない公表された論文より重要性は高い。さらにBPAについての多くの論文は、投与経路や利用された動物モデル、統計解析法、用量などで実験計画に問題がある。
こうした重要な研究から導かれたNOEL(5 mg/kg/day)とBPAの推定暴露量とを比較して、乳児での暴露マージンは約7000倍、すなわち乳児で何らかの影響が見られる濃度は実際の暴露量より約7000倍高いだろうと結論した。
さらにFDAは各動物種でのBPAの薬物動態データについてもまとめた。種差や投与経路による代謝システムの違いの理解が重要である。
FDAの知見はBPAについての二つのリスク評価、EFSAのAFCパネル及び日本の産総研の行ったものによってもさらに補強される。いずれもBPAの低用量影響について検討し、現行の暴露量では健康リスクはないと結論している。
BPA専門委員会のレビュー
FDAはNTPのCERHR外部専門家委員会が2007年11月に発表した結論を慎重に検討した。しかしながらNTPの要約案では専門家委員会の結論から逸脱して胎児や乳幼児へのBPA暴露による前立腺や乳腺や思春期早発についての「幾分かの懸念」を表明している。これらの解析は比較的新しい解釈が困難な毒性学的エンドポイントにより、現在入手できるデータは限られており大きな不確実性があると考えられている。NTPによるCERHRの結論の「最小限のminimal」から「幾分かの some」への懸念の格上げは、ここ数ヶ月の間の文献でのみ見られる研究を反映したものである。NTPの案は発生時の暴露による乳腺や前立腺がんに関する幾分かの懸念について検討しているが、同時にこれらのデータの不確実性についても強調し、これらの根拠はBPA齧歯類に対して発がん性がある、あるいはヒト発がんハザードとなると結論するには十分ではないとしている。
また神経や行動への影響についてもカナダの評価で問題となった。NTPとカナダは動物での神経や行動影響について検討し、これらの研究はヒトへの懸念については限られた根拠しかないと指摘している。いずれもヒト健康との関係を理解するにはさらなる研究が必要であるとしている。
FDAはまだ昨秋のCERHR専門家委員会やNTPの案で発表された懸念についてのレビューは完了していない。従って現在FDABPA専門家委員会が活発に検討中である。
結論
FDAの新しい報告についてのレビューは現在進行中であるが、入手できる膨大な根拠が、現在市販されているBPA含有食品容器は安全であことを示している。そしてこれら製品からのBPA暴露量は乳幼児への暴露も含めて有害影響を誘発する可能性のある量より低い。
FDAは新しいデータについても評価を継続し、もし安全でないという結論が出れば公衆衛生保護のために適切な対応をするであろう。


参考
これについての米国メディアの報道
FDAは哺乳瓶は安全だと言う・FDAは保護者にBPA哺乳瓶を避けるようにとは言わない・FDAは哺乳瓶のBPAを擁護・FDAビスフェノールA製品を認める・FDABPAについて心配していないが批判者はモラトリアムを要求
FDA Says Baby Bottles Safe
FDA Won't Tell Parents to Avoid BPA Baby Bottles
FDA Defends BPA in Baby Bottles
FDA approves use of products made of bisphenol A
FDA Not Worried About BPA but Critics Demand Moratorium
http://news.google.co.jp/?ncl=1212852633&hl=en&topic=m