食品安全情報blog過去記事

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セレンの毒性:栄養サプリメントによるセレン中毒の症例

Selenium Toxicity: A Case of Selenosis Caused by a Nutritional Supplement Mark E. Sutter et al.
Annals of Internal Medicine, 17 June 2008 Vol 148 Issue 12 http://www.annals.org/cgi/content/full/0000605-200806170-00228v1?papetoc
FDAが3月に発表したTotal Body Formulaのリコールに関連した症例報告。
6週間の下痢と2週間後からの進行性の脱毛で来院した55才の女性。脱毛は頭部に全体的に対称的におこり、腋下や性器や四肢にも及んだ。さらに全身の筋肉痛、関節痛、疲労、集中力低下を訴えた。下痢が始まる一週間前に彼女は夫と一緒に液体サプリメントを飲んでいた。そのサプリメントにはマルチビタミン・ミネラルが含まれると表示されていた。
診察の結果、全身の脱毛症、爪のMees lines(白い横線)がみられた。血中セレン濃度は高く、通常80 − 150 microg/Lのところ534 microg/Lであった。尿中濃度も通常150 microg/L以下のところ220 microg/Lであった。患者の夫も同様の症状であったが、重症度は低かった。
問題のサプリメントはセレンを7.33 microg/mL含むと表示してあったが、実際には800.50 microg/mLであった。患者はこのサプリメントを1日30 mL飲んでいたため一日の摂取量は24 015 microgと推定され、これは米国の推奨摂取量55 microgの400倍以上である。さらにクロムも6.67 microg/mLと表示されていたが実際は58.8 microg/mL含まれていた。患者にクロム中毒の症状は出ていない。