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動物飼料中の望ましくない物質としてのトロパンアルカロイド(Datura種由来)−CONTAMパネルの意見

Tropane alkaloids (from Datura sp.) as undesirable substances in animal feed[1] - Scientific Opinion of the Panel on Contaminants in the Food Chain
05/08/2008
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902036472.htm
トロパンアルカロイドという用語は、100以上の属と3000以上の植物種からなるナス科に存在することが最もよく知られている200以上の化合物からなるグループを指す。通常ピロリジンとピペリジンが窒素原子1つと炭素原子2つを共有した2つの環状構造を持つ。アルカロイドとしての性質を決める分子の末端にある窒素原子は特徴的なメチル化構造を持つ。
最も重要な天然トロパンアルカロイドは(-)-ヒヨスチアミンと (-)-スコポラミン (ヒヨスチンとも呼ばれる)である。これらのアルカロイドは特にチョウセンアサガオDatura stramoniumとDatura ferox 、Datura innoxiaに高濃度に存在する。トロパンアルカロイドのパターンは種により異なり、チョウセンアサガオ(thorn appleやJimson weedとも呼ばれる)ではヒヨスチアミンがどの部分でも多いが、Datura feroxではスコポラミンが主な成分である。Daturaの植物は大量に食べると動物に有害である。種子はヒヨスチアミンとスコポラミンを相当量含み、飼料中、特に大豆と亜麻仁製品に不純物として入っていることがある。
飼料への混入実態についての情報は不足している。これまで動物で報告された有害健康影響はほとんどの場合飼料への混入ではなくDaturaの植物を間違って食べたことによる。従って家畜における決定的暴露評価はできない。
全体として、Datura中毒に対してはブタが最も感受性が高い。現状の規制値3000mg/kg飼料では、最悪ケースの暴露推定で、主にスコポラミンを含むDatura feroxの種子をブタが食べた場合の有害影響について完全に否定できない。しかしながら限られたデータではあるが、動物飼料中の不純物としてのDatura stramoniumが現在の規制値1000 mg/kgまで含まれていたとしても動物の健康に悪影響はないだろう。
トロパンアルカロイドの作用メカニズムはムスカリンアセチルコリン受容体の競合的阻害によりアセチルコリンの結合を妨げることによる。各種臓器におけるムスカリンアセチルコリン受容体の特異性と選択性により、平滑筋と外分泌腺細胞と心拍と呼吸と中枢神経系が影響を受ける。アトロピン((-)-及び(+)ヒヨスチアミンのラセミ混合物)やスコポラミン(主に臭化ブチルスコポラミン)などの一部のトロパン類はヒトや動物の治療用に用いられている。家畜での中毒や混餌投与試験の報告では、トロパンアルカロイド暴露により最もよく見られる症状は、上部消化管及び呼吸器粘膜の乾燥と便秘、疝痛(馬)、瞳孔散大(散瞳)、心拍数の変化、落ち着きのなさやいらつきや運動失調や痙攣や呼吸抑制などの中枢神経系影響である。
トロパンアルカロイドは経口摂取すると速やかに吸収されるが直ちに代謝排泄されるため生物学的半減期は短い。さらに毒性影響が出る前に典型的な薬理学的症状が出るため、暴露された動物が食用にするために屠殺されることはないであろう。従ってCONTAMパネルは可食部やミルクや卵に残留するトロパンアルカロイドが消費者にとってリスクになることはありそうにないと結論した。