食品安全情報blog過去記事

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香水はあなたの胎児を不妊にするか?

Sense about science
Can perfume make your unborn baby infertile?
September 02 2008
http://www.senseaboutscience.org.uk/index.php/site/other/252
9月1日のScotland on Sundayは「妊娠中の女性に香水を使うなと警告」と題した記事を書き、Daily Telegraphや Daily Mail そして各種ネットニュースが、妊娠中の女性は、胎児が後で不妊になるリスクが増える可能性があるため香水や化粧品や各種香料入りクリームを避ける必要があるという報道を行った。記事はオンラインで読める(リンク)。
これらの報道はRichard Sharpe教授のエジンバラでのSimpson シンポジウムで行われた学会発表に基づくものである。Sharpe教授は男性の不妊について研究している。彼の研究は特定の香水や化粧品を対象にしたものではなく、彼は妊婦に香水などを避けるように警告してもいない。
ここにSharpe教授の研究と立場を説明する。
「我々の研究は、ピアレビューのある雑誌に発表されたもので9月2日にシンポジウムで発表され、生まれたばかりの男児(精巣下降不全、尿道下裂)や青年(精子数減少、不妊)によくある生殖器系の疾患が胎児の発育期に起源するものである可能性について新しい知見を提供するものである。妊娠8-12週、つまり極めて初期に起因する可能性がある。我々の研究は実験動物で、こうした疾患が胎児を男性化するためのホルモンであるアンドロゲンの欠乏による可能性を示したものである。我々の研究は生まれたときにその子が成人したとき精子数が少なくなるリスクがあるかどうかを予想する簡単な新しい方法についても提案している。
上述の実験動物で示された過程に、環境中化学物質が影響する可能性があり、それらはヒトにおいてもこれらの疾患に関与する可能性がある。現時点では我々はこの仮説が本当かどうかはわからないし決定的な証拠を得るのは極めて困難な仕事で数年はかかるだろう。
「不確実」であるというのが事実だが、しばしば妊婦から「有害な物質を避けるにはどうすればいいの?」と質問される。私の回答は、食品や住居などのほとんどの場合の環境暴露についてはあまりできることはない、しかしそんなに心配なら妊娠初期の3ヶ月間は化粧品などの日用品を避けることで不安が解消できるだろう、というものである。これはこれらの物質が赤ちゃんに有害であるという決定的根拠を我々が持っているからではない、ただ不安を感じることが妊婦や赤ちゃんに良くないからである。
しかしながら妊娠を計画している女性にとって赤ちゃんのためにできることとしてはるかに大切なことは煙草を吸わないこと、飲酒しないこと、賢明なバランスの良い食事を摂ること、である。喫煙や飲酒が赤ちゃんに悪いことは疑いがなく明確で、赤ちゃんの生涯にわたる健康のために母親としてできる最良のことは酒と煙草を避けることである。
私はScotland on Sundayの記事のような「警鐘」ジャーナリズムとは距離を置きたい。そうした記事はその根拠とする科学(常に不確実性がある)を正確に反映していない。そうしたジャーナリズムは一般人の良識を侮辱し、科学的にしっかりした根拠のある推奨事項を軽視させることにより人々に危害を与える。つまり人々が本当に必要なことを真剣に受け止めなくなってしまう。」

香料や化粧品についてのさらなる情報は化粧品、トイレタリー、香料製造業協会Cosmetic, Toiletry and Perfumery Associationのウェブサイトで。
Unfounded Fears Over Perfume
1st September 2008
http://www.thefactsabout.co.uk/news.asp?newsid=114&view=yes&pageid=99&menu=sub&menuname=News&menuid=36&submenuid=99