食品安全情報blog過去記事

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NTPはビスフェノールAの最終報告書を発表

NTP Finalizes Report on Bisphenol A
3 September 2008
http://www.niehs.nih.gov/news/releases/2008/bisphenol-a.cfm
この結論は主に動物実験に基づいている。NTPのAssociate DirectorであるJohn Bucher博士は、「動物で観察された変化を直接ヒトに当てはめられるかどうか、それらは明確な健康への有害影響となりうるかどうかについては相当な不確実性が残されている。ただBPAがヒト発達に対して影響がある可能性を無視できないと結論した。」と述べている。
この知見の消費者への影響についてはCERHRの所長であるMichael Shelby博士は「残念ながら、この情報に一般の人がどう反応すべきかを助言するのは非常に難しい。これらの知見がヒトの健康に関係するのかどうかを知るにはさらなる研究が必要である。ただ現時点で動物でみられた影響がヒトにもみられる可能性を無視できない。保護者として心配なら、個人的に乳幼児のBPA暴露を減らす選択はできる。」と述べている。


パブリックコメントなどこれまでの文書は以下から
http://cerhr.niehs.nih.gov/chemicals/bisphenol/bisphenol-eval.html


報告書本文
The NTP-CERHR Monograph on Bisphenol A
September 2008
http://cerhr.niehs.nih.gov/chemicals/bisphenol/bisphenol.pdf
PDF 321ページ
結論部分
・NTPは、ビスフェノールAの現在の胎児や乳幼児への暴露量において、脳・行動及び前立腺への影響について幾分かの懸念を持っている(some concern)。
・NTPは、ビスフェノールAの現在の胎児や乳幼児への暴露量において、乳腺や女の子の思春期早発について最小限の懸念(minimal concern)を持っている。
・ NTPは妊娠女性のビスフェノールA暴露が胎児や新生児の死亡や先天異常や低体重や成長不全を誘発することについての懸念は無視できると考えている(negligible concern)。
・ NTPはビスフェノールAの成人への非職業暴露による生殖影響についての懸念は無視でき(negligible concern)、職業上高濃度暴露された労働者については最小限の懸念(minimal concern)を持っている。


(4月14日の案に比べて、乳腺と女性の思春期早発についての懸念レベルが引き下げられた。なおEFSAやFDAの評価で重要な項目となっているBPA代謝のヒトと齧歯類での違いについてはさらに検討が必要としてあまり重きをおいていない。神経行動上の影響として考えられるのは例えばマウスでは珍しいものに関心を示し探求しようとする行動は雌の方が強いが、その差が小さくなるようだ、など。それは人間でもあてはまるのかどうか不明。また齧歯類の方がヒトや霊長類より脳の性的分化におけるエストラジオールの役割が強く明確である。ヒトでは男性型の脳と行動を形作るのにエストロゲン受容体を介した信号伝達が重要な役割を果たしているという証拠は見つかっていない。そもそも雌雄複数胎仔が同居する双角子宮の齧歯類と一度に一人が普通の人間の胎児とでは男性化する時期も違う。CERHRの招集した専門家委員会の意見に比べて前立腺への影響について懸念レベルを上げた理由としては、生まれたばかりの齧歯類に注射で投与した実験を考慮対象にしたこと、前立腺の細胞形態への影響についての新しい論文を考慮したことによる。)



NTPの最終報告書を受けて米国化学工業協会(ACC)が声明を発表している
NTPの最終報告書はビスフェノールAの安全性評価のしっかりした科学的根拠を支持する
Final NTP Report Provides Sound Scientific Support for Bisphenol A Safety Assessments
September 3, 2008
http://www.americanchemistry.com/s_acc/sec_news_article.asp?CID=206&DID=7934
NTPの最終報告書ではヒト健康への重大な懸念はないことを示した、としている。



こんなのが出てる
Bisphenol A prevents the synaptogenic response to estradiol in hippocampus and prefrontal cortex of ovariectomized nonhuman primates
Published online before print September 3, 2008, doi: 10.1073/pnas.0806139105
http://www.pnas.org/content/early/2008/09/02/0806139105.abstract
詳細不明