食品安全情報blog過去記事

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数だけの問題か?健康統計を理解する

Just a numbers game? Making sense of health statistics
10-Oct-2008
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-10/afps-jan101008.php
大統領候補者は集票目的で、医薬品企業は販売促進目的で、メディアはあらゆる方法でそれを使うが、消費者はもちろん誰もそれを理解していない。健康に関する統計は我々の周りに溢れているが、例えば患者に薬や手術のリスクを計算するとかがんスクリーニングのリスクベネフィットを説明するといった、多くのデータから毎日決定を行い助言しなければならない医師ですら、基本的な統計リテラシーに欠ける。
Psychological Science in the Public Interestに発表された新しい報告"医師や患者の健康統計理解を助けるHelping Doctors and Patients Make Sense of Health Statistics"では、統計リテラシーが社会や医療に悪影響を与える重要な問題であることを示している。著者は心理学者Gerd Gigerenzerらである。
統計リテラシーの問題には二つの側面がある。健康情報伝達の際に提示される誤解を招くようなあるいは混乱させるような統計の用い方と、消費者の健康情報を読み取る際の統計学的思考スキルの欠如との複合により問題が生じる。
この組み合わせは破壊的である。1990年代半ば、英国で新しい経口避妊薬血栓形成リスクを2倍にするとの報告が、女性たちに集団パニックを誘発し、多くの女性が避妊薬を止めた。その結果その年イングランドウェールズで13000件の中絶が余分に行われた。もしこの情報伝達が、新しい経口避妊薬により7000人に1人の血栓リスクが7000人に2人になるというふうに行われていたならパニックにはならなかっただろうし、英国の健康保険は7000万ドルを節約できたであろう。
健康情報が、数値が大きいため注意をひきやすい相対リスクで表現されることはあまりにもよくある。相対リスク(100%増加といった)は、もとの発症率のような重大な事実が置き去りにされた場合、極めて誤解を招きやすい。絶対リスク(7000人に1人のような)はよりわかりやすくセンセーショナリズムには繋がりにくいがメディアや宣伝ではあまりみられない。
医師もまた例外ではない。著者らは医師ががんスクリーニングやその他のデータを正確に読み取れないことを示した研究結果を引用している。
http://www.psychologicalscience.org/journals/pspi/pspi_8_2_article.pdf