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フタル酸:概要

Phthalates: An Overview
October 15, 2008
By Michael Kamrin
http://www.acsh.org/factsfears/newsID.1192/news_detail.asp
1999年にKoopがDEHPとDINPについて報告し、1998-2000年にNTP-CERHRが7種のフタル酸エステルについて評価してから、フタル酸の毒性に関する多くの新しい研究が発表された。それらの多くは各種欧州委員会の科学委員会を含む専門家委員会の検討対象となってきた。最新の評価は2008年初めに発表されたDEHPに関するものである。時間とともに評価に僅かな変更や精細化が行われたが、フタル酸類にリスクはないという初期の評価は変わっていない。
リスクキャラクタリゼーションの部分で提示されている判断は、10年以上にわたって多数の科学者が注意深くデータを吟味した総合判断を反映している。引用文献に示されるように、主な判定は2000年以前に行われた多くの研究に基づいているが、同時にデータのギャップを埋めるためにおこなわれた疫学研究などの最近の研究の成果も反映している。
全体として、実験室でのデータからはフタル酸類はその活性は様々であるが、その最も活性の強いものによるリスクでさえも、個別でも混合物でも、全ての年齢の一般人に対するリスクは極めて小さい。ある種の治療を受けている一部のヒトなどでは暴露量は相当多いが、それでも有害影響があるという根拠はほとんどない。
米国やヨーロッパなどでのフタル酸類評価についての多大な努力にも関わらず、この化合物を規制しようとする動きが増加している。EUではその結果、乳幼児の使う可能性のあるプラスチック類に6種のフタル酸を使うことは基本的に禁止された。2005年に全面発効したが、ここ数年米国の多くの州がこの規制を真似しようとし、一部では規制している。この傾向は、科学的根拠はそのようなリスク管理による公衆衛生上の改善はないであろうことが強く示唆されているにも関わらず、続くであろう。
フタル酸の基本的事実をいくつか覚えておこう。
1. フタル酸類は可塑剤や溶剤に広く使われている化合物群である。建材や消費者製品やおもちゃや医療器具などの幅広い製品に過去75年間使用されてきた。
2. 当初懸念されたのはおもちゃのDINPと医療器具のDEHPであった。専門家委員会はそのような暴露によるリスクは低いと結論したが不確実性のため追加のデータは有用であろうとした。この時懸念の焦点がプラスチック類に使われている多数のフタル酸類の乳幼児への生殖・発達影響に移った。
3. 過去10年間ヨーロッパや米国の政府や機関が、乳幼児の使う可能性のあるおもちゃやプラスチックからのフタル酸暴露を制限するための規制を提案したり導入したりしてきた。この対象になったフタル酸類はDnOP、DIDP、DINP、BBP、 DBP及び DEHPである。
4. これらの対応が検討されている中、ヨーロッパや米国で各種専門家委員会が最も懸念が高い個別のフタル酸について注意深く評価を行っていた。この評価は今日まで継続しており、新しい研究も対象になっている。
5. 新しいデータに基づき、特にバイオモニタリング研究から、乳幼児のプラスチックからの暴露量は相当量減少していると推定されている。
6. データギャップを埋めるために多くの動物実験が行われたが、それらのデータからフタル酸類の毒性についての結論は余り変わらなかった。
7. フタル酸類の、特に男性生殖機能への有害影響を調べた多数の疫学研究が行われたが、結果は矛盾するもので結論は出せない。
8. 疫学研究を含む最新の暴露及び毒性データから、最も懸念されているフタル酸へのヒト暴露量はフタル酸類のLOAELより、最も感受性の高い動物種の場合でも、一般的には数千倍低い。
9. 従ってフタル酸類のリスクについての再評価の結論は10年前と同じで、(1)現在使用されているフタル酸類は乳幼児も含めて一般人には有意なリスクとはならない;(2)集中治療の際のチューブなど医療器具から大量に暴露されている成人や子どもの有害影響の根拠はない
10. フタル酸類にヒトへの有意なリスクはないという根拠から、現在の、あるいは提案されているフタル酸暴露を制限するための規制は公衆衛生上の利益になることはまずないであろう。
以下略
(2008年の最新の評価、というのはECBによるExisting Substances: Summary
Risk Assessment Report Vol. 80のこと)