食品安全情報blog過去記事

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歩きやすいように、ゴミを拾う

id:pollyannaさんの記事を読んだ。
共働き夫婦が支え合うべきこと - 理系兼業主婦日記

子供が一人目で小さいうちは、ものすごくたくさんの不安といらだちと気遣いに振り回されて、神経をすり減らしているだろう

という点に関して。

日本の平均的お母さんたちは、小さい子どもの世話に関して、その他の先進国と比較するとものすごく良く頑張っていると思う。
まず帝王切開の率が低い。北米やヨーロッパの一部では痛いのはイヤだという理由で帝王切開を選ぶ妊婦さんが結構いる。次に母乳で頑張ろうとしている(ような気がする)。ミルクはほぼ粉ミルクしか売っていなくて、これは分量を測って熱いお湯で溶かして人肌に冷ますという手間がかかる。カナダのように調整済みの液体ミルクを温めもせずそのまま飲ませればいいということはない。そして何故か公立保育園に布おむつしかダメなところが多く、「手作り」の布団カバーや袋物を要求されたりする。幼稚園はもちろん、保育園でもイベントの時にはお弁当持参を要求されたりするがこのお弁当に手をかけている。 キャラ弁までいかなくとも彩りや見た目を考えて詰めるのが当然なんて考えていのは日本人くらいでは。ほとんどの国ではサンドイッチに果物が丸ごと一個入っていれば上等な方だと思う。そして歯磨き。WHOは虫歯予防のために水道水にフッ素を入れることを推奨しているのに、日本はお母さんが必死に歯を磨くことで虫歯を予防せよと考えているようだ(結果的に虫歯多い)。小さい子は歯磨きを上手にできるはずもないのでお母さんの責任は重大。そして義務の予防接種の数が少ない。水疱瘡おたふく風邪の予防接種を受けるのに何故か悩まないといけない。


以下に子育てに関して主に母親に吹き込まれる疑似科学的主張(ただの呪いの言葉のようなものもあるけど)を挙げてみる。
・ 妊娠したら薬は絶対ダメ
・ 胎教するといい
・ 妊娠すると太るからダイエットしなくちゃ
・ 名前の画数が悪い
・ 家や部屋の方角が悪い
・ 母乳育児万歳−西原式
・ 母乳にはダイオキシンが含まれるからしぼって捨てて赤ちゃんにはあげないほうがいい
・ 無農薬・有機無添加食品がいい
・ 加工食品は添加物だらけだからダメ
放射線照射した食品は命がないからダメ
・ 遺伝子組換え技術はフランケンシュタインのような化け物を作る技術
・ 電子レンジは電磁波が出るから使ってはいけない
・ ラップやプラスチック食器は使ってはいけない
・ 哺乳瓶は危険
・ 缶詰めはダメ
・ とにかく母親の手作りが一番
・ 手作りしても「おかあさんはやすめハハキトク」はダメ
・ 卵は洗ってないのがいい
・ パンは天然酵母
・ 水道水は塩素が入っていて危険
・ 昔の食事がいい
・ 牛乳は牛の飲むものだから人間には向かない
・ 砂糖や小麦粉やごはんなど白いもの(純度が高いもの)はダメ
・ 三歳までは母親が育てるべき
・ 予防接種は危険、自然に病気にかかるのがいい
ホメオパシーとか漢方とかで医療拒否
マクロビオティック
・ 七田式とか家庭保育園とかフラッシュカード
・ 血液型別育児
モンテッソーリ
・ 小さい頃に英語耳を作らないと手遅れ
・ 小さいうちに絶対音感つけさせないと手遅れ
・ せっけんと重曹クエン酸
合成洗剤や柔軟剤やシャンプーは身体にも環境にも悪い
・ 紙おむつは悪い
・ 化学繊維は身体に悪い
・ 家も家具も天然素材がいい
・ 歯にフッ素塗ったりフッ素入り練り歯磨きは危険
歯垢検出用の色素は発がん物質
・ 虫除けは危険
・ 子どもは絶対裸足
・ マンション暮らしのような土に触れない生活では子どもがおかしくなる
・ 子どもはみんな天才(白紙)、教育次第で何にでもなれる
・ 親のたった一言で一生台無し
・ 子どもの教育はお金次第
・ ゲームやるとゲーム脳になる
・ テレビばかり見てると自閉症になる
・ ランドセルで背が伸びなくなる

こういういろいろなことが不意に、時には避けようもない状態で突きつけられる。避けられない、というのは例えばこういうことについて判断を迫るのが、 いつもお世話になっている保育園の先生だったり、買い物の負担を避けようと思って加入した生協のチラシだったり、子どもの仲良しの友だちの保護者だったりするから。もちろん自分から本を読んだりインターネットで手に入れてしまったりすることもある。それぞれ素人が最善の結論をだそうと調べ始めると結構大変だったりする。
多くの夫君はなんだそれ、で笑ってしまうようなことが、子どものことは全て自分の責任だと一生懸命な真面目なお母さんにとっては真剣に悩む原因になったりする。心理的に疲れ果てもする。妻にしてみれば「何て大変なの」という事態が夫から見れば「勝手に悩んで勝手に疲れてる」だけだったりする。
敢えて悪者さがしをするなら、悪いのは「疑似科学の蔓延」であってそれがほとんどの場合ひたすら母親の負担を増やす方向に誘導するから。例えば「おかあさんはやすめハハキトク」なんて語呂合わせには母親への悪意しか感じない。なのにこれを言ってくる人は「善意」で「正しいこと」を教えてあげているのだから感謝しなさいという態度で向かってくる。いろいろな人に助けてもらわないと回らない共働き母には結構辛い。対策としてはもちろん当事者のリテラシーの向上も必要だけれど、余裕がないときに負荷をかけられると冷静な判断ができにくいのは仕方がない面もあるので、躓くかもしれない石を減らすことも大切。
上述のようなことを言っている人をみかけたら、そんなの心配しなくていいよと一言言うだけで、聞いていたお母さんの不安が少しだけ和らいで、子どもが理不尽に泣く回数が一回だけ減るかもしれない。
私は世の中の笑顔を増やしたい。
だからできれば疑似科学批判という「デバッグ」「ゴミ拾い」に参加してくれる人が一人でも多いといいな。



追記1:上のリストの内容が何なのか全部わかった人はすごい。
追記2:一応一部についてデバッグの試み
(もう10年も前のものなので赤面ものだけど書き直す気力もないのでまあいいや)
予防接種
サッカリン
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