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不妊ハエ バージョン2.0

ScienceNOWより
Sterile Flies, Version 2.0
By Elsa Youngsteadt
27 January 2009
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2009/127/2?etoc
不妊のハエの大群は世界の家畜や作物を守るのに健闘している。交配し放射線照射し数十億匹も放たれたこれらのハエは繁殖可能なオスと競合して次世代の害虫の数を減らす。この方法は効果はあるが効率が悪い。科学者は遺伝子組換えにより性的魅力の高い不妊ハエを作ることによりより効率を良くする方法を発見した。
経済的に最も被害の大きい害虫はチチュウカイミバエ(Ceratitis capitata)で、この害虫は250以上もの果物やナッツや野菜に蔓延して世界で毎年数十億ドルもの被害を与えている。科学者は1950年代から放射線照射したオスを使って対抗し始めた。その後この技術は家畜を傷つけるラセンウジバエや眠り病を運ぶツェツェバエやワタの害虫ワタキバガなどの駆除に使用されてきた。
しかし昆虫を不妊にするのに使うガンマ線は染色体に大きな傷害を与え、競合するのに問題がある。そのため野生1匹に対して100以上の不妊オスが必要になる。本日BMC Biologyに発表された論文では健康でかつ不妊の遺伝子組換えチチュウカイミバエのオスの作成を報告している。
その仕組みは、胚でのみ働く自殺遺伝子プロモーターと抗生物質テトラサイクリン存在下でのみオフにする2種類の遺伝子スイッチを使うことである。野外ではテトラサイクリン暴露はないのでハエは不妊であり、実験室ではテトラサイクリンを使ってハエを大量に作れる。これらのオスは放射線照射オスより良くメスと競合し、効率は約10倍である。
政府の規制対応が技術に追いつくには時間がかかるが、この事例は対応を早める圧力になるかもしれない。