食品安全情報blog過去記事

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動物飼料中の望ましくない物質としてのゴシポール フードチェーン中の汚染物質に関する科学委員会の意見

Gossypol as undesirable substance in animal feed - Scientific opinion of the Panel on Contaminants in the Food Chain
28 January 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902297879.htm?WT.mc_id=EFSAHL01
ゴシポールは(+)と(-)の二つの鏡像異性体として存在し、実験にはしばしばラセミ体の(±)-ゴシポールが用いられる。ゴシポールは綿実及び綿実製品に遊離及び結合型として存在する。結合型ゴシポールは蛋白質共有結合した形で存在し、酸性条件での加熱により一部が遊離する。綿実は綿から繊維を作るときの副産物で、蛋白質や油脂に富むため綿実油の製造や飼料として使われる。貯蔵や加熱、油脂の圧搾により遊離のゴシポール濃度は減り、市販の綿実ミールのゴシポール濃度は通常遊離のゴシポールとしてわずか0.1-0.2%と低く抑えられている。
ゴシポールは多くの動物種に対して弱い急性毒性を持ち、ラットの経口によるLD50は2400-3340 mg/kg、マウスで500-950 mg/kg、ウサギで350-600 mg/kg、ブタで550 mg/kg、モルモットで280-300 mg/kgである。急性中毒の症状は全ての動物種で同じで呼吸困難や食欲不振などである。一般的に(-)-ゴシポールの方が(+)-ゴシポールより生物学的活性が高いが、(+)-ゴシポールの方が排泄が遅い。より低い濃度での反復投与による毒性の主要標的臓器はラットとヒトでは精巣で、精子の運動性を抑制し精子形成を阻害し精子数を減らす。ヒトにおける精子形成抑制は一部は不可逆的で、特に精索静脈瘤がある男性ではそうである。さらにゴシポールは女性の生殖器や胚の発生にも影響する。ゴシポールは遺伝毒性はなくラットの1年間試験ではがんを誘発しなかった。ADIやTDIは設定されていない。ヒトとサルでの経口による精子形成阻害を示す最小容量はそれぞれ0.1 および 0.35 mg/kg b.w.である。ゴシポールの毒性は反芻動物では低く、精子形成や胚発生の阻害や赤血球の脆弱性増加などはウシでは6-18 mg/kg b.w./ 日、ヒツジの心筋症は2-3 mg/kg b.w./ 日で見られる。胃が一つの動物は反芻動物よりゴシポール毒性への感受性が高いようだ。
現在綿実ミールと最終飼料の両方に遊離のゴシポール規制値がある。通常の飼育では、綿実ミールに許容値の最大限が含まれ家畜飼料への混入が最大限だと仮定しても、最終飼料のゴシポール濃度は許容値の半分以下であろう。現行の規制下では最終飼料に含まれる最大許容濃度で遊離ゴシポールの摂取量は家畜への有害影響がある量になりうる。綿実ミールの規制値と最終飼料への混入量に基づく遊離のゴシポールの暴露量では反芻動物や家禽や魚では有害影響はないだろう。しかし胃が一つの動物全てについて低用量での生殖影響が調べられているわけではない。
EUで使われている飼料のゴシポール濃度についてのデータはないが、家畜飼料業者から提供された情報によればEUに輸入される綿実ミールの量は近年相当減っており、飼料として使われている量は今は少ない。魚や産卵鶏用には使われていない。ゴシポールは可食部に移行し、多分牛乳にも移行する。移行量についての定量的情報はほとんど無い。ゴシポールを含む飼料を与えた家畜由来食品に残っているゴシポールの生物学的利用度に関するデータはない。ゴシポールを含む飼料を与えた家畜由来食品からのゴシポールへのヒト暴露は多分少量で、有害影響はないだろう。