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EFSAはある種の朝食シリアルの4-メチルベンゾフェノンについて声明を発表

  • プレスリリース

EFSA issues statement on 4-methylbenzophenone in some breakfast cereals
4 March 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902360993.htm
欧州委員会からの要請を受けて、EFSAはある種の朝食シリアルの包装材由来の4-メチルベンゾフェノンによるリスクについて声明を発表した。
包装容器から食品への4-メチルベンゾフェノンの以降は望ましいことではないが、検討した中で最も暴露量の多いシナリオ(これまで報告された中で最も高濃度の汚染のある製品を定期的に食べる)でのみ一部の子どもたちにリスクとなる可能性がある。しかしながら4-メチルベンゾフェノンについての知見には限りがあるためさらなるデータが必要である。
入手できる限られた暴露データと類似物質であるベンゾフェノンの毒性についての知見から、EFSAは汚染朝食シリアルの短期摂取はほとんどの人にはリスクとはならないと結論した。しかしながらもし食品容器の4-メチルベンゾフェノン汚染が持続するのであれば完全なリスク評価を行うためのデータが必要となる。
データがないためにEFSAは4-メチルベンゾフェノンの完全リスク評価はできなかった。しかしながらベンゾフェノンノ毒性情報から4-メチルベンゾフェノンは発がん性物質である可能性があるが遺伝毒性はないと結論した。ベンゾフェノンとの類似性から予備的リスク評価を行った。ベンゾフェノンとヒドロキシベンゾフェノンのグループTDIを4-メチルベンゾフェノンに適用できるかどうかはわからない。EFSAはベンゾフェノンとヒドロキシベンゾフェノンのTDIについては2009年5月末までにレビューする。

  • ある種の朝食シリアルに見つかった4-メチルベンゾフェノンについてのEFSAの声明

EFSA statement on the presence of 4-methylbenzophenone found in breakfast cereals
4 March 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902360964.htm
2009年2月2日にドイツ当局がRASFFによりある種のシリアル製品に包装容器から798 microg/kgの4-メチルベンゾフェノンの移行があることを通知した。2月後半にはベルギー当局が最大3729 microg/kgの4-メチルベンゾフェノンがシリアルから検出されたと報告した。
欧州委員会は4-メチルベンゾフェノンがベンゾフェノンとヒドロキシベンゾフェノンのグループTDIによりカバーできるかどうかとシリアル中の4-メチルベンゾフェノンのリスクについて3月3日までにEFSAに意見を求めた。さらに新たな毒性データに基づいてベンゾフェノンとヒドロキシベンゾフェノンのTDIについて再評価を5月末までに要請した。
最初の要請についてはそのような短期間では科学パネルの意見ではなくEFSAの声明を発表することしかできないと欧州委員会に回答した。
4-メチルベンゾフェノンは、主に厚紙の箱のような包装材の表面の紫外線硬化印刷インクやラッカーの光開始剤として使用される。4-メチルベンゾフェノンはベンゾフェノンと同時に又は代わりに使われることがある。揮発性があるためどちらの物質も容器中に移行し食品を汚染することがある。
4-メチルベンゾフェノンそのものの毒性評価に使える文献はほとんどない。構造的に極めて類似するベンゾフェノンについては情報が多い。4-メチルベンゾフェノンの遺伝毒性に関する直接的証拠は不十分であるが、ベンゾフェノンの結果から遺伝毒性はないだろうと結論した。
4-メチルベンゾフェノンはベンゾフェノンと同じ代謝経路で代謝されると予想され、4-メチル基は酸化されてアルコールやカルボン酸となりグリシンやグルクロン酸抱合体となるであろう。ベンゾフェノン同様に4-メチルベンゾフェノンは非遺伝毒性発がん物質であると考えられる。毒性データがないため4-メチルベンゾフェノンをベンゾフェノンとヒドロキシベンゾフェノンノグループTDIに含めることは現時点では科学的に適切ではない。従って現時点では4-メチルベンゾフェノンのTDIは設定できない。
ベンゾフェノンについては亜慢性及び慢性毒性試験データがあり、慢性毒性試験ではLOAEL 15 mg/kg/日で肝腫瘍が観察されている。二世代試験では親動物の肝臓に悪影響があり、これが慢性毒性試験における肝腫瘍と関連すると考えられる。この試験からLOAELは6 mg/kg/日が導かれた。
4-メチルベンゾフェノンのMoE計算にこのLOAELを使用した。種差及び個体差のため100、NOAELではなくLOAELを使うため3、ベンゾフェノンを4-メチルベンゾフェノンの代わりに使うため2の係数を用いた。従ってMoEは600以上でなければならない。MoEはLOAELを推定暴露量で割って求める。
AFSCAの提供した朝食シリアル17検体の分析結果に基づいて、保守的及び極めて保守的摂取量シナリオで成人と子どもについて摂取量を推定した。子どもについては1日2.45g/kg/日、成人は0.96 g/kg/日の朝食シリアル摂取量で、保守的シナリオでは4-メチルベンゾフェノンは平均濃度を、極めて保守的シナリオでは最高濃度を使用した。
保守的シナリオの子どもでは朝食シリアルからの4-メチルベンゾフェノンの暴露量は2 microg/kg/日、極めて保守的シナリオの子どもでは13.2 microg/kg/日となる。成人ではそれぞれ0.79及び5.2 microg/kg/日である。適切なデータがないため他の食品由来の4-メチルベンゾフェノン暴露についてはベンゾフェノンを含む可能性のある食品の摂取を近似として大雑把に計算した。その結果印刷インク中4-メチルベンゾフェノンの仮想的食事暴露量として成人では1microg/kg/日、子どもでは2microg/kg/日となった。
従って仮想的総暴露量としては、保守的シナリオでは成人1.79 microg/kg/日、 子ども4 microg/kg/日、極めて保守的シナリオでは成人6.2 microg/kg/日、子ども15.2 microg/kg/日となる。
ベンゾフェノンのLOAEL 6 microg/kg/日と上記の仮想総暴露量に基づき計算される暴露マージンは以下のようになる:
成人:保守的推定で3351、極めて保守的推定で968
子ども:保守的推定で1500、極めて保守的推定で395
従って成人についてはMoEが600を超えるので健康上の懸念とはならない。子どもについては保守的推定では同様に問題とならないが、極めて保守的推定では600以下で健康上の懸念は否定できない。
入手できる限られた暴露データと類似物質であるベンゾフェノンの毒性データから、EFSAは汚染朝食シリアルの短期摂取はほとんどの人にリスクとはならないと結論した。しかしながらもし4-メチルベンゾフェノンの使用が継続するのであれば、完全リスク評価のためのさらなるデータが必要である。