食品安全情報blog過去記事

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EFSAは食品中のカドミウムについてより低い耐容摂取量を設定

EFSA sets lower tolerable intake level for cadmium in food
20 March 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902396263.htm
EFSAは新しいデータの解析によりカドミウムの週間耐容摂取量(TWI)を2.5 microg/kg体重に引き下げた。TWIは有害影響がない用量で、ヨーロッパ成人の食事からの平均カドミウム摂取量はこの程度である。一部の人々−ベジタリアン、子ども、喫煙者、汚染地域住人−では最大TWIの2倍まで暴露されている。 しかしながらこれらの集団においても有害影響の出るリスクは極めて低いであろう。委員会は、現状の集団のカドミウム暴露量は減らすべきだと結論した。
カドミウムは自然に環境中に存在する重金属で、火山の噴火や岩の風化、農業や工業由来で環境中に放出される。カドミウムは空気や土壌や水などに存在し動物や植物に蓄積する。カドミウムは主に腎毒性があるが、骨の脱ミネラル化作用がありIARCにより発がん性があると分類されている。非喫煙者では食事が主な暴露源である。暴露源は穀物穀物製品、野菜やナッツや豆、澱粉の多い根菜やジャガイモ、肉や肉製品などである。海藻や魚やシーフード、食品サプリメント、キノコ、チョコレートなど一部の食品に高濃度検出されることがあるが、これらの食品の消費量は少ないため暴露への寄与は少ない。
委員会は尿中カドミウム濃度と腎機能の指標となる尿蛋白質であるベータ2ミクログロブリンの関連についての多数の研究を解析した。その解析と尿中カドミウム濃度から食事からの摂取量を導くモデルを用いてTWIを2.5 microg/kg体重に設定した。委員会はTWIは実際の腎障害に基づくものではなくその後の腎機能障害との関連を示唆する早期指標に基づくものであるため、TWIを超過する濃度での暴露されている集団でも有害影響があるリスクは極めて低いと結論した。
委員会はEFSAが集めた全EU摂取量データや各国の食事調査の他に20ヶ国の食品中カドミウム濃度に関するデータも解析した。その結果平均暴露量は2.3 microg/kg体重/週、高摂取群では3.0 microg/kg体重/週であった。
比較的カドミウムの多い食品を大量に食べるベジタリアンでは平均暴露量は5.4 microg/kg体重/週と推定される。また汚染地域で地元食品を食べると高濃度暴露になる可能性がある。さらに体重あたりの食品摂取量が多いため子どもは成人より食事からの暴露量が多い。
また喫煙は食事と同様の体内暴露源であり、こどものカドミウム暴露にはハウスダストも重要であることを注記している。

Cadmium in food - Scientific opinion of the Panel on Contaminants in the Food Chain
20 March 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902396126.htm
カドミウムは環境汚染物質である重金属で、天然及び人工の両方に由来する。
非喫煙者では食事が主な暴露源である。食事から摂ったカドミウムのヒトでの吸収率は比較的低い(3-5%)が、人体では腎臓と肝臓に貯留し生物学的半減期が10-30年と極めて長い。
カドミウムの主な毒性は腎毒性、特に近位尿細管細胞に蓄積して腎機能不全を誘発する。さらに骨の脱塩を誘発し、直接的及び腎機能不全の結果として骨に傷害を引き起こす。継続的及び/又は高濃度暴露により尿細管の傷害は糸球体ろ過速度の低下に進行し、最終的には腎不全に至る。IARCは職業暴露による研究を根拠にカドミウムをヒト発がん物質と分類している(グループ1)。一般人におけるカドミウム暴露についての新しいデータではカドミウム暴露は肺や子宮内膜、膀胱、乳がんのリスク増加と統計学的に関連がある。
カドミウムの生物学的利用度、保持そして毒性は栄養状態(体内の鉄貯蔵量が少ない)、多胎妊娠、既往症などの多数の要因により影響される。
JECFAはPTWIを7 microg/kg体重/週に設定しSCFはこれを認めている。入手できるデータではほとんどの人がこのPTWIを下回る摂取量であるが、いくつかの国際機関が一般人の実際の摂取量とPTWIのマージンが少ない又は存在しないことを認識している。
CONTAMパネルは食品中のカドミウムとヒト健康リスクを評価するよう依頼された。食品からの暴露量評価を最新のものにするため、各種食品中のカドミウムについての2003-2007のデータを20ヶ国から約14万件得た。最もカドミウム濃度の高い食品は以下である:海藻、魚及びシーフード、チョコレート、特定目的用食品。ほとんどの食品では分析した検体の一部(<5%)のみで最大量(ML)を上回っていた。根セロリ、馬肉、魚、牡蠣を除く二枚貝、頭足類で最大20%が MLを超えた。汚染地域で生産された食品はカドミウム濃度が高く、カドミウムを含む肥料を用いると作物や由来食品のカドミウム濃度が高くなる。
カドミウムの食事暴露量を評価するために、濃度とEFSAのデータベースに掲載された摂取量データを用いた。ベジタリアンや子どもなどの特定のサブグループの摂取パターン推定には国の食品摂取量調査を用いた。食事からのカドミウム暴露の主要部分に寄与する食品は、主に摂取量が多いため、穀物穀物由来食品、野菜、ナッツや豆、澱粉質の根菜やジャガイモ、肉や肉製品である。
ヨーロッパ諸国の平均食事暴露量は2.3 microg/kg体重/週(レンジ1.9-3.0)、高暴露集団では3.0 microg/kg体重/週(レンジ2.5-3.9)と推定された。穀物やナッツや油料種子や豆の消費量が多いためベジタリアンでは5.4 microg/kg体重/週と多くなる。二枚貝や野生キノコを定期的に食べるヒトでも4.6及び4.33.0 microg/kg体重/週と多くなる。喫煙は食事同様の暴露源となる。ハウス ダストは子どもにとって重要な暴露源である。
尿中カドミウム濃度は腎臓における蓄積量の指標として広く受け入れられている。CONTAMパネルは尿中カドミウムと尿中ベータ2ミクログロブリン(B2M)の用量反応相関を評価するためいくつかの試験のメタ解析を行った。50才以上の集団及び全集団に対して尿中カドミウム濃度とB2Mの用量反応相関にHillモデルを適用し、B2M増加がみられる頻度が5%増加するベンチマーク用量下方信頼限界 (BMDL5)は4 microg Cd/gクレアチニンという値が導出された。尿中カドミウム濃度の個人差に考慮した化合物特異的調整係数3.9を適用し、1.0 microg Cd/gクレアチニンが導き出された。この値は職業暴露労働者のデータや各種バイオマーカーを用いたいくつかの個別の研究結果で支持される。
非喫煙スウェーデン人女性(58-70才)における大規模データにワンコンパートメントモデルを適用し食事からのカドミウム暴露と尿中カドミウム濃度の関係を推定した。そして50年の暴露後に尿中カドミウム濃度が1.0 microg Cd/gクレアチニンとなる食事からのカドミウム暴露量を推定した。50才の時に尿中カドミウム濃度が1.0 microg Cd/gクレアチニン以下であるヒトを95%にするには、平均1日カドミウム摂取量は0.36 microg Cd/kg体重、すなわち2.52 microg Cd/kg体重/週を超えないようにしなければならない。このモデル計算では、半減期の多様性と同時に生殖年齢の女性に鉄貯蔵量の少ないことが多いために吸収率が高いことなどのカドミウム吸収効率の個人差(1-10%)を考慮している。
用量反応や速度論モデルに用いたデータは初期の生物学的応答と感受性の高い集団でのものであることから、個人の感受性の違いのための不確実係数は必要ない。従ってCONTAMパネルはカドミウムのTWIを2.5 microg Cd/kg体重/週に設定した。
ヨーロッパ各国成人の平均暴露量はTWI近く又はわずかに超過している。ベジタリアンや子ども、喫煙者、汚染地域居住者などのサブグループは約2倍超過している可能性がある。ヨーロッパでの腎機能への有害影響リスクは極めて低いが、CONTAMパネルは現状のCd暴露量は削減すべきであると結論した。
日本食地産地消ピンチ!)