食品安全情報blog過去記事

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我々はツナ缶で記憶喪失になる?我々は何を忘れつつあるのか?

The Lancet
Correspondence
Volume 373, Issue 9676, 16 May 2009-22 May 2009, Page 1672
Can one get amnesia from canned tuna? What are we forgetting?
GJ Myers et al.
Lancet 1月号でRoger Hoらがマグロを食べることで健忘症になると断言した症例報告は毒性学的にも臨床的にも問題がある。成人で症状が出る最小暴露量は200microg/Lで、この値はほとんどの国の規制委員会でも採用されている。Hoらの報告した症例は28 microg/Lで、この値は毛髪では5.5ppmに相当し、魚をよく食べる集団では普通に見られる。セイシェルでは母親の平均毛髪濃度は6.9 ppmで、記憶喪失の報告はない。
さらにメチル水銀中毒による神経機能欠損は不可逆的であるがHoらの報告では患者は改善している。血中水銀濃度の9 microg/Lへの低下は血中水銀の半減期44日と一致する。
従ってこの患者がマグロを食べてメチル水銀中毒になったという主張は受け入れがたい。

著者(シンガポール)はマウスでの実験を持ち出してMyersを無知だと反論している。水銀はあちこちにあるので医師は常に水銀中毒を疑う姿勢が必要だと。
(マグロ食べるたびに記憶喪失になってたら大変だ)