食品安全情報blog過去記事

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「性を曲げる」プラスチックボトル

Behind the headlines
'Gender bending' plastic bottles
Friday May 22 2009
http://www.nhs.uk/news/2009/05May/Pages/Genderbendingplasticbottles.aspx
プラスチックボトルで飲むと「性を曲げる化学物質への暴露が増える」とThe Daily Telegraphが警告した。科学者がプラスチック容器は内容物にビスフェノールA(BPA)と呼ばれる化合物を放出することを示したと言う。新聞は、BPAは動物の生殖器系発達に影響することが示されていてヒトの心血管系疾患とも関連すると言っている。専門家が加熱すると溶出が増えるので赤ちゃんのリスクが高いと警告しているとする。
この報告のもとになった研究は、主にポリカーボネートのボトルから1週間飲んだ学生の尿中BPA濃度がステンレススチールボトルから飲んだ場合より高かったというものである。この研究ではこの濃度での影響は調べていない。実際BPA暴露とヒトの健康についての研究は極めて少ない。動物実験BPAがホルモンレベルなどに影響する可能性についての幾分かの根拠があるが、ヒトとラットのBPA代謝には大きな違いがあり、ラットでおこることはヒトではおこりそうにない。
FSAはこの問題についての立場を変えていない。食事からのBPA暴露量は問題となる量より遙かに少ない。最も重要なのは、懸念が動物実験に基づくものであって、その結果が有害影響とは直ちに解釈できないものであることである。現時点でBPAがヒトのホルモン系に影響すると結論するには十分な根拠がなく、この研究は上昇したBPA濃度の参加者の健康への影響を調べていない。研究者自らが一部の店でのポリカーボネートボトルの回収やカナダの哺乳瓶への使用禁止などは、「ポリカーボネートボトル使用の生理学的文脈を評価した疫学研究はなく、極めて予防的なもの」と言っている。