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貝類の海洋性生物毒素についての科学的意見−パリトキシングループ

Scientific Opinion on marine biotoxins in shellfish Palytoxin group
15 December 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211903099676.htm
パリトキシン(PITX)グループの毒素は主にPalythoa属のスナギンチャクやOstreopsis属の底生性渦鞭毛藻などに検出されている毒素である。当初日本とハワイで報告されたが現在世界中に分布している。Ostreopsis種の異常発生は最近ヨーロッパ4ヶ国で報告されており、ヒトの食用貝類の汚染の可能性はある。
PITXグループの毒素は複雑なポリ水酸化化合物で、少なくとも8種類の類似体が知られている。PITX、オストレオシン-D、オバトキシン-A、ホモパリトキシン、ビスホモパリトキシン、ネオパリトキシン、デオパリトキシン、42-ヒドロキシパリトキシンであるが、化学構造がわかっているのはPITXとオストレオシン-Dだけである。検出データは限られている。現在EUでも他の国でも規制値はない。
中毒症状はよくわかっていないが、筋肉痛や衰弱、多分発熱や嘔吐、吐き気などが含まれる。死亡例は珍しいが15時間で死亡したという報告もある。
毒性データは乏しい。毒性は投与経路に強く依存し、経口投与のほうが腹腔内投与より毒性は弱い。ヒトでの急性中毒や死亡が報告されているが信頼できる定量データはない。急性毒性は主にNa+/K+-ATPアーゼへの干渉による。
長期毒性試験がないためTDIは設定できないが、マウスにおける経口投与でのLOAEL 200 microg/kg体重を使用してARfDを設定することにした。マウスが他の種より感受性が低いように見えることなどからデフォルトの安全係数100に追加の安全係数10を用いて、経口のARfD 0.2 microg/kg体重を導出した。
一度に食べる最大量として400g貝の身を使い、体重60kgのヒトの成人がARfDを超過しないためには貝の身のPITXとオストレオシン-Dの合計量が12microg以下であるべきで、これは30 microg/kg貝の身に相当する。
現在の検出データは汚染地域のもので市販製品を代表するものではない。しかしながら最悪シナリオでの暴露量は60kgの成人で約3 microg/kg体重となりARfDを超過する。
魚介類のPITXグループ毒素検出にはマウスバイオアッセイが使われているが、この方法には動物の福祉と特異性の観点から問題が指摘されている。代替法としては化学検出法(HPLC-FLDやLC-MS/MS)が有用かもしれない。