食品安全情報blog過去記事

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その他ニュース

  • 缶の中の恐怖

Fear in a can
By Trevor Butterworth Monday, May 16, 2011
http://www.thedaily.com/page/2011/05/16/051611-opinions-column-bpa-butterworth-1-2/
科学を無視したメディアの恐怖を煽る報道についての批判記事

  • 日本の地震リスクは高いまま

Natureニュース
Quake risk in Japan remains high
http://www.nature.com/news/2011/110519/full/news.2011.305.html
Scienceに発表された論文3つ
The 2011 Magnitude 9.0 Tohoku-Oki Earthquake: Mosaicking the Megathrust from Seconds to Centuries
http://www.sciencemag.org/content/early/2011/05/18/science.1206731
Displacement Above the Hypocenter of the 2011 Tohoku-Oki Earthquake
http://www.sciencemag.org/content/early/2011/05/18/science.1207401
Shallow Dynamic Overshoot and Energetic Deep Rupture in the 2011 Mw 9.0 Tohoku-Oki Earthquake
http://www.sciencemag.org/content/early/2011/05/18/science.1207020

Science 20 May 2011:
Vol. 332 no. 6032 pp. 908-910
Fukushima Revives The Low-Dose Debate
Dennis Normile
一般人の高レベル放射線暴露は回避されたが、汚染の長期影響についての疑問が残る
福島市公衆衛生福祉局のイトウミツルは線量計を使って1.6マイクロシーベルト/hを読みとって電話し、その結果がWebに掲載される。この儀式が福島県の7箇所で毎1時間毎に繰り返されている。平均測定値は通常のバックグラウンドの2-1000倍で、住民や役人や科学者がこれの公衆衛生上意味するところをあれこれ考えている。
福島やその近県で微量のセシウム134と137が降下した。半減期が2年と30年である。一部の校庭では表面を削り、高い地域ではレメディエーションや避難が行われているが、多くの場所では現実的対策方法はない。その結果福島県民の多くが、低線量放射線の長期暴露による健康影響に関する激しい科学的議論に巻き込まれている。福島大学の副学長で気象学者のワタナベアキラは自分たちはモルモットだという。中心となっている疑問は放射線には悪影響のない閾値があるかどうかである。広島放射線影響研究財団の研究部門長で放射線疫学者であるRoy Shoreによれば、閾値問題は放射線コミュニティーにおいてとても長い間問題になっている。バックグラウンド放射能でもがんになると主張する人もいれば微量では有害影響はないと主張する人もいる。一部には低用量はむしろ有益(ホルミシス)だと主張する人もいる。福島での研究は解明に役立つかもしれないが答えを得るのはそんなに簡単ではない。ほとんどの人の被曝量はバックグラウンドからの増加があまりにも少なく、タバコや食生活などのような他のリスク要因による発がん影響と区別するのは不可能であろう。日本人のがん発症率が40%であることを考えると、リスクの増加を検出するにはもっとたくさんの数が必要である。
専門家が悩んでいるのはどんな調査をどうやってするか、である。長崎大学放射線影響専門家ヤマシタシュウイチは、まだ危機が終わっていない現時点ではそれを言うのは難しい、と言う。集団研究は困難であるがそれでも報いはあるだろうと放射線影響専門の生物統計学者Dale Prestonは言う。調査した結果、何もみつからなかったら、それは重要なメッセージである。
どこに線を引くか?
科学者が合意している唯一のことは放射線によるDNA傷害が長い時間を経てがんを誘発する可能性があるということである。放射性同位体が一部の臓器に留まれば、例えばI-131が甲状腺に、その周囲の組織への傷害が修復機能を上回りがんの引き金となるだろう。
最も明確な知見は広島と長崎の原子爆弾被爆生存者の長期フォローアップ研究によるものである。この研究から一度に100 mSvの被曝がある種のがんのリスクを1.05倍にした。同じ暴露量でも子どもの場合はリスクが高いように見える。このリスクは暴露量が多くなると直線的に増加した。
しかし何年にも渡る慢性の低用量暴露による健康影響ははっきりしない。X線技術者や核産業の従事者の大規模コホート研究では100 mSv以下の暴露でわずかながんリスクの増加が示唆されている、とShoreは言う。安全側に立って、ほとんどの放射線防護機関は、どんな量の増加でもがんリスクになるという線形の閾値のないモデルを採用している。ただし不確実性が大きいために、このモデルを集団への健康影響推定に当てはめるのは賢明ではない。チェルノブイリ事故で不確実性を小さくする機会があったのに、逃した。科学がすべきことを包括的に監督する組織も継続性もなく、ソビエト連邦が崩壊し、資金が無く、線量測定が不正確で研究は限られ信頼性も低い。UNSCEARは2008年に若い人に6000以上の甲状腺がんを誘発した可能性があるがその他のがんについては結論は出せないとした。問題解決のためにIARCは4月26日に、日本の原爆生存者研究のような生涯研究をするための国際的支援を要請した。
動物実験の結果は矛盾している。実験動物では線量が低ければ低いほどDNA修復メカニズムから逃れるものは減る。それ以下では傷害が完全に修復される閾値があるようだ、と東京工業大学のマツモトヨシヒサは言う。テキサス工科大学のRonald Chesserらのグループは、マウスではチェルノブイリでの暴露量程度の暴露はホルミシスを示唆した。10-45日にわたる微量暴露は、その後の急性暴露の悪影響を和らげるように見える。低線量への生体反応は複雑であると考えている。
むらのある汚染
日本の原爆研究経験や福島でのデータ収集、戸籍制度などは低線量研究に大きな利点がある、とPrestonは考える。
現在原子炉対応をしている労働者は既に行われている核産業労働者の研究に含められるだろう。
汚染状況の調査は続行中である。福島県の他に福島大学の調査では大気中の放射線レベルはほぼバックグラウンドレベルになったことを確認した。ただし地図上の汚染分布は集団疫学研究には十分ではない。暴露量の高い集団を同定する必要がある。研究者はピークの人々の行動を調べ、喫煙や食生活や詳細な医療記録などを得る必要がある。環境濃度から個人の暴露量を推定するのは簡単でも適切でもない。コロンビア大学のDavid Brennerらは血液サンプルからDNA断片とDNA修復複合体を迅速スリーニングする方法を開発している。(これは疑問。放射線とそれ以外の影響を区別できるとは思えない。)
科学者らは政府の関与する責任ある集団が研究計画を作ることを望んでいる。福島医大長崎大学広島大学の援助を得て研究を始めると言っている。福島での研究がどれだけしっかりしたものであろうと何も明らかにならないだろうと考える研究者もいる。がんのような影響を統計学的に検出するには被曝量があまりにも少なすぎる、と京都大学のニワオーツラは主張する。ただしネガティブデータであってもUNSCERのチェルノブイリの結論を補完するだろうし世界的には意味がある。Prestonは、LNTモデルに関しては、福島の件は論争を解決する役には立たないだろう、という。
放射能汚染のリアルな影響のひとつは、それに根拠があろうと無かろうと、低用量でも子どもたちには有害だと、恐怖を与えることである。それが理由で山下はなんらかの健康調査とサポートが絶対必要であると言う。
(無断で相当部分を要約。現状程度で、子どもを含めた福島住民に放射能のせいで測定可能なほどの健康影響が出ると考えている科学者はまずいない。調査の結果、不安の影響が明らかになるかもしれないけれど。逆にこれをきっかけに福島は禁煙宣言でもすればいいのに。ちなみにどうして遺伝毒性やってる研究者に取材しないのかな。「閾値はある、でもそれがどこかを決定する手段がないのでLNT仮説を使ってるだけ」、と言ってくれると思うけど。)