食品安全情報blog過去記事

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どのような科学的研究が規制対応を促すのか?

What scientific studies prompt regulatory action?
20 May 2011
http://www.apvma.gov.au/news_media/our_view/2011/2011-05-20_studies_reg_action.php
メディアはしばしば農薬とヒト健康状態が関連する可能性を示唆する研究について報道する。これらは携帯電話や紫外線のヒト健康影響の可能性などのようなより広範な研究の一部である。そのような記事に接したときに吟味すべきことは根拠とその妥当性である。我々が知りたいのは、どれだけしっかりした根拠に基づいているのか、その知見は我々の生活にとって意味があるのか、である。また政府が監視して必要な対策をとることも望んでいる。政府機関は公衆衛生上の観点からどのようにこれらの研究を評価するのか?何が対応の引き金を引くのか?
除草剤のアトラジンが先天性胃壁破裂のリスク要因かもしれない子とが示唆された2010年の米国の疫学研究が良い例である。
規制機関が使うのはどのようなエビデンスか?
規制担当者は意思決定の才に科学的根拠を用いる。典型的には研究結果である。しかし全ての研究が同じ質や価値を持っているわけではない。エビデンスとしての強さや妥当性についての多様な連続体の一端に、リスク要因との相関を示唆する疫学研究がある。この手の研究の多くは本質的に推測で、たくさんのバイアスやエラーが存在する。このような研究は仮説をたてるのには有用であるが因果関係を決めることはできない。一方の端には直接的因果関係を決める実験室での研究がある。どのような研究でも一貫して他の研究者でも再現性があれば価値は高い。科学コミュニティーの間で合意がある場合にもそうである。
規制担当者はたった1つの疫学研究しかない場合には慎重で、一方科学的コンセンサスがあって直接的因果関係が示されているようなものには常に対応する。
アトラジンと胃壁破裂?
アトラジンと胃壁破裂の関連を示唆したのは疫学研究で、生まれた月とアトラジンに様な農薬が使用されるシーズンとの間に極めて弱い統計学的関連があったという。実験は行われておらず、どうやってアトラジンが胃壁破裂をおこすのかというメカニズムも説明されていない。他の疫学研究ではドラッグの使用や母親の年齢、喫煙、性的パートナーが複数いること、医薬品の使用など様々なリスク要因が指摘されている。これらとの相関の方がアトラジンより強い。しかし最も強力なのは何十年にもわたる数千の実験結果からアトラジンに先天異常誘発性はないという科学的合意である。従ってAPVMAはこの研究を読んで検討したが現在の管理方法に変更はしないことを決定した。

問題の研究はこれかな?
Agricultural-related chemical exposures, season of conception, and risk of gastroschisis in Washington State
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002937810000347